2025.09.29
保育園訪問【Web限定版】

天才キッズクラブ──楽しいから夢中になる。夢中になるからできる! 子ども達の成長を応援する園

天才キッズクラブ──楽しいから夢中になる。夢中になるからできる! 子ども達の成長を応援する園

天才キッズクラブ 理事長:田中 孝太郎さん

天才キッズクラブさんについて教えてください。

2010年10月に、新百合ヶ丘から歩いて7〜8分くらいの場所で無認可保育園としてスタートしました。開園から2年半ほどは園児が8〜10人程度で、0~2歳くらいが中心でした。
月謝は10万円。補助もなかったので、3人通わせているご家庭だと30万円を超えていました。

園としては赤字でしたが、その頃から今の天才キッズクラブの原型になることをやっていました。
大切にしていたのは「言葉のシャワー」。散歩に出れば歌を歌い、人が通ると歌を止めて挨拶、みんなでハイタッチ。遊歩道では1〜2歳の子ども達も「よーいドン!」で30〜50メートルを走り、ゲーム感覚で「挨拶チャンピオン」を決めたり、とにかく元気いっぱいでした。
園内では英語のレッスン、ひらがなのフラッシュカード、トランポリンやでんぐり返し、一本橋を組み合わせたサーキット遊びもやっていました。遊びの中で数を数えたり、英語で1から20まで言ったり、得意な子には九九まで挑戦させたり。自然と体力もつき、言葉や数字に親しめる環境でした。
結果、2歳でひらがなが全部読める、九九が言える子も出てきて、1歳後半でもカルタができるようになりました。保護者の方も驚いて、お迎えに来たお父さんお母さんと一緒にカルタで盛り上がることもよくありましたね。

散歩中には地域の方から「どうしてこんな小さい子がこんなに挨拶上手なの?」と褒められることも多く、保護者の方々はびっくりされていました。
ただ、無認可で小さな園で、月謝も高額。口コミでは「すごい保育をしている」と広がっても、園児数は簡単には増えませんでした。

その後はどのように広がっていったのでしょうか。

2013年に「この場所なら認定保育園が取れる」という候補地が見つかり、申請をして移転しました。5月に定員30人の認定保育園としてスタート。補助が出るようになったので料金も下げられ、集客がしやすくなりました。口コミもあって秋口にはもう定員が埋まり、年末には待機が30人くらい出る状況になりました。

その頃、駅前の県税事務所の跡地(約300坪、家賃300万円)を紹介されたんです。規模も家賃も大きすぎて最初は躊躇しましたが、コンサルの方から「ここなら認可が取れる可能性が高い」と言われ、思い切って決断しました。
2014年に認定保育園を開設し、翌2015年には同じ建物に認可保育園も設置。同じビルに認定と認可が共存するという、川崎市でも珍しいスタイルになりました。

その後は毎年のように園を出していき、2017年からは年に複数園を開設。2019年には川崎市に12園、横浜に3園、東京に1園、兵庫県の尼崎に1園と、合計17園にまで広がりました。

神奈川県が一番園の数が多いのですね。地域ならではの良さはありますか?

もともと私自身が川崎に1994年くらいから住み始めて、15〜16年経っていたんです。その間に地域も知ってきましたし、知り合いもできました。また、この辺りはベッドタウン的な感じで環境もいいので、新百合ヶ丘で園を出したんです。
当時は認定保育園に入れない子が多くて、待機児童がどんどん増えていくという状況でした。入れないから園を作る、また入れないから園を作るという形で新百合ヶ丘に集中して園を増やし、その延長で登戸にも展開しました。

全体として共通する保育方針は何ですか。

共通しているのは「文武両道」です。運動面では逆立ち歩きや側転ができるようになり、知的な面では卒園までに少ない子でも500冊、多い子では2,000冊以上の本を読んで卒園します。
そう聞くと「スパルタ教育なのでは?」と思われるかもしれませんが、実際はその逆です。私達が大切にしているのは――

  • やらせない、教えない、無理強いしない
  • 1に楽しく、2に楽しく、3・4なくて5に楽しく

楽しいから好きになる。走るのも逆立ちも本も大好きになる。夢中になってやっているうちに、気がつけば得意になっている。そんな環境をつくることを心がけています。

具体的に1日の流れを教えてください。

園や季節によって違いはありますが、基本は「走ること」から始まります。今年のように猛暑日が続くと外遊びを控えることもありますが、通常は朝一番で裏山や近くの公園に走りに行きます。
年長になると2,000〜3,000m走れる子も出てきて、体力がぐんとつきます。運動時間はだいたい40分~1時間程度。年中・年長を中心に、しっかり体を動かすことを日課にしています。

最近は子ども主体の保育が広がっていますが、天才キッズクラブさんも自主保育に近い形ですか?

私達は「スパルタの真逆」で、やらせない・教えない・無理しないという方針を大切にしています。子どもの気持ちを大事にして、無理にやらせることはしません。
ただ一方で「導くこと」はとても重要だと思っています。自主保育といっても「ただ自由に遊んでいるだけ」では意味がない。体力をつける、考える力を育むなど、必要なことは導いてあげる。ただし「やらせてしまう」と逆効果になることもあるので、楽しい環境を徹底的につくり、子どもが自分の意志で「やりたい!」と思えるようにしています。
私が現場に行くと「理事長先生、逆立ち見て!」とか「かるた一緒にやろう!」とみんなが集まってくるんです。「好きこそものの上手なれ」を大事にしながら、自然に力が身につくよう導いています。本が好きになる、運動が好きになる、そうした基本的な力をつけることは大切にしています。

職員の方が働きやすくなるような工夫はありますか?

うちでは副業をOKにしています。たとえば芝居をやりたい、劇団に入りたい、歌を歌いたい、楽器をやりたい……という先生達が実際にいます。
新百合ヶ丘駅前園の年長担任の先生は音大出身で、プロの歌手でもあります。オペラ歌手を目指していたので「プロを目指したら?」と背中を押しました。夜のレッスンに通いやすいよう勤務を調整するなど、配慮しています。声優を目指す先生も同じで、学校に通うために早く退勤できるよう調整しました。
一人ひとりのライフワークや価値観を大切にしていることが、働きがいやモチベーションに繋がっていると思います。もちろん保育一本でやっている先生もいます。

保育士さんの離職理由として人間関係が大きいと言われますが、その点で工夫していることは?

うちでは「三種の神器」と呼んでいるものがあります。
1つ目は毎朝のハイタッチとハグ。同性同士はハイタッチとハグ、異性同士はハイタッチのみで行なっています。
2つ目は「ピグマリオンミーティング」という褒めるミーティング。円陣を組んで、1人の先生の良いところをみんなで言い合い、その先生が感想を述べる。これを毎日行うことで、長所を見る習慣が自然に身につき、チーム全体が前向きで明るくなります。
3つ目は「パチパチフォーティー」。1から40まで順番に数えていきますが、3のつく数字と3の倍数では数字を言わずに手を叩く。間違える人も出ますが、その時は全員で「グッドエラードンマイ!」と声をかけて励ますんです。ミスを責めるのではなく、励まし合う文化をつくることが目的です。
こうした取り組みで職員同士が自然と笑顔になり、子ども達もその雰囲気を感じ取って「いいところ探し」をするようになっています。

保育士の質を高めるための取り組みは?

学年担任の先生達で集まったり、主任会や園長会を開いたりしています。
研修も積極的に行なっていて、フラッシュカードが得意な先生や、2歳児の高いレベルの保育をしている先生などを中心に、学び合いの場をつくっています。

この園で育った子ども達には、将来どうなってほしいですか?

「人のために動ける子」になってほしいですね。実際に卒園児の保護者からも「面倒見が良い」「クラスのムードメーカーだ」と聞きます。園では運動遊びの時に、できない子をみんなで応援したり、チャンピオンを決めて全員で拍手したりする文化があります。人を応援し、助ける力を身につけてほしい。これが私達の大きなテーマです。

今後の展望について教えてください。

フランチャイズ化を進めたいと思っています。園の雰囲気や先生達の元気さは来園者からも高く評価されているので、もっと多くの地域に広げたいと考えています。そのために保育博への出展や、私自身の講演活動も続けていきたいですね。

また、将来的には「天才キッズクラブインターナショナルスクール」の開校も視野に入れています。世界で活躍できる子ども達を育てたいからです。
日本は島国でどうしても閉鎖的な部分があると思います。だからこそ、もっと海外のことを知り、世界に挑戦できる力を育てたい。これからますます重要になると思っています。

天才キッズクラブ/株式会社TKC

天才キッズクラブ/株式会社TKC

住所

〒206-0802
東京都稲城市東長沼2106-5 マスヤビル1F

連絡先

TEL:042-370-3885
FAX:042-370-3619