2025.07.15
保育園訪問【雑誌掲載版】

MIRAI English Garden──育ちの瞬間を、ともに喜ぶ──レッジョ・エミリアと歩むインターナショナル保育

社会福祉法人エンゼル会──それぞれの園に適した環境を考え、それを通して成長を促す

MIRAI English Gardenさんについて教えてください。

MIRAI English Garden 園長:Lalaine Dy Gradoz(ラレイン ディ グレイドズ)さん

MIRAI English Gardenは2022年9月にオープンしたインターナショナル保育園です。
私は22年間、日本の幼稚園、小中学校、大学、英会話スクールなどで英語を教えてきました。その中で日本の教育に触れ、「もう少し変えた方がいいのでは」と感じることが多々ありました。ある時、生徒さんがレッジョ・エミリア・アプローチについて教えてくれたんです。それを聞いて興味を持ち、勉強し、MIRAI English Gardenを始めました。

レッジョ・エミリア・アプローチは北イタリア発の教育アプローチで、子どもを中心に考え、コミュニティと家族を大切にするという考え方です。また、先生だから偉いのではなく、先生も子どもも平等というのが軸にあります。実際、私達大人も子どもから教わることはたくさんありますよね。
子ども主体のアプローチなので、一人ひとりの個性をきちんと見て、その子に合った教育をしています。

実際にどのような保育を行なっているのですか?

インターナショナルなので、英語のみを使用します。子どもと保育士、保育士同士、すべて英語で話しています。
年齢別に4つのクラスに分かれており、小さい子達はおやつの後にサークルタイム、大きい子達はおやつがない分、長めのサークルタイムがあります。朝のサークルタイムでは、歌を歌ったり、本の読み聞かせや発音の練習をしたりします。
その後は遊びの時間。おもちゃは厳選しており、たとえば車やぬいぐるみのように遊び方が限定されるものではなく、ブロックや積み木、画材など創造的に使えるものを揃えています。
その後、公園などに出かけ、ランチ、お昼寝の流れになります。
お昼寝後はプロジェクト活動です。これはレッジョ・エミリア教育に特徴的な、1つのテーマについて子ども同士で話し合い、調べたり制作したりする活動です。時間もやり方もゴールも決まっておらず、子ども達はじっくり集中して取り組みます。

今3~4歳の子達は「paper strip workshop」というプロジェクトをしています。
新聞を見せ、「何ができるかな?」と問いかけます。「新聞紙は飛べる?」「飛べなーい!」「でもこうやったら飛ぶよ」と紙をちぎって飛ばしてみたり、「新聞紙は泣ける?」「泣けなーい!」「でもちぎったら音が出るよ」と音を聞かせたりして、想像を広げます。速くちぎったりゆっくりちぎったりして音や触感で遊んだあと、紙を集めて「何に見える?何になる?」と聞くと、意見が色いろ出て、1日目はここで終わり。
次の日は何にするかのディスカッションから始まります。例えば「キリンです」と決まれば、キリンの形を作って色を塗っていくのですが──いまだに決まっていません(笑)。
このように、話し合いながら進めるプロジェクトには時間がかかりますが、自主的な遊び、制作、対話を通じて、子ども達は大きく成長していきます。

アートも1つの特徴だと思いますが、こちらでもされているのですか?

MIRAI English Garden:子ども達が自分の個性で描くアート

はい。ただ、他の保育園と違い、みんなが同じものを描くのではなく、自分の個性で描いていいよというアプローチです。なので、みんなのアートは全員違います。
従来の幼児教育や他の教育法では、まずゴールがあって、色いろな段階の子のためにスモールステップを用意し、みんながその通りにたどってゴールに着くようにするという形が多いと思います。しかしレッジョの場合はゴールがメインではなく、その過程が一番重要視されるのです。失敗してもいいし、終わらなくても終わってもいい。ここで頑張っているその姿を私達は認めるよというアプローチなのです。

レッジョ・エミリア・アプロ―チで難しいと思うところはどこですか?

ドキュメンテーションのための写真を撮るのは難しいです。先ほど過程を大事にするという話をしましたが、その過程における瞬間を収めることが必要になります。
たとえば、ノック式のボールペンを使ったことがない子がそれに興味を持ったとします。最初はどうやって使うかもわからないし持ち方も変なんですけど、あちこち触ってボタンが押せることに気付いて「なんか出てきた!」となり、書けるということに気付く。そういう瞬間を撮るんです。
他にも、泣いている子のところに別の子が来て、ポンポンと頭をなでて慰めた瞬間などですね。

このように、子どもの気づきや育ちの瞬間を逃さず、子ども一人ひとりを見てレポートを取るので、保育士の人数は多くしています。普通の配置基準だと子ども20人に対して先生2人だったりしますが、ここは小さい子のクラスで子ども6~7人に対し4人の先生がいます。

この地域ならではの良さはありますか?

私は英会話スクールも20年間この地域ででやっていて、所沢は特に英語教育に熱心な方が多いと感じます。
また、コミュニティのサポートが良いです。親しくしているオーガニック農園さんがあるんですが、毎年そこをお借りしてイベントを行なっています。野菜を収穫したり、絵を描いたり、五感を使って楽しむアクティビティーをして、人気なんですよ。
地域の人もみんなフレンドリー。優しくて、協力的です。

ここで育った子ども達に将来どうなってほしいですか?

間違いを恐れない人。強く、色いろなチャレンジができる子に育ってほしいと思います。「自分はみんなと同じじゃなくてもこれでいいんだ」と思える子がたくさんいれば、もっとハッピーな社会になるのではないかと思います。
この子は違う、この子も違う。同じだけれど同じじゃないということがわかってくれれば、いじめもなくなると思います。

今後の展望を教えてください。

昨年度より、私達は毎月1回「アクティブウェンズデー」と題し、子ども達が地域の方々と交流しながら、様ざまな体験活動に取り組む特別な日を設けています。
これまでに、消防署の見学、フラダンスやHIPHOPダンスの体験、音楽バンドによるライブ演奏、プラネタリウム鑑賞、節句人形の専門店訪問、美容師さんによるヘアメイク体験など、多彩なプログラムを実施してきました。
こうした経験を通じて、子ども達は地域社会の温かさや多様な文化・職業に触れ、豊かな感性と好奇心を育んでいます。
今後も、地域の皆様との繋がりを大切にしながら、子ども達を“地域みんなで育てる”という想いのもと、より多くの交流の機会をつくっていきたいと考えています。

(MiRAKUU vol.51掲載)

MIRAI English Garden

MIRAI English Garden:MiRAKUU編集後記

住所

〒359-1103
埼玉県所沢市向陽町2130-82

アクセス

西武新宿線 新所沢駅より徒歩10分

開園時間

月~金 8:00~18:00

連絡先

TEL:03-6824-0149