第7回 多言語社会シンガポールの園でのフォニックス教育~英語力を育む、グローバルな視点から~──なぎさ先生の 楽しみながら英語が聞けちゃう、話せちゃう“フォニックス講座!”

今回は、アジアの教育先進国として知られるシンガポールの幼児教育におけるフォニックス教育について共有させていただきます。
英語を母語としない子どもが多く生活する中で、いかにして英語の「読み書きの力」を育てているのか。日本の先生方にとっても、ヒントになれば幸いです。
英語が共通語。でも家庭では……
シンガポールは、多民族国家です。「レイシャル・ハーモニー(社会的調和や文化的な相互理解を促進すること)」を掲げ共に暮らしています。
日本の外務省の統計によると、2022年の時点では、中華系74%、マレー系14%、インド系9%、言語は、国家語はマレー語。公用語として英語、中国語、マレー語、タミール語となっています。
実際にシンガポールでは、英語が学校教育やビジネスの共通語として使われていますが、家庭では中国語・マレー語・タミール語など、様ざまな母語が話されており、子ども達は基本的に“多言語環境”で育ちます。
こうした背景の中、シンガポールの幼稚園では「英語をきちんと読み書きできるようになること」がとても重視されています。その中核をなしているのがフォニックス教育です。
フォニックスは3歳ごろからスタート
シンガポールの多くの園では、3歳ごろからアルファベットの音に親しむ活動が始まります。歌やジェスチャー、絵本やカードを使いながら、子ども達は、フォニックス「アルファベットの音」を覚えていきます。4~5歳の段階では、ブレンディング(音をつなげて読む)やセグメンティング(音を分けて聞き取る)といったスキルを段階的に学び、catなど自分で読み、書くことに挑戦するようになります。
シンガポールの園が大切にしているのは、「正しく読めるようにする」ことだけでなく、子どもが‘‘自分の力で読めだ'という成功体験を積み重ねること。そのためのツールとして、フォニックスは推奨されています。
日本の園でも参考になる点は?
日本では、英語の読み書き指導は小学校以降が多いですが、「音」から英語に親しむフォニックス教育は、早期からでも無理なく始められるアプローチだと思います。日本のように単一言語環境社会でも、グローバル化が進み、多くの外国人が日本に訪れ、外国人と関わることが増える中、適切な方法で楽しく英語に触れさせることは、子どもの発達にとって有益なことですし、できるだけ通じる英語を習得することが、視野を広める鍵となると思います。
ただし、「無理に覚えさせる」「受験を意識した暗記型」では逆効果になることもあるため、園児の年齢・発達に応じた“ことば遊び”の延長としての英語活動が望ましいと思います。そのためにフォニックスは、とても適した英語のメソッドだと考えます。
- 音声への感受性は幼児期がピークと言われています
0~6歳は「聞き分ける耳」が急成長する時期で、英語の音にも自然に反応できます。 - 多文化・多言語の感覚を幼いうちから育てる
世界には日本語だけでなく様ざまな言語があることを知ることは、視野の広がりや国際感覚につながります。 - 楽しい活動の中で「英語=楽しいもの」になる歌・ゲーム・絵本などで自然に英語に触れることで、将来の英語学習にも前向きな土台ができます。
どう取り入れるのが理想的か?
年齢 | 活動例 | 狙い |
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2~3歳 | 英語の歌・手遊び | 英語独特の音とリズムに親しむ |
4~5歳 | 絵本読み聞かせ・フォニックス導入 | 単語の音に気づく |
5~6歳 | 単語のブレンディング遊び | 「読める」体験の喜びを経験する |
英語は「学ぶもの」ではなく、子ども達にとって「楽しいツール」になります。園での英語活動のひとつとしてフォニックスを取り入れることで、子ども達の言葉の力を育む新しい一歩となることを願っています。
(MiRAKUU vol.52掲載)
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5歳よりシンガポール在住。
イギリスのリーズ大学卒。
シンガポールのUWC校にてIBディプロマ取得。
フォニックス講師資格保持者。
自身が英語の発音に苦労したことから、発音に興味を持ち、フォニックスアイランズの教材開発にたずさわる。長年シンガポールのインターナショナル幼稚園にてフォニックスの指導に関わる。日本でフォニックスを広めるべく奮闘中。一男一女の母。