2017.04.20
園運営お役立ち情報

第19回 従業員の定着について(3) ES 向上の考え方

社会保険労務士川﨑先生の保育園で役立つ園運営お役立ち情報──第19回 従業員の定着について(3) ES 向上の考え方

社会保険労務士事務所リーフレイバーコンサルティング代表の川﨑潤一です。
今回はES 向上の考え方(報酬は金銭だけではない)について解説致します。
報酬は金銭だけではない、とはどのようなことでしょうか。金銭以外の報酬とはどのようなものがあるのか、見ていきましょう。

給与を上げるとES は向上するのか

報酬は金銭だけではない、と前置きをおきましたが、給与を上げた場合にES は向上するのでしょうか。
答えとしては、正解でもあり不正解でもあります。
給与は不足していると不満を助長することとなります。その点で正解となります。
しかし、給与はたくさんもらってもやる気には比例しません。具体的には給与が上がった際にはやる気が上がるのですが、それが長続きしないのです。
時間の経過と共に、給与が上がったことに対して慣れてきてしまいます。しまいには、もっと給与が上がってもいいのに、という不満が出てくるのが人間です。

ES 向上のヒント 動機づけ衛生理論~フレデリック・ハーズバーグ

先ほどの昇給に対する考え方はアメリカの心理学者フレデリック・ハーズバーグの動機づけ衛生理論に基づいています。
仕事を通じた人間のやる気や満足度について、①不快を回避する欲求と、②やる気や精神的に成長し自己実現を求める欲求とは全く異質なものであり、両者の欲求は全く別個の要素により充足されるものであるという仮説を立てて検証しました。

そして、ハーズバーグは、①の不快回避欲求をいかに充足しても、人間は不満足感が減少するだけで、なんら積極的満足感を増加させることはなく、また②の精神的欲求を十分に充足すれば、積極的満足感を増加できるが、たとえこの欲求を充足できなくても積極的満足感が減少するだけで必ずしも不満足感が増加するわけではないとしました。

簡単に検証結果をまとめますと以下のようになります。

やる気に繋がりやすい要素

達成感
仕事内容
上司のマネジメント
対人関係

やる気に繋がりづらい要素

給与水準
労働条件

ES 向上のヒント 欲求5段階説~アブラハム・マズロー

ES 向上に関する話として、ハーズバーグに並び有名な話として、マズローの欲求5段階説があります。
アメリカの心理学者アブラハム・マズローの学説によると、人間には普通5つ欲求があり、それらは段階的に存在しているとしています。
その段階において、あるレベルまでの欲求が満たされた際には、一つ上の段階の欲求を満たしたいと思い、行動するようになる、という考え方です。

マズロー欲求5段階説
  1. 生存の欲求
    人が生きる上で必要不可欠な生理的な欲求です。食欲・睡眠欲など、人が生きる上で本来備わっている欲求を指します。
    労働に置き換えると、給与水準、労働時間管理(長時間労働の抑制)となります。
  2. 安全の欲求
    安全ないし安定した状態を求め、危険や恐怖を回避したいという欲求です。
    衣服や住居などの物理的な欲求と、将来の不安から身を守りたいという心理的な欲求に分かれます。
    労働に置き換えると、安全衛生面での労働環境整備、退職金(退職後の安全)、パワハラセクハラ対策、健康診断の実施となります。
  3. 親和の欲求
    集団の一部であると感じたい欲求であり、だれか他人に所属したいと望む欲求です。
    他人と関わりたい、同じようにしたいという帰属欲求と、他人や家族から愛されたいという愛情欲求から成り立っています。
    労働に置き換えると、平等な処遇、社内に相談できる人がある(メンター・メンティー)、組織風土、会社行事(運動会、旅行など)となります。
  4. 自己顕示の欲求
    人が自尊心と、他人の尊敬に対する基本的な欲求を持っているという考えに基づきます。
    尊敬の欲求は細分することができます。第1に個人的な価値、適切性、能力に対する欲求があり、第2に尊敬、賛美、承認、他人の目に映る地位・状況があります。
    労働に置き換えると、昇進、昇格、責任権限の拡大、技能向上の見える化、営業ランキングなどとなります。
  5. 自己実現の欲求
    自分自身の能力を発揮したいという欲求です。自己実現とは、ある人が成長しうるものへと成長することによって、自己を実現することを目指し、真の自己と仕事を実現する過程であり、言い換えれば、他ならぬ自分自身が自ら認知するものを実現させるような欲求です。
    労働に置き換えると、人事評価、ワークライフバランス、表彰制度、新規事業の提案などのチェレンジ支援、重要な仕事に就くなどとなります。

ES 向上のヒント 報酬は金銭だけではない~トータルリウォード(総報酬制)

金銭的報酬と非金銭的報酬の両方を合わせて「トータルリウォード」と一般的に呼ばれています。
企業の人事政策は、金銭的報酬だけでなく、非金銭的報酬も考え合わせて構築する必要があります。

報酬は「金銭」だけではない

非金銭的報酬をまとめますと、下記のようになります。

  1. 名誉報酬
    人に「誇り」や「周囲の認知」、「期待」を感じさせることを通じて、やる気を引き出す「報酬」を意味しています。例えば「会社の知名度」や「ブランド力」など、社会的なステータスもあれば、「肩書き」や「権限」のように社内的なステータスを感じさせるモチベーションファクターも含まれます。
  2. 成長報酬
    人に「やりがい」「達成」「承認」を感じさせることを通じて、人のやる気を引き出す報酬を意味しています。「仕事内容」、「達成感」、「目標となる上司や仲間がいること」といったことがモチベーションファクターとして挙げられます。キャリア志向性、またはエンプロイヤビリティー向上への関心が従来にも増して高まりつつある今日において、極めて重要な「報酬」といえます。これなくして社内の優秀な人材を保持することは難しいだろうし、社外から優秀な人材を惹きつけることも困難となります。
  3. 対人関係報酬
    職場の人間と良好な関係を築くことにより、安心感と組織への帰属意識を与え、人のやる気を引き出す報酬を意味しています。ここでは「上司、同僚や部下との良好な関係」といったことがモチベーションファクターとして挙げられます。私たちは職場の中で様々な人と関わり、ささいなことでやる気を無くしたり、また上がったりしています。そう考えると社員にとって極めて実質的な「報酬」だといってもいいかもしれません。

notice

以上です。
こうしてみますと、単に給与を上げる以外にも、やる気に繋がる政策は様々あります。
経費がかからないものもあり、それほど手間がかからず導入できるものもあるかと思います。

上記を踏まえて、自社ではどのような政策を導入済みなのか、それが上手く機能しているのか、まだ導入していない政策について導入できそうか(どの程度までなら導入できそうか)を検討し、できる範囲で導入できるとよいかと思います。

しかし、これらの政策については、単に導入すればよいというわけではありません。効果を出すためには、現状の会社の状況から優先度が高い(重要な要素だが満足度が低い)要素について、不満足を改善できるような政策でないと、なかなか効果が出てきません。
そのため、ES 調査 → 重要だが満足度が低い要素とその原因の特定 → 改善策の検討と導入、という手順を踏まえて行います。
また、ES 調査は定期的に実施し、その後本当に改善されているのかを観測することが非常に重要となります。

次回は、ES 向上の要素と向上政策について考えていきます。

川﨑 潤一
  • 川﨑 潤一
  • 川﨑 潤一

    社会保険労務士事務所リーフレイバーコンサルティング 代表
    株式会社ヒューマンブレークスルー認定ESコンサルタント、全国社会保険調査対策協議会会員

    財閥系子会社、医療事務・介護事業会社の人事として、採用・給与計算・労働保険手続きを担当し、2011年4月1日に社会保険労務士事務所リーフレイバーコンサルティングを開業。

    ハローワークにて「助成金支給申請アドバイザー」として、窓口で支給申請の受理手続き(約700件)、相談・アドバイス、不正受給防止のため事業所への実地調査を行った経験がある。
    その勤務経験から、企業に対して現状と今後の展望をヒアリングした上で、最適な助成金の提案・手続きを行っている。

    社会保険労務士として、労働社会保険手続き、助成金手続き、就業規則の作成・改定、給与計算、セミナー講師を行う。
    その一方で、人事マンの経験を活かし人事コンサルタントとして、採用コンサルティング、従業員満足度(ES)調査・向上コンサルティング、マネジメント能力向上研修(マネージャーMQ)、社会保険調査対策、人事制度構築といった人事コンサルティングにも力を入れている。

    ホームページ:http://www.leaf-sr.jp/