カヨ子おばあちゃんがつたえたいこと:久保田カヨ子
子育ては母親に任せて祖母は家事を手伝えばいい
編集長:カヨ子さんは、育児に関する本をたくさん出されていますよね。なぜ本を書こうと思われたのですか?
久保田:育児に関して、しっかりしたハウツー本がないから書いてるだけよ。その中には、まずは自分の腕力を鍛えなさいとか、ジジやババを利用しろと言ったように、科学的根拠はあまり書いてないから、昔のやり方だって言われるけど、昔から日本の母親はそう育ててきてるので、昔のやり方が悪いと一概には言えないと思うんですよ。
編集長:カヨ子さんは、ご自身の子育て方法をずっと貫かれているんですね。
久保田:昔からこうやって生きてきた自信があるからね。昔のような家族制度がなくなってしまったから、戦後の世代では育て方が変わってきました。祖父母の世代は自分が育った時代が大変だったため、いまの時代で子や孫にかわいそうな思いをさせたくないんです。それにしても、ジジババは孫をかまいすぎです。子育ては母親に任せて、特に祖母は家事を手伝ってあげるのがいいんです。いまの母親たちは体力がないから、すぐ疲れちゃうんですよ。
編集長:祖父母の世代は、子育てをする母親をサポートしたほうがいいということですね。
いまは保育園に通わせている母親もいますが、どう思いますか?
久保田:働くと決めて、保育園に通わせることはいいのよ。でも問題は、保育園へ通わせるまでに子どもを独立させていないことなんです。
0歳児はさておき、ママ離れ、おばあちゃん離れしてないまま保育園に通わすから、保育園で苦労するのは当の子ども達。ちゃんと独立してる子は、保育園でも先生の言うことをよく聞きます。
独立させるには、お母さんが子どもの成長を喜んでいるだけじゃダメなんです。子どものことを「かわいい、かわいい」と褒めるばかりではなくて、親は子を独立させる義務があるんです。だから危険がない限りは泣いていてもほっといて「もう泣き止んだ?」って言っとけばいいのよ。うちのとこに来ている子ども達は、すぐに泣かなくなりますよ。
お母さん達も、赤ちゃんがビービー泣くことは気にしないでいいんです。
「ママ、ママ」って泣きだしたら「ママはここよ」って言っとけばいいの。
いまは両親の学歴も高いので、みんな教えたがりなんです。
昔は「お父ちゃんお母ちゃん、どうして車は走るの? どうして雲は白いの?」という質問をするんは子どもの専売特許でした。いまは親が「なんでコレができないの? なんでご飯をこぼすの?」と言ってばかりで。「あなたがご飯をこぼさないように教えてないからでしょ?」と言いたいです。
「電車はなんで走るの?」って聞かれたときに、これは電気が云々って言うのは子どもにとって正解じゃないんです。「分からないなら、お家に帰って調べなさい」でいいんですよ。
編集長:確かにそうですね!
保育士は子どもに衛生の根本的な意識をもたせる
編集長:いま若い保育士が増えていますが、保育士が先生として子どもに接する上で気を付けることはありますか?
久保田:先生が気を付けるのは、いま、色んなアレルギーとか抗体の問題が出てますでしょ。だから衛生のことですね。
編集長:清潔にするということですか?
久保田:それだけじゃなくて、そもそも衛生とは何かってことです。
あのね、端的に言ったら、ごはんを食べるときに手を洗いなさいって言うけど「お母さんこそ、ごはんを作るときに手を洗いなさい」なんです。つまり、衛生の根本がどこかにいっちゃってるのよ。
本当に子どもの健康を思うなら、親や保育士がきれいに手を洗って、手をふいてやって食べさせるとかね。私は普段そんなに手を洗わないけど、誰かになんかするときは無論ちゃんと手を洗います。
口の中に食べものを入れる前に手を洗いなさいっていうのは、しつけとしてあるだけで、本来なら手を洗ってからごはんを食べさせるより、手を口に入れないようにさせるのが先なんです。
「もうすぐご飯だから、手をチュッチュ吸ったらあかんよ。ばい菌入ってお腹痛くなるよ」って言った方がいいやろ。そういう意味での衛生です。
編集長:衛生に対して根本的な意識をもたせるということですね。小さい頃から「なぜ?」という根本の部分を教えていくことは重要ですよね。
ご自身の子育てで、気を付けたことはありますか?
久保田:私の二人の息子達はそれぞれ記憶力の形が違って、下の子は理屈っぽく組み立てたものを覚えるのが得意で、上の子は教科書とか本で読んだ文章をそのまま覚えることが得意でした。兄弟でもそれぞれ個性が違うから、その子の長所をできるだけ見るようにしました。
編集長:二人のお子さん、それぞれの特徴をとらえて子育てされたのですね。他には何かありますか?
久保田:お習字はリズムで教えました。
トン、シューッ、いち、に、さん、ポン、というふうに。そしたら大体きれいな字を書きますよ。
習字の半紙も、10枚100円の紙ではなくて、10枚300円くらいものを与えて書かせるんです。いい紙は破れないし、それが失敗しないことにもつながります。教え方も、その子が持っている特徴をうまーく利用して教えてあげるといいんです。
編集長:習字をリズムでというのは新しい発想ですね。確かに子どもからすれば、リズムや音のほうが身に付きやすいですよね。
子どもの自尊心を育むため選択肢を多く与えること
編集長:いま様ざまな子育て環境があり、多様化してきていますが、理想の子育て環境はありますか?
久保田:理想はないけど、さっき言ったように、10枚100円の紙を使ってものを教えるより、10枚300円の紙を使ってでも成功を体験させることですね。教育には、ある程度のお金を使うことです。教育費は、子どもの役立つものにしてやらなきゃいけないんです。子どもの自尊心を満たしてあげることも出来るからです。褒めるときも「上手だね~」っていうだけじゃダメです。いまの子は、自分も納得しなきゃいけないので。だから、お金をかけて失敗しないような材料を与えることもあっていいんです。
例えば色んな長さの鉛筆を用意して、子ども自身に選ばせる。選択肢をたくさん与え、なるべく失敗をさせないような教え方を工夫して、子どもの自尊心を育むんです。
編集長:最後に、これから保育士を目指す人びとにメッセージをお願いします。
久保田:教えるときは、子ども達が「自分で出来るようになった。自分は上手になった」と思えるような自尊心をくすぐることが大切です。
いまの子は、情報がたくさんあるから、色んな感覚を鍛えてます。そういった感覚は持っているので、それを外に表現させて、子どもが自分の力で成功した、うまくできたという成功体験をさせてあげてください。
うぬぼれを持たせることも、子どもの成長には非常に効果があるのです。
編集長:カヨ子さん、今日は本当にありがとうございました。
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久保田カヨ子
1932年、大阪生まれ。
夫は脳科学の権威である久保田競氏(京都大学名誉教授、医学博士)。
約30年前、競氏の脳科学理論に裏付けされた“0歳から働きかける”久保田式育児法 《クボタメソッド》 を確立する。
2008年、愛知県犬山市に株式会社脳研工房を設立。
0カ月からの脳育ポスター 『うまんま』 、乳幼児向け絵本 『うまんま絵本』 などの制作・発行を手掛ける。
今までに直接見て触って指導した乳幼児とお母さんは2,000人を超える。ホームページ:https://www.umanma.co.jp/
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『0歳からのらくらく子育てカヨ子ばあちゃん73の言葉』
『カヨ子ばあちゃんの男の子の育て方』
『カヨ子ばあちゃんのうちの子さえ賢ければいいんです。』
(各ダイヤモンド社より発売中)