福山市立大学附属こども園──子どもの生きる力の育ちを見つめ、福山市の保育をけん引する
福山市立大学附属こども園さんについて教えてください。
2018年に、市立附属幼稚園、市立東幼稚園、市立東保育所の2園1所が統合し、全国で初めて、公立大学附属の幼保連携型認定こども園として開園しました。福山市立大学と連携し、研究園として市内全域の就学前施設・保育の資質向上を図り、牽引していくという想いで創立しています。
この場所は元々図書館で、街中にありながら緑が多く、地域の方に愛されてきた場所です。そのため、園舎も新緑をイメージしたコンセプトで作っています。園庭で、四季折々の季節を感じられるよう、子ども達と植物を育て、収穫してクッキングしたり、虫を捕まえて飼育観察したり、自然豊かな遊びを楽しんでいます。
大学とどのような連携をしているのですか?
市立大学の教授を毎年アドバイザーとして迎え、助言や指導を受けています。研究園として、保育内容や環境構成など、私達が取り組むべき教育・保育の方向性などをともに研究しています。
また、将来の保育者を育成するため、市立大学の学生の実習を積極的に受け入れています。
その他、子ども達も園外保育で市立大学に遊びに出かけ、先生や学生の「癒し」になっています(笑)。
保育をする上で工夫しているところはありますか?
子どもの主体性は育まれるものではなく、子ども一人ひとりに備わっている素敵な力です。その主体性が発揮されるような保育を大切にしています。子ども一人ひとりが自ら遊びを選択して子どもの必要感で道具を準備し遊ぶことや、子どもが遊び込める時間の確保を大事にしています。廊下や園庭なども、子どもの声を聞いて、興味や関心が膨らむ場づくりを行なっています。廊下と保育室、園庭に出るテラスなどの動線を活かした体づくりができる運動コーナーや、触ったり作ったりできる場など、楽しい仕掛けを設けています。多様な遊びの中で、子どもは探究や発見の体験をしています。
また、同年齢児同士の関わりと同じように異年齢児同士の関わりも大切です。園全体で子どもを育てていくという想いのもと、職員で連携しています。子ども同士で、支えたり支えられたりと、双方向的な関係づくりを大事にすることで、子ども一人ひとりの主体性が発揮され、「人と関わることの心地良さ」や「自己肯定感」も育まれると考えています。
子育て支援室とことばの相談室について教えてください。
ここには、市の子育て支援事業の一環として、「福山ネウボラ」の相談窓口「あのね」と子育て支援ルーム、「ことばの相談室」が設置されています。
「福山ネウボラ」にはネウボラ相談員兼子育て支援担当者がおり、母子健康手帳の交付から子育て支援室の開設まで対応しています。
子育て支援室は未入所(園)児とその保護者が遊びや相談に来ることのできる場で、継続して遊びに来られるうちに「この園に入りたい」と言われる方も多数おられます。
「あのね」では母子健康手帳を交付しており、妊娠期から保育施設を知ることができます。園での生活の雰囲気を感じ、我が子を預けるイメージを持っていただいています。
ネウボラ相談員には保育士だけでなく看護師もいるので、出産に伴う身体のことも相談できます。
「ことばの相談室」では、主に発音やコミュニケーションが気になるお子さんの相談を受け付けており、遊びを通して楽しくふれあい、話したい気持ちを育てています。
市内9か所で個別相談を行なっていますが、本園では、一人ひとりのお子さんに応じてグループ指導も行なっています。保護者とともに関わりを考えていくことで、家庭・園・相談室と多方面から支援ができるように心がけています。
職員が働きやすいような環境への取り組みはありますか?
本園のクラス編成は0~2歳児は各1クラスで、3歳児クラスは3クラス、4歳児と5歳児は2クラスずつとなっています。担任以外に障がい児加配等フリー職員、調理員、ネウボラ相談員やことばの相談室担当者など様ざまな職種の職員がいます。
職員同士の連携を大切に“チーム附属”で保育教材の準備や環境構成など、互いに声をかけ合い、分担・協力しています。
また、昨年度より “スマート保育”の導入が始まりました。登降園システムや保護者との連絡帳のやり取りなどがタブレットやスマートフォンでできるようになり、保護者の利便性向上や職員の業務改善の一端を担っています。
連絡帳機能では、子ども達の園生活の写真を添付することで、「子どもの園での姿がわかりやすくなった」という声もいただいています。
保育者も、毎朝一人ひとりの連絡帳を確認していた時間が短縮されました。保護者からの電話連絡も少なくなり、早退や家事都合の連絡等も一覧で見られるので把握しやすくなりました。
さらに、園での全体の様子を保護者に配信することもでき、参観日以外にも園の様子を知ってもらう機会ができました。園と家庭の距離が近くなったと感じています。
この園で育った子ども達に将来どうなってほしいですか?
自分の思っていることや感じていることを相手に伝え、自分のことも大切にしながら相手の気持ちも考えられる心を持つ子どもに育ってほしいです。
これから様ざまな困難やくじけそうになることもあるかと思います。その時、「周囲の人と協力して乗り越えていける」「粘り強くやりぬく心」を持った人になってほしいです。園で大切にしている「人と関わることの心地良さ」を軸にして多様な文化や様ざまな人と関わり、仲間と一緒に達成感を味わいながら、「自分らしさ」を大切にしてほしいと願っています。
今後の展望を教えてください。
地域の中の園として、いつまでも地域に愛される存在でありたいと思います。開園前には図書館として多くの方が訪れていたように、「市街地に気持ちの良い木陰を生み出す」という当初のコンセプトを忘れず、園内外の環境をさらに充実させ、街中でありながら緑豊かな自然を感じ、その中で子どもが伸び伸びと育ち合うような園環境を作っていきたいと考えています。
また、研究園として今年度は「人との関わり」に焦点を当て、「子どもの“もっとしたい”“一緒にしよう”を育む保育環境を考える」を研究テーマにしています。近年、未曾有の感染症等により大きな集団での保育が難しかった背景があります。今、目の前の子どもの姿から、子どもが関わりの中で、互いに「相手の気持ち」を考えようとしたり、遊びの中で「人と関わることが楽しい。心地よい」と感じたりしていることを実感しています。
園の教育・保育目標でもある「遊びを通して、心豊かにたくましく生きる力を育てる」を大切に、 “チーム附属”で、地域に根差し、いつまでも愛される園を愉しみながら創りあげていきたいです。
(MiRAKUU vol.44掲載)
福山市立大学附属こども園
住所
〒720-0031
広島県福山市三吉町一丁目6番3号
アクセス
JR福山駅より徒歩20分
開園時間
月~土 7:00~19:00
連絡先
TEL:084-925-2517