2025.10.15
保育経営ドクター「ニッシー先生」の経営処方箋

第2回 民間保育所における財産処分について──保育経営ドクター「ニッシー先生」の経営処方箋

第2回 民間保育所における財産処分について──保育経営ドクター「ニッシー先生」の経営処方箋

こんにちは。保育経営ドクター「ニッシー先生」です。

民間保育所における財産処分

さて、第2回のテーマは「民間保育所における財産処分」について。
こちらのテーマは、実際に私のもとに経営者の方々から寄せられるご相談の1つです。

「国の設けた施設整備補助金等により創設された保育所を(廃園、譲渡、転用など)をしたいが、いざその場面に出くわすとどう進めていいか分からない」という「保育所の運営がうまくいかなくなった場合」に避けては通れない「財産処分」というセンシティブな問題がテーマです。

最近、社会福祉法人の役員から、今後の大きな問題になりますよ、と言われているのがこの「国庫補助金等特別積立金の財産処分」です。この財産処分について、現行の国の基準ルールでは、「施設を廃止する」場合、いかなる事情でそこに至ったのかは関係なく、国庫金を返納する必要がでてきます。ルールに従って返納する(大きな支出をする)ことで法人の経営に大きな影響がでてくることもあり得ると危惧されているのです。

少子高齢化により社会情勢が「保育所の乱立」時代から「保育所の淘汰」時代に移行していることは確実です。
そのような社会情勢でありながら、「少子化の波を受けて保育事業から撒退する」ことを法人として決定しても、国の補助事業で建てた建物等をその目的以外に使用(廃園、転用)する場合には、財産処分をしなければならないことになります。

下記のような出生数の減少の中、児童福祉施設としてどう存続させていくか、場合によっては他の福祉事業への転用や、撤退・廃園という選択肢も検討しなくてはなりません。

出生数及び合計特殊出生率の年次推移

こうした状況に追い込まれた法人は国庫金返納の選択をすることで法人経営が厳しくなるなら、他の保育事業者へ「譲渡」することにより国庫金の返納義務を負わずに済む選択肢も残されているのです。
(すでに法定耐用年数が超過している、償却が終わっている、保育所建物に国庫補助金等特別積立金がない、という状態であれば、「国庫金の返納」の必要はありません)

国の財産処分のルールを簡潔にまとめると、

  • 財産処分とは、「国が定めた処分制限期間」内に補助を受けた目的=保育園の用途として施設が使われなくなる場合には、国庫金の返納が義務付けられる

というものです。

「補助事業として補助を受けてから10年以上経過しているか、それ以下か」
「有償(譲渡等)か無償(譲渡等)か」
ということが、国庫金納付の義務があるか、返納義務はないか、の基準となっています。


今回の内容が、経営者の皆さまのヒントや安心材料になれば幸いです。
次回も有益な情報をお届けいたしますのでお楽しみに!

(MiRAKUU vol.52掲載)

ニッシー先生
  • ニッシー先生
  • 保育経営ドクター

    複数の事業会社の経営に携わった後、経営コンサル会社で30社以上の再建に成功。その実績を活かし、現在は保育業界に特化した経営支援を行う。
    「現場に寄り添う経営パートナー」として、多くの園長・施設長から信頼を集めている。