2016.10.17
教えて!川邉先生

第1回 マイナス1歳~0歳の口腔と姿勢の重要性について

教えて! 川邉先生~子どものお悩み解決します──第1回 マイナス1歳~0歳の口腔と姿勢の重要性について

なぜ、マイナス1歳(誕生前)~0歳までの口腔と姿勢に対しての教育が必要なのかご存じですか。

【資料1】定期的にクリーニングした人は90%近くの予防効果

1984年(昭和59年)、日本ではまだ誰も口腔予防を手がけていない時代、スウェーデンは口腔においての予防大国になっていました。1974年の大改革以来、国を流れる全ての川を子ども達の未来のために飲める水にするという50年以上かけた大きな展望の基に予防国家を作り上げていたのです。

私は、日本でも予防を! と、歯科医院を建てようとしましたが、当時は歯科医師会からの開業規制があったために父が内科を開業している医院の近くに建てられず、ようやく静岡県菊川町という小さな町で医院を開業しました。
しかし、日本ではまだ予防に関する知識も少なかったため、0歳からの予防など受け入れられるはずもなく、何度も挫折しながら予防の歯科医院を経営してきました。

歯科予防というのはどうするかというと、治療優先ではなく、治療が必要な人であっても、まず生活習慣と口腔の細菌のコントロールを患者さんに行なってもらうように教育指導をするのです。そして良い状態になってから治療をし、その良い状態を保つために定期的に通ってもらうのです。この定期通院を義務付けするために、必要な期間をあけてしまったら多額の費用がかかるような仕組みにしました。
私が開院して25年経つと、毎月600名を超える人が来院するにもかかわらず、歯の治療をする人は1年で0~2人程度になりました。つまり、治療の必要がない世界が25年で達成できたのです。

【資料2】世界一長寿の日本だが実は寝たきり

世界標準となる予防の国スウェーデンでは、現在80歳で26本状の歯を平均的に持っています。つまり入れ歯もインプラントも必要ないのです。
一方、日本では【資料1】を見ますと、地域差もありますが80歳でたった4.3本~7.8本となっています。
そしてなんと、日本以外の国では「寝たきり」という言葉はないのです。たとえば、スウェーデンでは老人ホームすら必要ありません。【資料2】
日本のように「寝たきり」が産業になるということは、よほど病気ばかりの、健康に生きることが不可能な生活をしているということでしょう。

なぜ、このような差が出てしまっているのでしょうか。
私の二人の子ども達は、生涯を通して虫歯にならない生活習慣と歯を0歳から10歳までの予防で作り上げ、現在に至っています。また、私の医院に0歳から通ってきてくれたお子さんが、虫歯になることなく20歳を超えることになりました。30年経つと、生涯を通して歯科治療の必要のない子ども達がどんどん育っていき、老人たちは元気にピンピンコロリ(※)を達成することができるところまで確認できています。
スウェーデンの例や、私の医院の例からもわかるように、老後という問題を解決できる方法が、0歳からの予防の確立なのです。

予防の根底にあるのは、呼吸と嚥下(えんげ)、そして姿勢です。
生後3か月までは、呼吸と嚥下という機能は特別で、上を向いておっぱいを飲み続けても姿勢が悪くとも、空気は気道へ、おっぱいは胃に流し込まれます。しかし、生後3か月を過ぎると、この特殊な能力がなくなってしまいます。
この頃から、アトピー、喘息など呼吸と関係する病気が起こり始めるのも、顎を上げて、身体を反って泣く、飲む姿勢という大きな力が、気道を縮め、吸うという動作しかできない、食べるという動作がしにくい子どもを作り上げてしまうからなのです。

成長曲線と歯牙年齢を知ればそれぞれの成長に合わせての抱き方、寝かせ方まで、予測がつきます。
新橋の未来歯科では、子ども達の成長に合わせて抱き方など、唇の形状と泣き方や発音を見ながら何年も指導しています。また、歯の萠出(ほうしゅつ)によって、脊柱年齢を歯牙年齢で判断しています。
0歳から3歳までは親の子どもを抱くときの姿勢の教育が主体になり、知識と知恵を持っていただき子育てをすることで、親も元気になっていくという方法を指導しています。
4歳から始まる呼吸と飲み込みのトレーニングで、歯並びを成長させるという教育としての口腔のトレーニングが、子ども達の最大の教育となるのです。この方法は、睡眠時無呼吸症候群の対処法と同じです。日本の人口のほとんどが無呼吸と何らかの関わりがあるということですから、歯並びと無呼吸のことを学んでいただくと、当然家族も元気になっていきます。

ちなみに、一人あたりの日本のGNPの4.8倍と言われるノーベル賞の国スウェーデンには、塾はありませんが、姿勢の教育はあります。また、歯並びのための歯科医療を必要とする子ども達は、早期に対応するので、日本に比べると少ないです。日本では現在98%以上の子ども達の歯並びは、成長するとほぼ問題が起きてしまいます。
私達は中顔面の発育、つまり顔の中での重要なパーツである口、鼻、目、そして耳と全部がつながっている部分の成長を見ていきます。

0歳からの予防は、良い顔と良い姿勢を創ることが基本です。そしてそれは、元気な未来を作り上げる教育そのものなのです。
子ども達の可能性は無限ですが、成長は年齢、状態によって全く違います。成長を知ることは発育を大きく変えます。
子ども達の、そして私達の元気な未来のためにも正しい知識を持ちましょう。

(MiRAKUU vol.16掲載)

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川邉 研次(かわべ けんじ) 経歴
  • 川邉 研次
  • 新橋 未来歯科 院長

    姿勢咬合セミナー主幹(27年以上続く姿勢と噛み合わせの歯科医師向けのセミナー)
    Ken'sホワイトニングセミナー主幹

    1984年静岡県菊川市にかわべ歯科を開業。2011年新橋に未来歯科開業。
    従来の疾患中心型治療ではなく、「細菌単位でのお口の中のリスクを知り、その結果に基づき改善していく」「食事内容の分析・アドバイス」「姿勢指導や、呼吸などのアドバイスによる体質改善」「患者様の未来の目標設定」をコンセプトにした「予防」診療を行う。
    歯科医・歯科衛生士向けの各種セミナー、DMMでのオンラインサロン等も精力的に行なっている。

    ホームページ:https://miraishika.com/

    未来歯科アカデミー:https://miraishika.com/academy/

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