2018.10.15
教えて!川邉先生

第9回 子どもの自立心を育むにはどうしたらいい?

教えて! 川邉先生~子どものお悩み解決します──第9回 子どもの自立心を育むにはどうしたらいい?

今回は子どもの自立についてのご質問です。
子どもにとって、自立はもっとも大事な発達です。自立は発達として扱われることが多く、その発達の一つとして最初の段階で自立が見られます。つまり、子どもが自分でできるようになることを「自立」、言葉を変えれば「発達」と言います。

今までずっと、子どもの問題は子ども自体にあると言われてきました。
3~5歳くらいになると、多くの子どもは何らかの異変がわかるほどの状態になり、発達の問題が社会問題化するようになってきました。子ども達の異変は保育園・幼稚園ばかりでなく、小学校でもたくさん起こっています。例えば呼吸と嚥下の問題で、口を開いている子を当たり前のように見るようになりました。虫歯になる子はあまりにも多く、顎関節症は、子ども達のほとんどに蔓延するほどになっています。他にも精神的な病気、肉体的な病気、素行や言動の問題etc ……。
これらは大体が子どもの問題としてみなされ、親の教育の問題として考えられることはありませんでした。しかし、今まで子ども自身の問題とされてきた「子どもの自立」は、本当は「親の自立」の問題なのです。

靴を持ってくる子

写真は、子どもが私に靴を持ってきたところで、大人の手を物に近づけて、自分の要求を叶えようとしているところです。この子は「靴を履かせてもらう」という、通常親にしてもらっていることを私にしてもらおうと、靴を持ってきて「履かせて」と言っているのです。
親は診察室で口腔内のクリーニングを受けています。その間、この子は泣いて泣いてどうしようもない。仕方ないので、私が抱っこをしたり話しかけたりして遊んであげます。そうすると私を親のような存在として認め、指さして私が指の方向を見るか試します。私を手でトントン叩いて注意を引きます。やがて、近くにある自分の靴を持ってきて、履かせろと命じるのです。
この子は今まで靴は履かせてもらうばかりで、自分では履いたことがないのです。すぐに親が履かせてくれるために、自分で履けるのかどうかもわからない。履くようになれるチャンスも奪われてしまい、履けなかったところから履けるようになるという達成感を与えられることもなく、学習するチャンスがなく育ってしまうのです。
寝たきりの老人が人を呼ぶのにスイッチボタンを押すように、親を便利なスイッチとして扱っているのです。
この子の例は珍しいケースでもなんでもなく、3歳くらいでも水道の蛇口をひねれない子、トイレすら流さない子もいます。便利になってしまったのと、親が先回りして子どもができることもやってしまうので、子どもは自分が動かなくてもできるという勘違いをしてしまうのです。

この状態から自立させるには、何もしてあげないことです。声すらかけないで見守ってあげます。自分でできたら、親は喜び拍手をして、達成感を持たせてあげます。できなくても代わりにやるのではなく、そのまま何もしないで見守ります。もし泣いたとしても、その動作をしっかりとさせてあげることです。
これを何度も繰り返し行うことで、子どもは諦めて他に興味を持ち始めます。他に興味を持つということが学習の始まりなのです。抱っこして強制的に泣き止ませてしまうことは、自ら興味を見つけるチャンスを奪うことになり、結果、親の胸しか世界が無くなり、他を敵として見てしまうのです。
3歳くらいでも、親が抱くまで泣き崩れる子、頭をぶつけたり物を投げ続けたりする子がいます。今まで泣いたら親が抱っこしてくれたのに突然抱っこしてくれなくなった。泣いたら親が何かしてくれたり物を買ってくれたのに、何もしてくれなくなった。泣けばなんとかなる、ということを学んでしまった子は、子どもを自立させるための親の行動パターンの変化に対して、最初は怒りを表してくるかもしれません。しかし、ここは忍耐です。子どもを信頼し、見守りながら待ってあげることが大事です。

子ども達の異変は昼だけでなく夜にも表れます。睡眠中にゴロゴロ動くのです。これは呼吸の問題なのですが、自律神経から考えると、起きている間にしっかりと運動ができていないということを意味します。15分以上の長い昼寝も、この睡眠障害を招く一つの問題です。
子どもは水分補給と体温調整さえうまくできるようになれば、2歳でも1日5時間以上は動き回れる能力を持っています。
未来歯科で、8m を3往復、約50m の雑巾がけをしたところ、大人でもハーハー言うこの距離を2歳半の子が興味を持ち、他の子が入れ替わり行う最中に、なんと30往復したのです。これにはびっくりです。その子はトランポリンも1時間以上ずっと跳んでいました。子どもの集中力と体力は目を見張るものがあります。
この2歳半の子は、この日初めてゴロゴロせずに大の字でぐっすりと眠れたそうです。その後もマルケンダンス(※)を1日5回は行なっているそうです。以前は診察室に泣いて入ってきたのに、1年通ってからの成長は著しく、体温が低かったのに起きている間はきちんと37.2℃を保ち、寝起きでも36.8℃という理想体温を保っています。歯並びもしっかりと空隙歯列になっています。一緒にマルケンダンスを行ったご両親も1年で5kg 以上のダイエットができ、風邪すらひかない体になってきたということです。

※川邉研次先生考案「ママが今日からできる子供の歯並びを良くする10か条」をもとに作った、お子様から大人まで楽しめるリズム体操。

2歳で口腔内写真や姿勢の写真も撮れるようになると、子どもは自立しはじめます。親はその成長をサポートしてあげます。そうすると子どもは喜ぶものです。この時期までに言葉と行動でアイデンティティを育んであげます。例えば、〇〇という名前は元気な子、可愛い子、格好いい子、美しい子、夢がある子、勉強もできる子、賢い子、笑顔の子、笑顔だからみんなに好かれる子。そんなアイデンティティを毎回語ります。すると、叱るときも、あなたは賢いんだからもうちょっと頑張ってという具合に、叱るのではなく応援している言葉に変わるのです。
できて褒めるときはしっかりと。できないときには、何も触れず、語らず、笑顔で見守って、「できるよ」「頑張って」と、できるまで応援することです。子どもの成長に合わせて、最初は手伝ってあげて、フィニッシュを子どもにさせるなどの工夫をします。子どもの自立というよりは、親の自立です。日本の親は、子どもが大人になっても自立(子離れ)できないと言われます。子どもに見返りを望むからです。
子ども達は親から自立することで成長します。どうぞ、見守って応援団になってください。

(MiRAKUU vol.24掲載)

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川邉 研次(かわべ けんじ) 経歴
  • 川邉 研次
  • 新橋 未来歯科 院長

    姿勢咬合セミナー主幹(27年以上続く姿勢と噛み合わせの歯科医師向けのセミナー)
    Ken'sホワイトニングセミナー主幹

    1984年静岡県菊川市にかわべ歯科を開業。2011年新橋に未来歯科開業。
    従来の疾患中心型治療ではなく、「細菌単位でのお口の中のリスクを知り、その結果に基づき改善していく」「食事内容の分析・アドバイス」「姿勢指導や、呼吸などのアドバイスによる体質改善」「患者様の未来の目標設定」をコンセプトにした「予防」診療を行う。
    歯科医・歯科衛生士向けの各種セミナー、DMMでのオンラインサロン等も精力的に行なっている。

    ホームページ:https://miraishika.com/

    未来歯科アカデミー:https://miraishika.com/academy/

    未来歯科アカデミーでは実際に未来歯科に来ていただくほか、リアルタイムでの質問も受けています。