第3回【リーダーシップについて】人を導く上で必要となる要素
前回のおさらい
部下がそれをやろう、やりたい、やらなければと思うようにするために、どこの環境をどう変えればいいかという発想をする必要があります。大切なのは、伝える力です。言葉でなくとも環境でもって意思を伝え、相手から必要な行動を引き出すということが、立派なリーダーシップです。(第0回より抜粋)
リーダーシップとは強い使命感を持ち、周りと信頼関係を築き、周囲を巻き込み、人を導いていく能力となります。(第2回より抜粋)
リーダーシップについて
編集部: 前回の「リーダーシップ」についての続きです。人を導くには周囲を巻き込むことが必要ですが、では実際に巻き込むために信頼関係を築くにはどのような方法があるのでしょうか。園長になったばかりのAさんはどのような方法で信頼関係を築いていけばいいのか悩んでいるようです。
保育園の園長をしているAと申します。数か月前に保育士の一斉退職があったことをきっかけに職員とのコミュニケーションの取り方を見直したいと考えています。
職員の退職理由は、私との信頼関係が築けない、ということでした。長くいる職員と新しく入った職員との間で軋轢が生じてしまい、私自身としては双方の意見を満遍なく聞いてきたつもりですが、それが八方美人のような態度に受け取られたようで……結果としては全員が退職をしてしまいました。
嶋津: 信頼関係を築くことは仕事に限らず、全ての事において必要不可欠ですよね。では、具体的に信頼関係を築くにはどうしたらいいのか? その部分について今回はお伝えします。
まず、信頼関係を築くための第一歩として、いかにして相手との関係性の中に共通点を作り出せるかが重要になってきます。例えば、何気ない会話の中で、自分と同じ出身地だということがわかっただけで、相手との距離がぐっと縮まったような感覚を体験したことはありませんか?
親友や仲の良い夫婦、仲の良い恋人は、お互いに情報共有をたくさんしているので信頼関係が成立しているのです。不安のある関係性の中で、信頼関係はなかなか築くことができません。
仕事をしていく上でも情報共有することが大切なのは、相手に共有するという環境を作り出すこと(環境マネジメント)に繋がっていくからです。この環境を作り出すことで、相手との関係性が強化され、結果、信頼や信用を築くことができ、「この人と一緒に仕事をしていきたいな、この人の言うことだから実践してみよう」という動機付けにもなるのです。
まずは相手との関係性を強化し、信頼関係を築くことから始めていきましょう。
編集部: 相手との関係性が強化されることで、信頼関係を築くことができるということが理解できました。普段から積極的に情報共有することを心掛けられるといいですね。
次は先輩の保育士に悩んでいる方からのお悩みです。もしかするとあなたは後輩からこんな風に思われているかもしれません。
ペアを組む先輩保育士について悩んでいます。
毎回業務の指示が変わるため、対策としてメモを必ず残すようにしているのですが、「とらえ方が違う」と言われる始末……。保護者対応の時もそんな調子なので保護者の方と揉めることもしばしば。クレーム処理はいつも私が行なっています。それでいて、自分が先輩だからと会議などでは張り切って発言……はっきり言って、うんざりです!
嶋津: 正直、嫌になっちゃいますよね。でもここで重要なのは、コミュニケーションが成立していると勘違いしないよう意識することです。なぜなら、コミュニケーションの目的は「伝えること」ではなく、「伝わって相手の行動を変容させること」だからです。
伝わらないということを前提にしてコミュニケーションを取ろうとすれば、分かってもらおうと一生懸命ロジカルで丁寧に話すようになり、指示する側も伝わる言葉を選ぼうと工夫するようになります。
この場合は、先輩保育士を変えることにフォーカスせず、欲しい指示を導くために、メモ欄の横に、5W1H「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「なぜ」「どのように」を書いて都度確認すると良いのではないでしょうか。
そうすることで、指示する側も「伝える」コミュニケーションではなく、「伝わる」コミュニケーションをとるために「引き出したい行動や結論」に焦点を当て、抽象的な表現を使わず具的な表現を意識した伝わる言葉に変
わっていくと思います。
リーダーシップを支える原点は信頼です。信頼がなければ、成果を出すために必要な栄養素である良い「学び」も「言葉」も「思い込み」も部下や従業員には伝わっていきません。まずは信頼を築くためにもリーダーが率先して環境を作り出していくことが重要です。
また伝わるコミュニケーションをしていくためにも自分が「伝えたいこと」を明確にして「引き出したい行動や結論」に焦点を当てた言葉の使い方を整理していきましょう。
総まとめ
いかがでしたでしょうか?
保育園や幼稚園はある意味「閉鎖的な空間」でもあります。その中で長く、気持ちよく働くためにリーダーシップを学び信頼関係を築くことは必要不可欠であると思います。また、リーダーシップについての認識が誤っていた方はこの機会に見直して新しく信頼関係や絆を築くことができると良いですね。
次回は「目標設定」について学びます。
(MiRAKUU vol.40掲載)
-
-
経歴
教育コンサルタント。上司学のプロフェッショナルとして、国内、海外で講演・企業研修・コンサルティングを行い、メディアにも多数出演。
シリーズ100万部のベストセラー『怒らない技術』(フォレスト出版)をはじめ『子どもが変わる 怒らない子育て』(フォレスト出版)、『7日間イラオコダイエット』(EVO出版)など、著書累計は29冊で150万部を超える。
主な役職として、一般社団法人日本リーダーズ学会代表理事、リーダーズアカデミー学長、早稲田大学エクステンションセンター講師を務める