第6回【人材育成について】求める人材を採用するためのテクニック
前回のおさらい
最後は、人材育成についてです。人がやる気を出すには、採用、適材適所、教育、リーダー、評価という5つの条件があると僕は思っています。必要な──優秀な、ではありませんよ──人材を採用して、その人達の能力が活きる場を与え(適材適所)、能力を伸ばす教育を与え、その人達を成功させるべく奮闘するリーダーがいて、そして頑張った人達に報いる評価を与える。人を育てるには、この5つにしっかり釘を刺すことだと思っています。(第0回より抜粋)
人材育成について
編集部: 今回から学ぶのは人材育成についてです。今回は人材育成の中でもまずは採用にフォーカスして学んでいきます。
保育園でのお悩みとしてよく挙げられるのが「保育士からの応募が無い」ということ。
ある保育園からこんなお悩みが届きました。
保育士不足で適正配置基準人数に保育士が足りません。人材派遣や保育士専門の求人サイトに載せていますが、どうしたら人は集まりますか? 求人内容には会社の理念や求める人物像などを載せていますが、反応がありません……。何か保育士が応募したくなるような方法はあるのでしょうか?
嶋津: 保育士が足りず適正配置基準人数に不足してしまう事態は園としてはかなり深刻ですよね。ですが、園運営において、適正配置基準人数さえ満たすことができればどんな人物でも採用すればいいというわけではないのでとても悩ましい状況かと思います。
どうしたら人が集まるかという点についてですが、まず、「どんな園を作りたいのか」が理念に示されているかチェックしてみてください。
例えば、理念の中に「人材育成に注力し、職員一人ひとりが自己実現できる環境を創り出す」というような文言がある場合、その園は、保育士自身の成長やキャリアアップに重点を置いた園を目指していることがわかります。このように応募する人物が具体的にイメージの沸く内容になっているかがとても重要です。
理念は採用において大切な役割を果たします。園が目指す具体的な方向性や社会的な役割を示し、文化や目標の実現に向けた価値観も示す必要がありますので、理念に具体的な内容が示されているか、今一度確認されることをおススメします。
次に、求める人物像が優秀な人材ではなく、必要な人材となっているか確認しましょう。
例えば、英語の先生を必要としているのに、優秀だからと言って運動が得意な先生を採用しても意味がないですよね。また、同じようなタイプの人ばかり集めても補完関係は生まれません。なぜなら、同じようなタイプの人達では、同じような考え方や行動パターンを持っているため、意見やアイデアの幅が狭まってしまう可能性があるためです。
自分とは違う、自身の園にはない(必要な)能力を持った人を採用することで、異なる視点からの問題解決や意思決定が可能になります。現在、貴園に足りない部分に焦点を当て、人材採用を見直すことも大切なポイントです。
そして、応募したくなる方法についてです。
保育士が大変な仕事であることは間違いありません。その事実を募集広告でもきちんと伝え認識共有した上で、貴園での仕事を通して具体的にどんなことができるようになり、どのように成長できるのか、どのような楽しみがあるのかなど、夢で魅力付けをする方法が効果的です。
リアルな声として、今現在働く先生の成長過程をインタビュー形式でまとめてみるのもいいかもしれません。共感できるポイントを持つ応募者を採用することで、貴園と応募者の間に共通の目標や価値観も生まれ、双方にとっても良縁になります。
ぜひ、理想を一緒に実現するための夢を持った未来の仲間を見つけていきましょう!
編集部: ある園ではこんなお悩みがあるそうです。
せっかくコストや時間をかけて採用したのに……面接の時とは別人? なんてことありませんか?
面接の時は「すごく感じが良い」「うちの園にも合っている!」と思い採用するのですが、いざ現場に入ると全く指示には従わない、前の職場(保育園)ではこうでした、と園の方針には従わないなど問題行動が多く求める人物像とはかけ離れた人を採ってしまいます……。ミスマッチを防ぐ方法はあるのでしょうか?
嶋津: いざ一緒に働いてみると求める人物像とはかけ離れていたという状況は一番困りますよね。このようなミスマッチを防ぐために、必要な人材を採用する際のひと工夫をいくつかご紹介させていただきます。
①自分を大切にする人かどうかを確認する。
「自分」を大切にできない人は「他人(仲間)」、「自分の仕事」、「自分の人生」を大切にできません。
理想に向かって進んでいく中で絶対に避けて通れないのが、園長先生、先輩・後輩といった同僚、園児との「関係性」です。自身と関わる人達を大切にできているかどうかは、組織を成長させていく上で大事な要素でもありますので、まず、「自分を大切にできる人」であるかを見極めるようにしましょう。
具体的な見極め方としては、面接で、物を大切にする人かどうかを確認するための質問をしてみるといいと思います。物を粗末にする人で、自分を本当に大切にしている人はまずいないはずです。
②突拍子もない質問をして、相手の反応を見る。
これは「考える力」「柔軟性」「動じない図太い精神力」「対応力」などが確認できます。
例えば、「『福山雅治とのデートを実現させてください』と言ったら、あなたはどうやって実現しますか?」こんな質問をしてみて、相手の対応力を探ってみるのもいいかもしれません。
③質問を深堀りする。
ミスマッチを防ぐために「本人が将来やりたいこと」、「未来の話」をすることは大切ですが、確認したいのは「本人がやりたいこと」そのものではなく「なぜ、それをやりたいと思うのか?」「やりたいことのためにどれくらい頑張れる人なのか?」という点です。
「なぜ、その選択肢を選んだのか?」「具体的にどういう考え方で、その結論にたどりついたのか?」に焦点を当て質問をしていくことで、だんだんとその人が何を大切にしていて、どんなことを考えて、どういう行動をとる人なのかという素質が見えてくるでしょう。
④強みを見つける。
応募者の強みを見出すことはとても重要です。なぜなら組織は、それぞれ強みを持った人間が、その強みを活かす仕事をして、役割として機能することで成果が出るからです。いくら強みを活かした仕事をしていても、それが役割として機能しなければ力は発揮されませんし、せっかくの強みも意味がなくなってしまいます。
最大限に組織力を底上げしていくためにも、必要な能力を明確にしてその能力を強みとして持っている人物を採用するよう意識していきましょう。
これらは一例に過ぎませんが、採用では必要な能力や素質を備えているかどうかがポイントです。
人そのものを選ぼうとすると、どうしても能力に注視することができなくなってしまいます。まずは能力を見極めることを強く意識すると採用のミスマッチも減るはずです。ぜひ、実践してみてください!
総まとめ
今回の記事を参考にぜひ園の人材育成やその後のフォローアップにも役立ててみてくださいね。
次回も引き続き人材育成について学びます。お楽しみに!
(MiRAKUU vol.43掲載)
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- 経歴
教育コンサルタント。上司学のプロフェッショナルとして、国内、海外で講演・企業研修・コンサルティングを行い、メディアにも多数出演。
シリーズ100万部のベストセラー『怒らない技術』(フォレスト出版)をはじめ『子どもが変わる 怒らない子育て』(フォレスト出版)、『7日間イラオコダイエット』(EVO出版)など、著書累計は29冊で150万部を超える。
主な役職として、一般社団法人日本リーダーズ学会代表理事、リーダーズアカデミー学長、早稲田大学エクステンションセンター講師を務める