第4回【組織目標の設定について】組織のあるべき理想の姿、存在意義、目的を明確にする
前回のおさらい
組織目標の設定は、まず何よりも理念──組織のあるべき理想の姿、存在意義、目的を明確にすることです。幼稚園保育園であれば、何のために、なぜ我われの園は必要なのかといったことですね。そしてその理念を追及するために何をすればいいのかを細かく落とし込んでいくのです。(第0回より抜粋)
組織目標の設定について
編集部: 今回から学ぶのは「組織目標」についてです。園を運営していく上で職員や園に通う保護者にも重要視される保育方針。
子どもが減っている時代だからこそ、しっかりと見直していきたいと思う園も多いのではないでしょうか?
まずは園長先生からのこんなお悩みを紹介します。
読者のお悩み①
長年、園を運営していますが、待機児童が話題になっていた時期は集まっていた園児が最近は集まらず、定員割れを起こしています。新しくリトミックや食育にも力を入れてみましたがなかなか厳しく……困っています。
何か解決方法はありますか?
嶋津: 色いろな園がある中で、特色を出していくのはなかなか難しいですよね。また、どのような部分が足りていないのかが今回のお悩みの根幹かと思います。
今回の場合、まず、どのような保育園を目指していくのか、「理念」となる園の存在意義・存在目的を明確にしていく事が必要です。
なぜ「理念」が必要なのか? 理想の姿をしっかり明確にすることで、今、何が足りていないのか課題が見えてきます。そうすると保護者へ何をアピールすればいいのかが、はっきりしてくるのではないでしょうか。
たとえば、べッドなど寝具商品を通して安眠を売りたいという販売業者がいて、「安眠を売りたい」という理念をもっていたとします。この場合、売る物は寝具そのものではなく「安眠」なので、安眠枕をアピールした寝具セットなどを推していきます。このように、商品を通して「なに」を提案したいのかが重要です。
保育業界においても同じことが言えるかと思います。
目指す園の理想像はどのようなもので、保育を通して何をアピールするのかを明確にすると「理念」に繋がっていきます。
人と組織が向かうべき方向を示してくれる一番の土台となるのが「理念」です。「理念」があれば、自然と共感する人が集まり、「理念」を基に保育士は自律的に行動するようになり、生き生きと働ける環境も生まれます。
保育士が生き生きとしていると、子ども達もそれに影響を受け、保護者にも伝わり、共感され評判が広まることで、園児募集にも繋がっていくかと思いますので、ぜひ、どのような園にしたいのか、「理念」の追求をされてみてください。
編集部: なるほど、そんな風に考えていけばいいんですね。
次は保育園本部のマネージャーさんが抱える悩みにフォーカスをあててみましょう。
読者のお悩み②
複数園を運営している本部の統括マネージャーです。弊社では、保育園の理念(想い、保育方針)を入社時や、年度切り替え時の職員会議の際に説明や確認をしていますが、日々の保育士の業務を見ていると浸透していないと感じることが多々あります。
また保育園だと全員が集まる時間が限られているので、朝礼など行うのは厳しいということもあり……どのように理念を浸透させていけば良いでしょうか?
嶋津: 理念はあるのになかなか浸透しない……こういうお悩みを抱えている方も多いかと思います。日々の保育業務で多忙な現場の先生方へ理念を浸透させるにはどのようにしたらいいのか、今回はその方法について考えていきましょう。
入社時や年度切り替え時の職員会議の際に理念の説明や確認をしているとのことですね。
ところで「なぜ、その理念が必要なのか?」「その理念を徹底していくことによりどのような影響・効果が園にもたらされるのか?」「先生方には具体的にどのような行動を期待しているのか?」ということを、事例などを挙げながら分かりやすく説明できているでしょうか?
マネージャーや園長が自ら自身の言葉で分かりやすく語ることで、何のためにこの園で働くのか、園の存在意義など再確認でき、先生方が迷うことなく同じ方向に向かって保育業務に従事することもできるようになります。
そして、今度は先生方それぞれに自身の言葉で自園の理念の必要性について語ってもらいましょう。そうすることで、どこまで自分が理解できているのかを確認することができます。
自分の中で納得して理解できていないことは上手に人に話せないので、人に話すことで理解がより深まっていきます。
同じ価値観で理念の理解ができていると判断したら、次に、前日の行動を振り返り、その理念をどういう形で実現したか、些細なことで構いませんので、行動をベースに先生方と話をされると良いかと思います。全員が集まる時間が限られていて朝礼など行うことが厳しいとのことですので、毎日の業務報告の時間を活用するなどしてみてはいかがでしょうか?
最後に、できればその結果を全園で共有できる仕組み作りをして、最善の取り組みができた園(先生)を表彰するなどしても良いかもしれません。
何事においても浸透させるためには繰り返すことが重要です。理念が共有浸透している組織は、組織内の意思が一つになりとてつもない力を発揮することができます。先生方一人ひとりが自律的に行動し、生き生きと働くことができますので、逆境にも変化にも強い組織となります。ぜひ、諦めずに繰り返し説明・確認・共有し、浸透させていってください!
総まとめ
いかがでしょうか? 保育はチームワークがとても重要なので「逆境にも強い組織」をぜひ目指したいですね。園での体制に不安がある方は試してみてください。
また、記事を参考にワークを行なってみると効果的ですよ!
次回もお楽しみに!
(MiRAKUU vol.41掲載)
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- 経歴
教育コンサルタント。上司学のプロフェッショナルとして、国内、海外で講演・企業研修・コンサルティングを行い、メディアにも多数出演。
シリーズ100万部のベストセラー『怒らない技術』(フォレスト出版)をはじめ『子どもが変わる 怒らない子育て』(フォレスト出版)、『7日間イラオコダイエット』(EVO出版)など、著書累計は29冊で150万部を超える。
主な役職として、一般社団法人日本リーダーズ学会代表理事、リーダーズアカデミー学長、早稲田大学エクステンションセンター講師を務める