第3回 人材育成コース
社会保険労務士事務所リーフレイバーコンサルティング代表の川﨑潤一です。
今回は前回ご紹介しました、キャリアアップ助成金の中で人材育成コースについて解説いたします。
助成金の基本的な支給条件については、前回の記事をご参照ください。
キャリアアップ助成金の概要
コース | 概要 | 金額 |
---|---|---|
人材育成 | 有期契約労働者等に次の訓練を実施した場合
|
Off-JT分の支給額 賃金助成~1人1時間あたり800円(500円) 経費助成~1人あたりOff-JTの訓練時間数に応じて10~50万円(7~30万円) OJT分の支給額 |
※()内は大企業の額
Off-JT(Off theJob Training)……実際の仕事から離れたところでの育成。集合研修などがこれに当たる。
教育に関する助成金の中でも使いやすい、人材育成コース
社員教育に関する助成金は、今年度の助成金は非常に充実しています。
キャリアアップ助成金以外では、キャリア形成促進助成金、企業内人材育成推進助成金、職場定着支援助成金などがあります。
一般的に教育に関する助成金は、難易度が高く、提出する書類も多岐に渡ります。
しかし、キャリアアップ助成金の人材育成コースは、他の教育に関する助成金に比べますと、難易度も低く、提出書類の数も少ないことが特徴となります。
また、条件を満たせば前回ご紹介しました正規雇用等転換コースと両方支給されることもあります。
人材育成コースの訓練の種類
人材育成コースとして、下記の4種類があります。
どのような形で訓練をするのかによって、異なります。
- 一般職業訓練(Off-JT)
- 有期実習型訓練(ジョブカードを活用したOff-JTとOJTを組み合わせた3~6か月の訓練)
- 中長期的キャリア形成訓練(Off-JT)
- 育児休業中訓練(Off-JT)
手続きの流れ
- キャリアアップ計画の作成・提出を行う
- 訓練計画届の作成・提出を行う
- キャリアアップ計画に基づいて作成。キャリアアップ計画と同時提出もできます
- 訓練開始日の前日から起算して1か月前までに、提出する必要があります
- ※有期実習型訓練の場合には、訓練受講者に対してキャリアコンサルティングの実施
有期実習型訓練を行わない場合には、不要です - 訓練の実施
- 提出した計画届に基づいて実施します
- 訓練計画届の提出日から6か月以内に訓練を開始する必要があります
- 訓練開始日の翌日から起算して1か月以内に、訓練開始届を提出する必要があります
- 訓練計画の内容を変更する場合は、当初予定していた訓練の初日の前日までには、計画変更届を提出する必要があります
- 訓練の終了・支給申請
訓練計画実施期間の終了した日の翌日から2か月以内に、支給申請を行います - 審査の結果、支給されます
支給額
1年度1事業所当たりの支給限度額は500万円となります。※()内は大企業の額
■ Off-JT分の支給額
賃金助成……1人1時間当たり 800円(500円) ※1人あたりの助成時間数は、1,200時間を限度
経費助成……1人当たり Off-JT の訓練時間数に応じた額
【(1)一般職業訓練、(2)有期実習型訓練、(4)育児休業中訓練】
100時間未満 | 10万円(7万円) |
100時間以上200時間未満 | 20万円(15万円) |
200時間以上 | 30万円(20万円) |
【(3)中長期的キャリア形成訓練】
100時間未満 | 15万円(10万円) |
100時間以上200時間未満 | 30万円(20万円) |
200時間以上 | 50万円(30万円) |
■ OJT分の支給額
実施助成……1人1時間当たり 800円(700円) ※1人あたりの助成時間数は、680時間を限度
対象となる訓練 ── (1)一般職業訓練(Off-JT)について
訓練の種類は4種類ありますが、一番使い勝手がよい一般職業訓練について解説いたします。
訓練に付随する内容は、原則として対象外。ただし、訓練と訓練の間にとる小休止については1日1時間まで、開講式、閉講式、オリエンテーションなどについては、合計1時間までは対象時間に含むことができる。
受講する対象者数について制限はありませんが、事業所の体制や規模などを踏まえて、適正な設定となっていること。
■ 一般職業訓練とは
Off-JTであって、次の1~4の全てに該当する職業訓練であること
- 1コース当たり1年以内の実施期間であること
- 1コース当たり20時間以上の訓練時間数であること
- 通信制の職業訓練(スクーリングがあるものを除く)でないこと
- 次の1~3のいずれかに該当する訓練であること
1 | 訓練実施事業主以外が設置する施設に依頼して行われる訓練(講師の派遣も含む)であり、次のaからdに掲げる施設に委託して行う事業外訓練またはeの事業内訓練 | |
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a | 公共職業能力開発施設、職業能力開発総合大学校、職業能力開発促進法、第15条の6第1項ただし書に規定する職業訓練を行う施設 | |
b | 各種学校等 | |
c | その他(a、b以外)職業に関する知識、技能もしくは技能を習得させ、または向上させることを目的とする教育訓練を行い団体の設置する施設 | |
d | その他(a~c以外)助成金の支給を受けようとする事業主以外の事業主、または事業主団体の設置する施設 | |
e | 外部講師の活用や社外の場所で行われる訓練で、事業主が企画し主催したもの | |
2 | 都道府県知事から認定を受けた認定職業訓練 | |
3 | 1及び2以外の事業内訓練であって、専修学校専門課程教員、職業訓練指導員免許取得者、またはこれらと同等以上の能力(その分野の職務での実務経験が通算して5年以上)を有する者により実施される職業訓練 |
■ 対象となる労働者
- 一般職業訓練を実施する事業主に従来から雇用されている有期契約労働者等、または新たに雇い入れられた有期契約労働者等
- 訓練の終了日または支給申請日に雇用保険被験者であること
- 支給申請日において離職していない者であること
■ どのように使うのか
契約社員やパートタイマーに対して、外部研修を行います。
業務に関する能力アップを目的とした訓練を実施することで、業務効率がアップします。
人によっては、正規雇用等転換ができるぐらい能力向上がされれば、転換してもよいでしょう。
先ほど記載しました通り、訓練の実施 → 正規雇用等転換 とすることで、人材育成コースと正規雇用等転換コースの両方の助成金を貰うことも可能です。
契約社員やパートタイマーに対して、外部研修を実施して能力向上をはかりたい、という企業については非常に使える助成金だと思います。
ぜひ積極的に利用してみていただきたいと思います。
助成金を貰うためには、様々な支給条件や申請書類の提出が求められます。自社で申請をされる際には、必ず最寄りのハローワークまたは労働局にて確認を行ってください。
助成金を利用したいが手続き等が面倒だと感じる企業は、社会保険労務士への業務委託をご検討ください。
- 川﨑 潤一
社会保険労務士事務所リーフレイバーコンサルティング 代表
株式会社ヒューマンブレークスルー認定ESコンサルタント、全国社会保険調査対策協議会会員財閥系子会社、医療事務・介護事業会社の人事として、採用・給与計算・労働保険手続きを担当し、2011年4月1日に社会保険労務士事務所リーフレイバーコンサルティングを開業。
ハローワークにて「助成金支給申請アドバイザー」として、窓口で支給申請の受理手続き(約700件)、相談・アドバイス、不正受給防止のため事業所への実地調査を行った経験がある。
その勤務経験から、企業に対して現状と今後の展望をヒアリングした上で、最適な助成金の提案・手続きを行っている。社会保険労務士として、労働社会保険手続き、助成金手続き、就業規則の作成・改定、給与計算、セミナー講師を行う。
その一方で、人事マンの経験を活かし人事コンサルタントとして、採用コンサルティング、従業員満足度(ES)調査・向上コンサルティング、マネジメント能力向上研修(マネージャーMQ)、社会保険調査対策、人事制度構築といった人事コンサルティングにも力を入れている。ホームページ:http://www.leaf-sr.jp/