第4回 職場意識改善助成金
社会保険労務士事務所リーフレイバーコンサルティング代表の川﨑潤一です。
今回は残業時間の削減や有給休暇の取得を促進した際にもらえる「職場意識改善助成金」のご紹介です。
この助成金のすごいところは、目標を立ててクリアするために労働生産性の向上を図るわけですが、目標がクリアできなかったとしても支給される、というところです。
設備投資に使った経費や、社会保険労務士に労務管理を依頼した料金に対して支給される点も特徴です。
対象となる事業主
雇用する労働者の年次有給休暇の年間平均取得日数が13日以下であって、月平均所定外労働時間数が10時間以上であり、労働時間等の設定改善に積極的に取り組む意欲がある中小企業事業主
中小企業事業主の範囲は下記のAまたはBの要件を満たす企業です。
業種 | 資本金の額・出資の総額 | 常時雇用する労働者の数 |
---|---|---|
小売業(飲食店を含む) | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
助成金の内容
残業時間の削減や有給休暇の取得を促進のために行った、下記の取組について、かかった経費に対して支給されます。
取組内容の事例は下記の通りです。
- 労務管理担当者に対する研修
- 労働者に対する研修・周知
- 外部専門家によるコンサルティング(社会保険労務士など)
- 就業規則、労使協定等の作成・変更(有給休暇の計画付与制度の導入など)
- 下記の導入・更新(※成果目標をいずれも達成した場合のみ支給)
- 労務管理用ソフトウェア(勤怠管理システムなど)
- 労務管理用機器(タイムカードなど)
- デジタル式運行記録計(デジタコ)
- テレワーク用通信機器
- 労働能率の向上に繋がる設備・機器
例えば、小売業のPOS装置、自動車修理業の自動車リフトなど(※パソコン、タブレット、スマートフォンは対象外)
支給額
上記の取組の実施にかかった経費の一部について、下記の成果目標の達成度に応じて支給されます。
対象経費 | 助成額 |
---|---|
謝金、旅費、会議費、雑役務費、印刷製本費、備品費、機械装置等購入費、委託費 | 対象経費の合計額×補助率 ※上限額を超える場合は上限額 |
成果目標の達成状況 | a、bともに達成 | どちらか一方を達成 | どちらも未達 |
---|---|---|---|
補助率 | 3/4 | 5/8 | 1/2 |
上限額 | 100万円 | 83万円 | 67万円 |
労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新の取組の場合は、下表のとおり
成果目標の達成状況 | a、bともに達成 |
---|---|
補助率 | 3/4 |
上限額 | 100万円 |
残業と有給休暇の成果目標
支給対象となる取組は、以下の「成果目標」を目指すこと。
目的 | 成果目標 |
---|---|
a.年次有給休暇の取得促進 | 労働者の年次有給休暇の年間平均取得日数を4日以上増加させる |
b.所定外労働の削減 | 労働者の月間平均所定外労働時間数を5時間以上削減させる |
上記の目標を達成するための評価期間を3ヶ月設定します。
その定めた評価期間中に上記の目標の達成を目指します。
手続きの流れ
- 職場意識改善助成金事業実施承認申請書の作成・提出を行う
- 事業実施について承認後、提出した計画に沿って取組を実施
※事業実施……機器の購入、就業規則の変更など
※評価期間……3ヶ月の間に、所定外労働時間の削減、年次有給休暇の促進に取組む - 支給申請
- 審査の結果、支給されます
どのように使うのか
労働生産性の向上を目的として、設備投資をした場合にも支給対象となります。
企業において時間短縮につながる設備投資であれば対象となりますので、使い勝手がよいです。
ただし、設備投資に対しては成果目標をどちらも達成することが条件となります。
就業規則の作成等であれば、成果目標が未達でも支給されるので、使いやすいと思います。
ポイントとなるのは、いかにして所定外労働時間の削減と年次有給休暇の取得促進をするのか、ということになります。
年次有給休暇については、年次有給休暇の計画付与の制度を導入することでクリアできるものと思います。
所定外労働時間の削減については、仕事の取り組み方の見直しが必要であると思います。
誰がどのような仕事を、どのような手順で行っているのか、現状の仕事の取り組み方について洗い出しを行います。
その上で、合理化できないか、どのようにしたら無駄なく仕事を進められるのかを検討します。
無駄に残業代を支給しない、短い時間で効率よく仕事を行うことは、今後の企業経営において重要になってきます。
ぜひ、この機会に見直しを行いながら、うまく助成金を活用していただきたいと思います。
助成金を貰うためには、様々な支給条件や申請書類の提出が求められます。自社で申請をされる際には、必ず最寄りのハローワークまたは労働局にて確認を行ってください。
助成金を利用したいが手続き等が面倒だと感じる企業は、社会保険労務士への業務委託をご検討ください。
- 川﨑 潤一
社会保険労務士事務所リーフレイバーコンサルティング 代表
株式会社ヒューマンブレークスルー認定ESコンサルタント、全国社会保険調査対策協議会会員財閥系子会社、医療事務・介護事業会社の人事として、採用・給与計算・労働保険手続きを担当し、2011年4月1日に社会保険労務士事務所リーフレイバーコンサルティングを開業。
ハローワークにて「助成金支給申請アドバイザー」として、窓口で支給申請の受理手続き(約700件)、相談・アドバイス、不正受給防止のため事業所への実地調査を行った経験がある。
その勤務経験から、企業に対して現状と今後の展望をヒアリングした上で、最適な助成金の提案・手続きを行っている。社会保険労務士として、労働社会保険手続き、助成金手続き、就業規則の作成・改定、給与計算、セミナー講師を行う。
その一方で、人事マンの経験を活かし人事コンサルタントとして、採用コンサルティング、従業員満足度(ES)調査・向上コンサルティング、マネジメント能力向上研修(マネージャーMQ)、社会保険調査対策、人事制度構築といった人事コンサルティングにも力を入れている。ホームページ:http://www.leaf-sr.jp/