第27回 採用と育成にかかるお金と時間

社会保険労務士事務所リーフレイバーコンサルティング代表の川﨑潤一です。
前回は採用の目的について、考えました。
従業員を募集し、採用する目的は……
「従業員を採用し、教育をすることで戦力化し、利益に貢献してもらうため」です。
追記しますと、「利益に貢献してもらい、それを継続してもらう」ことが重要です。
せっかく採用し、教育に時間とお金をかけて利益に貢献してもらえるぐらい戦力化したところで、早々に退職されてしまったのでは、その採用は失敗となります。
そのため継続してもらうこと、つまり定着してもらう事が必須です。そのためにも従業員満足度の向上をし続ける改革を継続していく必要があるのです。
さて、今回からは採用と育成にかかるお金と時間について考えていきたいと思います。
人を採用するには非常に大きなお金と時間がかかります。
利益を出すために採用をし、育成をする。そこに大きなお金と時間がかかる。
つまり、人を採用するということは、大きな投資を行うことなのです。
採用、育成、定着(雇用の継続)にどのくらいのお金と時間がかかっているのか。あまり意識されていない経営者の方が多いです。
投資である以上は、費用対効果、リスクとリターンを考える必要があります。
お金と時間がかかる以上は適当に、例えば目に力がある、履歴書や職務経歴書で同業他社での経験がある、学歴などといった理由だけで採用してはならないのです。
採用にかかるお金と時間とは
- 募集の広告費
募集広告を作成するのに時間がかかる。その作成の時間分だけ人件費がかかっている。
募集広告自体にお金がかかる。掲載費用、採用が成功した際の採用費。 - 採用選考
採用選考として行う、書類選考、面接、適性検査、筆記試験、技術試験等、応募者への連絡に時間がかかる。その時間分だけ人件費がかかっている。
適性検査を市販のものを利用する際には、適性検査費がかかる。 - 採用後の教育
教育係となった従業員は、自分の仕事をする時間を削り仕事を教えるため、仕事の効率が著しく落ちる。結果として、本業の売上に影響する。
OFF-JTを利用する場合には、外部研修費がかかる。 - 人件費がかかる
給与、賞与、労働保険料、社会保険料、パソコンや名刺等の備品代。仮に年収400万円で20年雇用した場合には、単純計算で8,000万円の投資です。
福利厚生費などの人件費として捉える、上記1~3にかかったお金(時間もお金に換算します)を合計すると、1億円以上のお金がかかることとなります。
採用が失敗した場合には、損失が膨らむ
- 他の従業員の長時間労働と他の従業員の退職
採用した従業員が退職することとなった場合には、欠員補充されまで他の従業員の業務量が増え、長時間労働をせざるを得なくなります。
長時間労働をした分の残業代、社会保険が増加します。※残業代を支払うお金で人を雇って残業せずに済むようにした方が、人件費は軽くなります。採用した従業員が職場になじめない等の理由による、職場全体に悪影響を与える存在になることがある。その結果、他の優秀な従業員が退職する事態となることがあります。
その結果、残った従業員のモチベーションにも影響を与えます。 - 労働トラブルの発生と和解金の支払い
最悪の場合には、採用した従業員が労働トラブルを発生させ、結果として和解金の支払い等で会社の損失が膨らむことがあります。
- 何度も求人を出す、求人を出し続けることでブラック企業認定される
採用しても人が定着せずに、何度も求人を出す、求人を出し続けることで、応募者からこの会社は人が定着しない、また求人を出している、と思われてしまいます。
人がしょっちゅう退職しているということは、会社に辞める理由がある、何かブラックな理由があるのではないか、という悪い印象を与えることとなり、余計に採用活動がしづらくなります。 - 顧客満足度の低下による、売上の低下に繋がる
会社が求めていない人を採用することで、下記のような悪影響が発生します。
- 社内の雰囲気が悪くなる。結果、退職する従業員が出てくる
- 既存の従業員が入社した人とうまくいかずに、人間関係が悪化する
- 自社が求めている顧客対応ができず、客先でトラブルを起こしたり、対応が悪いといったクレームに繋がり、顧客満足度が下がることで売上が下がる。
これは既存顧客に与える影響だけでなく、悪い噂が立つことで将来の見込み客まで失うこととなりかねません。
人を採用し、教育だけで上記1~4の非常に大きなお金がかかります。
そのため、採用に失敗すると少なくとも上記の時間とお金を損失することとなります。
採用に失敗した場合には、上記5~8のお金が追加でかかる場合があり、会社の損失が膨らむことがあります。
この結果からしますと、適当に採用することの損失がいかに大きいかがおわかりいただけると思います。
採用の方法を学び、定着させることにお金と時間をかけることで、無駄な損失を防ぎ、利益に貢献してもらえる人材の採用・定着に繋がることで、会社の利益が増えることとなります。
目先の売上を上げることにばかり目が向いているようでは、3年、5年、10年先といった先を見据えた企業経営ができていないこととなります。
採用と定着にお金と時間を投資することで、将来的な利益の確保・増大に繋げるといった先を見据えた企業経営が求められています。
それができない場合には、採用ができない(人が集まらない、足りない)ことで、売上が上がらない(業務量を増やせない、営業時間の短縮など)ため、閉鎖に追い込まれる可能性が非常に高くなります。
そのため、利益を増やして企業経営を継続したいのであれば、今すぐにでも採用と定着に取り組まなければならないのです。
今回は以上です。
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- 川﨑 潤一
社会保険労務士事務所リーフレイバーコンサルティング 代表
株式会社ヒューマンブレークスルー認定ESコンサルタント、全国社会保険調査対策協議会会員財閥系子会社、医療事務・介護事業会社の人事として、採用・給与計算・労働保険手続きを担当し、2011年4月1日に社会保険労務士事務所リーフレイバーコンサルティングを開業。
ハローワークにて「助成金支給申請アドバイザー」として、窓口で支給申請の受理手続き(約700件)、相談・アドバイス、不正受給防止のため事業所への実地調査を行った経験がある。
その勤務経験から、企業に対して現状と今後の展望をヒアリングした上で、最適な助成金の提案・手続きを行っている。社会保険労務士として、労働社会保険手続き、助成金手続き、就業規則の作成・改定、給与計算、セミナー講師を行う。
その一方で、人事マンの経験を活かし人事コンサルタントとして、採用コンサルティング、従業員満足度(ES)調査・向上コンサルティング、マネジメント能力向上研修(マネージャーMQ)、社会保険調査対策、人事制度構築といった人事コンサルティングにも力を入れている。ホームページ:http://www.leaf-sr.jp/