社会福祉法人エンゼル会──それぞれの園に適した環境を考え、それを通して成長を促す

エンゼル会さんについて教えてください。

昭和44年2月に上長飯保育園を開園し、平成10年には「小1の壁」に面した保護者様のご要望に応え児童クラブを設立しました。その後、保育園は平成28年に認定こども園に移行し、さらに他の法人や公立の保育所等を引き継ぐこととなり、現在はエンゼルIT保育園、わかば森のこども園、こおりもと保育園も運営しています。
また、子育て支援センターの需要が高まり、市に委託され都城市東部地域子育て支援センターエンゼルも運営しています。
どのような保育を行なっていますか?
エンゼル会では、大人が子どもを教育していくというよりも、子ども自身が成長していける環境を作り、成長を見守るという保育を目指しています。
今までも運動遊び、英語遊び、習字など色いろな活動を取り入れてきました。これは一斉保育ですが、共働きで習い事をしたくてもできないというご家庭の受け皿でもありました。そして今、主体的な保育に変わってきたわけですが、今の保育指針と今までの一斉保育の中間ぐらいの保育を求める親御さんが多いと感じています。それを踏まえ、子どもの自主性を大切にしつつ、親御さんが子どもの成長を見たいというのであれば、たとえばお遊戯会などの機会を設けています。親御さんが今求めているものは何なのか、親御さんの啓蒙も含め、どんな保育が望ましいかを常に模索しています。
また、それぞれの園は置かれている場所も運営形態も求められる保育も違うので、各園の環境を通して子ども達を成長させていけるような取り組みをしています。
上長飯認定こども園、こおりもと保育園は住宅街のたくさん人がいる場所にあるので、子育て支援センター、児童クラブも含めて全体で子ども達を見ていくことが必要になります。園児数も多いので、多人数ならではの経験ができます。
エンゼルIT保育園は街中のビル内にあり、小規模保育なので0~2歳をターゲットにした遊びをプレイルームに取り入れています。
わかば森のこども園は山里の園です。野山や広い畑を利用した保育を行なっています。バスが複数台あり、月に1回ほど出かけたり、他のエンゼル会の各施設にお互い遊びに行っています。
エンゼルIT保育園は室内遊具が子ども達は楽しみのようですし、わかば森のこども園は田舎の良さがありますね。


研修について教えてください。
エンゼル会に来た研修案内を職員に見せると、どれに行きたいかすぐに希望が出ます。県内県外問わず基本的にOKなので、職員は喜んで参加しています。北欧には毎年誰かしらが行き、刺激を受けて帰ってきますね。
現場はチャレンジの繰り返しだと思っているので、職員にもヨーロッパのやり方を見て、失敗を恐れないでいいからチャレンジしてほしいと伝えています。「一番」はないと思っていますから、常にチャレンジして、モアベターでいきたいと思っています。
保育士さん達が働きやすい環境を作るために取り組んでいることはありますか?
施設の体制として、弁護士の先生に顧問になっていただき、法律的なことなど問題や疑義があれば相談しています。また、社会保険労務士の役員がいるので、職場の環境を指導してもらっています。そういった基礎的なところに不備がないかから始め、その上でどんな職場が働きやすいかを考え改善しています。
具体的なところでは、複数担任制を取り入れています。職員の配置は手厚くしており、有休の消化率も100%近いです。今年入職した人の決め手はノーコンタクトタイムがある、残業がないということだったそうです。そのためには業務をスリム化することが必須なので、そこは本部が頑張っています。
業務のスリム化の一例としては、アルバム作成の簡略化です。それまでは園児一人ひとりのアルバムを作るのに2か月かかっていて、持ち帰り残業もありました。そこでグーグルフォトと連携させ、自動で写真選択をしてまとめるプログラムを作り、簡略化を図りました。これにより先生達は膨大なアルバム作業から解放されました。
現場が今やるべき仕事は何なのかを考え、それ以外のことは例えばITの力を借りて集約させていくという姿勢でいます。
保育士さんがすごいのは、保育園幼稚園の時からの夢をずっと持ち続けて実現し、その想いをずっと持ち続けているところです。そういう人が保育士を長く続けられる環境を作り支えていくのは法人の役目だと思っています。




エンゼル会の園で育った子ども達に将来どうなってほしいですか?
私は大谷選手のファンなのですが、彼は好きこそものの上手なれを体現していますよね。将棋の藤井聡太竜王も幼少期は興味があることに夢中になって取り組める環境だったそうです。我が子を理想の形に近づけたいと思う親御さんも多いのですが、子どもにとって一番エネルギーが湧くのは自分の好きなことをしている時。それが泥んこ遊びでも、年齢に応じた学習なのですから、その機会を作ってあげるのが大切です。
では勉強的なことも取り入れていますが、勉強ができる子を育てたいわけではなく、子どもが興味を持つ1つの機会として捉えています。それぞれの得意な分野で夢中になって、色いろなところで自分の才能を開花させてほしいと思います。
今後の展望を教えてください。
自分が育った頃は、街中でも田んぼの用水路には水が流れていて、春になると一面セリだらけになり、みんなで取ったものが毎日の食卓に上りました。こういう経験ってすごい財産だと思うんです。今は用水路の水も米を植える時しか流れていないし、セリもスーパーで買う。そういう意味で、わかば森のこども園は人間が生活するのに必要な環境がそろっている素晴らしい場所です。そこに、子ども達の生活の場を作れればと思っています。
職員には常々色いろな現場を見てくるように言っていて、私自身もあちこちに出張します。色いろな所を見て、園をどうしていこうか、子育て世代をどうしていこうか考え、子どもの成長だけではなく、保護者も含めてどう支えていけるかを目指していきたいと思っています。
(MiRAKUU vol.51掲載)
社会福祉法人エンゼル会

住所
〒885-0042
宮崎県都城市上長飯町81-4
連絡先
TEL:0986-22-4843