株式会社クオリス──環境と人が相互に育ち合い、よりよい保育へ

クオリスキッズさんについて教えてください。

クオリスはもともと大阪で介護事業を展開していましたが、2010年に保育事業に参入し、2012年横浜市にクオリス初の認可保育所となるクオリスキッズ鴨居駅前保育園を開設いたしました。その後、東京、横浜、大阪を中心に園を増やし、現在では40園を運営しています。
保育の特長を教えてください。
主体的な保育と言われていますが、実際にはそのベースとして大人の主体性が大事だと思っています。クオリスにはこのコンセプトから繋がる3つのこだわりがあります。
1つ目が保育です。私達がやりたい保育を突き詰め、研修などを重ねて、みんなで一緒に良い保育をしていきましょうということなのですが、この「みんな」には保育園側だけではなく保護者の方も含まれています。保護者の方にも育児の理想がありますから、その思いも重ねて、関係性を作りながら共に育てていくという、そういう保育をしたいと考えています。


2つ目は食育。クオリスグループは全国に様々な形の保育園がありますが、あえて統一献立にはしていません。なぜかというと、食べることは生きる力の源であり、保育の中心には食があると思っているからです。また、食には地域の姿があります。関西と関東では味が違うし、海側と山側では食材が違う。そのためコストはかかっても統一献立にはせず、地域の特色を活かす献立をお願いしています。
この想いは職員に対しても同じで、給食は福利厚生として1食250円で提供しています。これは会社からの感謝の気持ちも込められていて、素晴らしい取り組みだと思っています。
3つ目がとても大事で、チームワークです。仕事とプライベートでは明らかに仕事の時間の方が長いので、ここが充実していないと生活全体の質が下がってしまうと思うのです。どんな場所にも色いろな考えの人がいて100%同じ考えを持つのは難しいと思うのですが、一人ひとりが良い職場にしようという意識を持つことが大事だと思います。
園長、主任、保育士、看護師、調理師、栄養士、男性も女性も常勤も非常勤も、もちろん保護者の方も地域の方も、みんなが子ども達のため、自分達のためにもいい保育園づくりをしていこうという気持ちを持ってチームづくりをしていこうと職員には常々話しています。


子ども主体の保育はどのように行なっていますか?
たとえば0歳児では、体の発達を考え十分にハイハイしたり歩いたり遊んだりできる環境が大事です。また、興味を持っているおもちゃをちょうどつかまり立ちしたら取れるような所に置き、つかまり立ち、伝い歩きを自分の意思でするようになる配置にしています。このように、「自分で選ぶ」環境を作る、それがすべての主体の始まりなのです。
自分で選ぶ生活をしてきた子ども達は、自分の意思で動くようになるので先生に依存する子どもが少なくなります。それが発展して、4~5歳になるとミーティングができるようになります。いわゆるこども会議ですね。先生に強制されることなく自分達で問題解決ができるようになるのです。
以前職員に環境についてのアンケートを取った時、子どもにとって本当に大事な環境というのは大人なのではないかという意見がありました。その通りですよね。
大人は簡単に手を差し伸べることもできるし、引くこともできる。大人がどうあるかということが、子どもの主体を育てるのかなと思っています。


保育士さん達が働きやすい環境を作るために取り組んでいることはありますか?
クオリスでは、「おもちゃプロジェクト」「絵本プロジェクト」「IT部」「演劇部」など、職員の得意や興味を思う存分発揮できるプロジェクトがあります。部活みたいな感じでしょうか。たとえば運動プロジェクトでは、子ども達が野球をやりたいと言った時に、保護者の方と協力してキャッチボールとバッティングを教えていました。
保育園に行くことが「仕事行きたくないなあ……」ではなく、「今日はこんなことをやってみたいな!」という明るい気持ちになれる、やりたいことを叶えられるような取り組みをしています。
クオリスキッズで育った子ども達に将来どうなってほしいですか?
しっかり自分の意思を伝えられる人、自分の意見を持った人になってほしいと思います。
せっかく主体的にという育て方をしているのに、小学校に入るとみんなでやることを強制されて自己主張ができず、先生の顔色を伺うようになってしまうとよく保護者の方からお話を聞きます。強制しなくても色いろな経験の中で空気を読むこともできるようになっていくと思いますし、もったいないですよね。


今後の展望を教えてください。
主体性保育に舵を取り、保育の質を高めるために年間研修計画を立てて3年が経ちました。それが良い形になってきて、取材を受けることも多くなりました。著名な先生方とも人脈を築くことができ、こういった取り組みが面白いと思ってくれる人が増えたらいいと思います。
この状態に持ってくるまで、私は2年間泣きました。正直本当に大変でした。保育士研修と言いますが、一番勉強しなくてはいけないのは上に立つ人間なんですね。若い人のほうが最新のことを知っています。上に立つ人が絶対的に正しいわけでも、偉いわけでもない。世の中は変わり続けていて、それは保育も例外ではなく、今は主体性と言っていますがまた変わるかもしれない。それを受け止めるために、上に立つ者は勉強しなくてはならないのです。
最終的に保育園が生き残っていくには、人なんですね。クオリスも英語や体操など色いろなカリキュラムをやっていますが、そういった目先だけの教育に頼るのではなく、ここだったら安心して預けられるという環境を作っていける人が必要だと思います。それを私達職員全員が共有して、人間同士が本当に笑い合える会社にしていきたいと思います。
(MiRAKUU vol.50掲載)
株式会社クオリス

住所
〒556-0011
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連絡先
TEL:06-6575-9848