第5回【目標達成について】具体的にすべき 必要な要素とは
前回のおさらい
組織目標の設定は、まず何よりも理念──組織のあるべき理想の姿、存在意義、目的を明確にすることです。幼稚園保育園であれば、何のために、なぜ我々の園は必要なのかといったことですね。そしてその理念を追及するために何をすればいいのかを細かく落とし込んでいくのです。(第0回より抜粋)
目標達成について
編集部: 今回は「目標達成」について学びます。皆さんは保育を行う中で「目標」を立てながら行動していますか?
自分1人でも達成するのが困難なことが多いですが、それが「仕事」で「同僚と一緒」に達成しなければいけない、となった時……皆さんならどんな風に行動しますか?
年度初めに「子ども主体性」で保育を行うという目標をクラスで立てました。
しかし実際に動いていくと、保育士によって解釈が異なり「野放し」「叱らない(注意しない)」「なんでも子どもの言うことを聞いてしまう」など、自分の主観で保育をしてしまうことが勃発。
そのため年度終わりには目標達成したとは言い難い状況になっています。どうしたら達成できるようになりますか?
嶋津: 新しいことを始める時、手探りで進めていく中で最終的に振り返ってみると思い描いていた結果と違っていたということはよくありますよね。
今回のように、先生方の主観に任せてしまうと方法や解釈にズレが生じてしまうことは多々ありますので、まずは目標達成を支援する「仕組み」を作ることが必要です。
例えば、レストランで店員がオーナーからテーブルをきちんと綺麗にするよう言われた時、「綺麗」の基準は人それぞれです。
この場合、オーナーは店員にどのような状態が綺麗であるのか、どのようにテーブルを拭いてほしいのかを正確に伝える必要があります。
このように解釈のズレを解消するためには、曖昧さを無くした上で、日々起こっていることを全員でしっかりと共有し、進捗を確認することがとても重要です。
また「目標」を達成するためには、そのための方法を考えておくことが大切です。方法として、「目的」「目標」「戦略」「戦術」の4つをはっきりさせておくと良いでしょう。
ここで大切なことは、目標達成の全体像について、全員で共通の考えを作り出すことです。
今回の場合、「子ども主体で保育を行う」というのが「目標」になりますよね。では、他の3つには何が当てはまるでしょう?
「なぜそれをする必要があるのか」が「目的」、「どのようにしてやっていくか」が「戦略」、「具体的な保育の進め方・子ども達との関わり方」が「戦術」です。
目標達成するためのスケジュールを決めて、一度、現場の先生方で話し合う時間を設けてみるのはいかがでしょうか?
園長先生が思い描くイメージと先生方に見えているイメージがひとつになった時、一気に前へ向いて動きだしていきますので、目標達成に向けて共通の考えを作りだすことに注力してみてください。
編集部: 「戦略」や「戦術」。言葉だけだと難しいイメージがありましたがこんな風に考え実践していけばいいのですね。
次は園長先生からの週案や月案についてのお悩みが届きました。
保育士が週案や月案を作る時に参考書や本を参考にしながら目標を立てていますが、そこに載っているテンプレートをそのまま使ってしまうため、自分達の考えで目標を立てているわけではなく、実際に自分のクラスで見ている子ども達に当てはまるのかどうか不明です。
専門家からは書類に時間を取るなら目の前にいる子どもに目を向けろという意見もあったり……。
自園の子どもに合った目標を立てる手立てや方法をどのように伝えていけばいいでしょうか?
嶋津: 参考書などできれいにまとめられたものを見てしまうとついそれが正しいように感じ、テンプレートに頼ってしまうという気持ちもよく分かります。今回のケースでも、目標を立てる際に重要な3つのポイントと「目的」を確認することが必要です。
例えば、「集団遊びを通してみんなで遊ぶ楽しさを味わう 」という目標を立てたとします。
この場合、重要な3つのポイントとして、①そもそも、その目標は園が目指すべき方向と合っているのか ②その目標を達成するためには具体的にどういう行動が必要か ③必要となる行動(②)を続けることができているか、という視点で確認してみてください。
次に、「目的」について確認してみましょう。
例えば、日本一の登山家になることを目指しているAさんがいたとします。Aさんは日本一の登山家になるためには日本で一番標高のある富士山への登頂が必須だと考え、富士山登頂のために必要な準備やトレーニングを洗い出し、富士山登頂までのスケジュールを作成しました。
このAさんのように、なぜ富士山に登るのかという「目的」がなければ、富士山登頂という「目標」を達成することは難しいと思います。何の装備も無く、散歩のついでに富士山に登るという人はいないはずです。
自園の目指している姿について、先生方としっかり話し合い、立てた目標は何のためになぜ必要なのか全員がきちんと確認し理解することで、全員で同じ方向を向いて進むことができるようになります。
また、コミュニケーション(伝え方)の質を高めていくために先生方との「関係性の質」を高めていくことも重要です。なぜなら関係性の質を高めることで考え方の質が高まり、行動の質が高まり、結果の質も高まるからです。
ゴールイメージとその実現方法を繰り返し見直すことで、先生方と目指す方向にズレが生じることもなく、自ずと自園に合致した目標を立てることが可能となり、伝わるコミュニケーションにも繋がっていきます。
現場の先生方が希望を持って目標設定ができるよう、関係性の質を高めていくことにも注力してみてください。
総まとめ
今回の記事はいかがでしたか?
チームで動く保育士さん達にとって、全員が同じ方向を向いて進むことは一番重要かもしれませんね。コラムを参考により良い組織作りや関係作りに役立てていただければと思います。
次回のお話もお楽しみに!
(MiRAKUU vol.42掲載)
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- 経歴
教育コンサルタント。上司学のプロフェッショナルとして、国内、海外で講演・企業研修・コンサルティングを行い、メディアにも多数出演。
シリーズ100万部のベストセラー『怒らない技術』(フォレスト出版)をはじめ『子どもが変わる 怒らない子育て』(フォレスト出版)、『7日間イラオコダイエット』(EVO出版)など、著書累計は29冊で150万部を超える。
主な役職として、一般社団法人日本リーダーズ学会代表理事、リーダーズアカデミー学長、早稲田大学エクステンションセンター講師を務める