遊びながら楽しんで学ぶ! 勉強が「できる子」より「好きな子」に育てることが大事です!──小室尚子さん
勉強を遊びに組み込むことで子どもも大人も楽しい
編集長:小室さんが提唱されている「親勉」って何ですか?
小室:学習塾で子どもに勉強を教えていて、同じ時間、同じ先生が教えているにも関わらず、学力の差がつくのが不思議だったんです。調べてみると、お母さんの関わり方が全然違う。それで、親が勉強にどう関わっていくと良いのかなど、子どもが楽しく勉強できる家庭教育法を考え、教えています。
編集長:それが「親勉」。小室さん自身は小さい頃、楽しく勉強されていたのですか?
小室:いえ、「しなければならないもの」という義務感だけでやっていたので、楽しんで勉強する感覚はありませんでした。勉強はそこそこできたのですが嫌いでしたね(笑)。
編集長:それがなぜ「楽しく勉強」に?
小室:自分に娘ができ、賢く育てたいなと思って当たり前のようにプリント学習から始めたんですが、教えるこちらがイライラしてしまって。そんな時、娘が都道府県の地図パズルを具材にした料理ごっこをして「カレーライスどうぞ」と持ってきたんですね。なんの気なしに「これは鹿児島だからさつまいものカレーだね」などと言いながら食べていたら、幼児なんですが47都道府県とその特産物をあっという間に覚えてしまったんです。その時に、勉強を一度遊びに変換して子どもと一緒に遊んでしまえば、子どもは遊びだから楽しくできるし大人もイライラせず、双方にとってすごくいいと気付いたんです。勉強と遊びの境目って曖昧にできるんだと思い、遊びながら学べる教材を作っています。
編集長: 歴史、都道府県、部首、英語のトランプなどたくさん種類がありますが、幼児でも使えますか?
小室:もちろんです。コピーしてボールをぶつける的にしたり、向こうの壁に貼ってかけっこで取ってくるとか、宝さがしでもいいですね。このトランプは洗濯バサミを使って立てられるので、3歳以下では歴史トランプを人形のように使っておままごとしたり、ドミノ倒しをおすすめしています。
取り入れにくいな、とか飽きちゃったという時は、動きを入れてみてください。普通の神経衰弱でも、2枚揃ったらハイタッチするとかカードの人物のマネをするとか、無駄な動きを入れるんです。そうすると特に男の子は喜ぶし、動きを入れることで飽きにくくなりますよ。
編集長:お受験対策系が多いのですか?
小室:いえ、子どもってひらがなより漢字や部首のほうが覚えるのが早かったりしますし、そういうわけでもありません。小学校高学年以上の内容を取り入れているので難しいと思われるかもしれませんが、遊びに組み込み親しんでいくことで、子どもは自然に覚えていきます。また、絵だと判断できるけれど文字だと判断しづらいという学習障がいや聴覚障がいのお子様が教材として使用されていますね。
勉強は「好き」を探すきっかけ
編集長:幼児教育というと、とにかく遊ばせる派と早期から始める派があると思うのですが、小室さんは?
小室:真ん中です。勉強を勉強としてではなく遊びでやる派(笑)。今の時代、小学校入学までに何にもやらせないというのはリスクが高いと思うんです。同じ小学校でも、公立と偏差値の高い私立とでは教科書一つとっても全然違いますし、私立だと小学1年から1人1台PC を使えて、宿題をE メールで提出したりするところもあるんです。
編集長:そんなに違うんですか!?
小室:違いますね。そういうところで既に差がついている子達が大学入試で戦うんだと思うと、何もしないというのも怖い。だから、遊ばせながらこの先習っていくことに自然に触れていくというのが一番リスクが低いのではないかと思っています。
編集長:今までとは違ったかたちで学習することで、成長の仕方って変わりますか?
小室:たとえば、都道府県カードで遊んだ後、雲や葉っぱの形を見て「富山県に似てるね」などと言うようになりますね。月を見ても単に「綺麗だね」で終わるのではなく、三日月だとか南中してるとか、普段の会話に知的といいますか、勉強的なものが自然と入っている感じになります。
編集長:会話に自然と勉強=遊びの成果が表れるということですね。
小室:はい。ちょっとしたきっかけなんですよ。ある子が国語辞典で総理大臣を調べたのですが、歴代の総理大臣は載っていたけれど当代の総理大臣は載っていませんでした。どうして載っていないと思うか聞くと、「偉業を成していないから」と答えたんです。そして、「僕は偉業が成せて辞書に名前を残すような総理大臣になりたい」と言うんですね。こういうきっかけを持つだけでも、じゃあ何をすればいい? どういう勉強をすればいい? と、その後の勉強へのとっかかりが変わってくるので、色いろなことに知識を持つというのはすごく大事なことだと思います。
編集長:夢や将来に対しての入り口を見つけるということですね。
小室:今は必ずしも高学歴の人が高収入を得られる時代ではなくなってしまったので、単に高学歴になるためではなく、勉強することで好きなことを見つけてほしいと思っているんです。そもそも、遊びって楽しいから、好きだからやるんですよね。挫折もあるとは思いますが、「好き」がベースにあると乗り越えやすくなりますし、仕事が大変でも頑張れる。仕事にまで繋がらなくても、「好き」を追求する先の人生はすごく豊かになるのではないでしょうか。
私は起業塾もやっています。何のためかというと、いわゆるレールから外れてしまった時に自分でレールを作るためです。友達関係とか先生とうまくいかないとか理由は様ざまですが、中学くらいで学校に行けなくなってしまう子って少なくないんです。でも、今の日本だと学校に行かないと一般的な就職はできないので、親は行かせたい、子どもは行きたくない、で最悪のケースも起こりうる。そういった時に、本当にやりたいことがあるなら学校に行かなくていい、雇われることは諦めて起業すればいいと本人にも親にも知ってほしい。
私は、教育というのは経済的にも精神的にも自立できるようにするためにあると思っています。好きなことで食べていけるなら、就職することにこだわらなくていい。勉強はそのための最初のきっかけなんです。
子どもの興味を広げる工夫を
編集長:好きなことを仕事にするっていいですね。保育士さんはそういう人が多いと思います。最後に、読者の方にメッセージをお願いします。
小室:最近ではあまり競争をさせないという話を聞くこともありますが、競争はきちんとさせたほうがいいと考えています。負けて悔しい思いをすることは生きていく中で大事なことだと思います。気持ちをコントロールしたり、失敗を乗り越える力を養うことができるのではないでしょうか。
今の日本の教育は、幼児では幼児の勉強だけ、小学では小学の勉強だけ、というように切り取っているように見えます。教育というものは2歳から22歳まで続いているものですから、長期的に見たらもっと良い教育ができると思います。読み書き算数をやっている園は多いですが、理社に関することのほうが興味の幅が広がるのでぜひ取り入れてほしいです。
たとえば、給食で使っている食材の産地の地図を掲示している園がありますね。都道府県を覚えるのは小学4年生ぐらいですが、そういうところから理社にからめていくともっと子どもの興味が広がって、将来も広がっていくでしょう。
ぜひ先生方にはそのお手伝いをしていただけるといいなと思います。
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小室尚子(こむろ・なおこ)
山形県出身。夫の海外赴任で香港に在住。中国人・日本人の家庭教師を務めた後、長女の出産を機に遊ぶように勉強する学習法を実践。娘が小学校に入学した2005年を機に学習塾Terakoya Kids を設立。名門私立小中学校に10年間で800人以上の合格者を輩出。
2016年3月に(一社)日本親勉アカデミー協会設立。主に母親向けに人生に勝てる子供育成実践講座を実施。現在インストラクターは全国に300名。メルマガ読者数も27000人を超える。