一歩踏み出す勇気が、子どもの世界を広げてくれる──澤 穂希さん

サッカーとの出会い
堀川:サッカーを始めたきっかけや、子どもの頃の遊びや学びで印象に残っていることはありますか?
澤:私は習い事として3歳から水泳を始め、6歳の時にサッカーを始めました。どちらも兄の影響です。兄とは年子なので、いつも何かを一緒にしていました。サッカーは、兄の練習を見に行った時に、コーチに「妹さんも蹴ってみないか」と誘われたのがきっかけです。その時蹴ったボールがゴールに入って、とても嬉しくなり、自分もやりたいと思いました。水泳は12歳でやめてしまいましたが、サッカーはその後ずっと続けています。
堀川:サッカーではどんな瞬間が一番嬉しいですか?
澤:水泳の個人競技とサッカーの団体競技も経験してきましたが、サッカーでは団体競技ならではの、目標に向かってみんなで取り組む楽しさを感じました。12歳で水泳をやめ、サッカー一本にしましたが、性別や年齢、国籍に関係なく、みんなで楽しみながらプレーできるのがとても面白かったです。シュートを決めたり、パスを繋ぐ瞬間は特に楽しいですね。
堀川:チームでの経験や努力を通して、挑戦することはどのように学びましたか?
澤:サッカーを始めた時、男の子の中に女の子1人でした。女の子がサッカーをやる環境は当時ほとんどなく、入団から挑戦でした。母は「歴史を変えてください」と言って入団を後押ししてくれました。全国大会でも女の子は出られないという状況がありましたが、壁にぶつかることが多い分、それを乗り越える楽しさや諦めない力を幼少期から学んだと思います。
“チャンスの波に乗る”という教え
堀川:ご両親の教育方針はどのようなものでしたか?
澤:母がよく言っていたのは「チャンスの波に乗りなさい」という言葉です。訪れるチャンスを掴むか逃すかは自分次第で、やりたいことがあれば挑戦することが大事だと教えてくれました。望まない結果になっても、それは失敗ではなく経験になると感じています。父も私が大学を辞めてアメリカに行きたいと決めた時、支えてくれました。両親のサポートがあったからこそ、のびのびとやってこられたと思います。今は自分の子どもにも、やりたいことはなるべくやらせています。
堀川:小さい頃通っていた園の先生の印象はいかがでしたか?
澤:幼稚園の年少の頃は、比較的厳しい先生だった印象があります。父の転勤で大阪に引っ越した時の先生は優しかったです。写真を見ると、運動会や活発に遊ぶ姿が多く、昔は体を動かすことが日常だったんだなと思います。今でも、子どもと全力で遊ぶことを大切にしています。本気で向き合うことで、負けず嫌いや努力する力も育つと思うので、親としても真剣に向き合うことが大事だと感じています。
サッカー教室で伝えたい“勇気の一歩”
堀川:現在はサッカー教室や子ども向けのイベントなどもされていますよね。どのような思いで活動されていますか?
澤:今はサッカー協会とディズニープリンセスと一緒に、特に低学年の女の子を対象に活動しています。ほとんどが初心者ですが、一歩踏み出す勇気を持ってほしいと思っています。新しいことを始める時は不安もありますが、挑戦すると楽しい世界が広がることを知ってほしいです。サッカーに限らず、みんなで協力して遊ぶ楽しさや挑戦する楽しさを伝えています。私にとって、子ども達に自分で扉を開いていく楽しさを伝えることが大切な活動です。
大人が「やりすぎない」勇気
堀川:お子さんや周囲の子ども達と接する中で大切にしていることは何ですか?
澤:やはり子どもの自主性や意欲を大切にしたいと思っています。自分の子どもだと先回りしてしまいがちですが、経験させることが大事です。挑戦する気持ちや粘り強さを伝えるために、まず自分がやってみることも意識していますし、言葉でも伝えるようにしています。
堀川:子ども達の可能性を広げるために大人ができることは何だと思いますか?
澤:得意不得意はあると思いますが、何でもやらせてみないと分かりません。やりたくない子もいるかもしれませんが、楽しさを感じさせることが大切です。現役時代も、指導者に言われるだけでは成長しませんでした。自分で考えて行動することが成長に繋がると思うので、子どもにも自主性を育む環境を作りたいと考えています。
堀川:お子さんが通っていた幼稚園の先生方とのエピソードはありますか?
澤:英語教育に力を入れている園で、外国人の先生が対応してくださり、広い園庭やアメリカナイズされた遊具で体をたくさん動かせました。シャイな性格でしたが、幼少期に様ざまな人と関わった経験が、自分から友達を作る力に繋がっていると思います。今も英語の習い事に毎日通っています。
堀川:外遊びの重要性について、保育園や幼少期の体験から感じることはありますか?
澤:私はずっと仙台に住んでいて、冬でも雪や雨の中、公園に連れて行きました。着替えを持たせて自由に遊ばせることで、泥遊びや雪遊びなど自然との触れ合いを体験させました。親も一緒に遊ぶと楽しく、子どもにとって大切な経験になると思います。
堀川:今後、子ども達や地域にどのように関わっていきたいですか?
澤:サッカー教室や学校活動を通して、子ども達との触れ合いを大切にしています。この時期しか見られない子ども達の成長や日々の様子を大切にしながら、できる限り支えていきたいです。
堀川:読者へのメッセージをお願いします。
澤:毎日、子ども達の笑顔あふれる時間を一緒に作ってほしいと思います。学校や園での出来事を子どもから報告されると、先生方の努力や子ども達の楽しさが伝わってきて嬉しくなります。日々の関わりが子ども達の成長に大きく繋がると思います。
(MiRAKUU vol.53掲載)
-

- 元サッカー日本女子代表
東京都出身。15歳で日本代表入り。2011年FIFA女子W杯ドイツ大会で優勝に貢献し、MVP・得点王を受賞。帰国後に国民栄誉賞受賞。同年FIFA女子年間最優秀選手賞を受賞。2012年ロンドン五輪で銀メダル。2014年AFC殿堂入り。2015年W杯準優勝に貢献し同年引退。日本代表通算205試合83得点。現在は一児の母として子育てをしながら活動し、スポーツの普及のため様々な活動を行っている。



