守谷どろんこ保育園──豊かな自然の中で、やりたいことを自分で選び、体験し、生きる力が育まれる

守谷どろんこ保育園さんについて教えてください。

ここではもともと造園業が営まれていて、素晴らしい雑木林がありました。極力その木を残したいという想いが地主様とどろんこ会で一致しまして、土地を譲り受け、2021年4月に開園しました。こういった経緯もあり、木がたくさんある自然豊かな中で子ども達が生活できる園になっています。
実や花芽、落葉で四季の移り変わりを学べますし、木登りや虫捕りもでき、自然観察には事欠きません。子ども達は友達同士の関わりと共に、そういった自然との関わりを好んでしています。


キャンプ場のような炊事場があるそうですね。
どろんこ会グループとしては園の設計段階で初の試みとして、園庭の一角に大きな炊事場を作りました。子ども達だけでなく、職員や保護者もそこで煮炊きをしてコミュニケーションの場になると良いなと思っています。
先日はどろんこサポーターズ(※)の美化活動の後に、各家庭で野菜を持ち寄り豚汁を作りました。
※有志による任意参加の保護者組織
園庭には小さい畑があり、そこで採れたものを調理して食べるのですが、この炊事場があることでその場で子ども達が調理して食べることができます。
野菜を栽培し、収穫して食べるということをしている園はたくさんありますが、収穫した後は調理室に持って行って調理をお願いすることが多いかと思います。しかし、守谷どろんこ保育園には炊事場があるのでその場で調理できるし、さらに園庭で焚き火もできるので、素材をそのまま活かした食べ方も楽しめます。
体験を連続的にできるというのは、子ども達にとって、とても大きな意味を持つと思います。
子ども達はいつも園庭で遊ぶのですか?
豊かな園庭はありますが、園外での活動も大切にしています。乳幼児期には、多くの体験と、多くの人との出会いがすごく大事だと思います。園外に出ることで色いろな事、物、人との出会いがあるので、園外にも足を運ぶようにして、地域の方との関わりも大切にしています。
コロナも落ち着いてきたので、地域の方のエネルギーを借りながら、子ども達の出会いや体験といったものをさらに充実させていきたいと思っています。

他にどういった保育の特長がありますか?
特徴的なのは、私達は子どもの自己選択や自己決定を大事にしたいと思っているので、散歩や日中の活動など、2歳児以上は選択制にしているところです。
たとえば外遊びでも、公園に行く子、園庭で遊ぶ子、公園でもA公園に行く子とB公園に行く子など複数選択肢があり、子どもが自己決定できる場を作っています。
そして、その中で必然的に異年齢の集団ができます。大人が与えた合同保育とか縦割り保育ではなく、選択制保育の中で自然と異年齢集団ができ、その中で異年齢の関わりができるようになっているというのが特長ですね。
子ども主体の保育で、先生の研修、学びはどうしていますか?
研修に関しては職員会議内での園内研修や、自主研修という形で、自分達の学び合いを大事にしています。
「子どもは何も持っていないので、そこにどれだけ注ぐか、躾けるか」という従来の保育から脱却できるかというのがポイントの1つだと思っています。子どもの可能性や個性をどうやって良い形で芽吹かせてあげるか。
私達大人が無理にやらせるのではなく、それが自然に表出してこられるように、見守ったり、きっかけを与えたり、環境を用意したりすることを大事にしていこうという話をしています。
とはいえ、職員の育ってきた環境や保育士としてのキャリアも様ざまなので、長年従来の保育をしてきた場合には戸惑いもあると思います。「子どもの成長を信じ、見守る保育」については、全員が大事にしていけるよう、研修を通しての繰り返しの学びは、スタンダードにしていくべきだと思っています。
保育者として保育は「楽しい」というよりも「面白い」だと思っています。子どもは予想していなかったことをやり始めるし、新しいことがたくさん起こるし、発想も豊かです。
子ども達とSDGsをテーマに話をすることがあるのですが、「海の豊かさを守るためにどうすればいいか」をみんなで考えた時、「海や川を好きになってもらう」という意見が出たんですね。また、「海に行かない」という意見も。
大人はゴミを捨てないとか、捨ててあるゴミをどうすればいいかばかり考えがちなのですが、逆転の発想というか、シンプルかつ深い考えに非常に感動しました。
子どもでもそこまで考えるんだという発想もあれば、子どもならではの角度から見た発想もあり、このように私達がはっとさせられる気づきがあるのが保育の醍醐味だと思うんです。
そういった事象を面白がれるということの大切さや、その発見や気づきに対して敏感になっていこうということは職員とも話しています。
毎日昼礼で、新しく気付いたことを共有し、それに対して他の職員がアンサーをするという取り組みをしています。
この取り組みを通して、やらず嫌いや他者の取り組みを他人事にしてしまう職員が減り、新しいことや苦手なことにチャレンジする、得意なことでフォローし合うという職員集団になっていくことを願っています。


ここで育った子ども達に将来どうなってほしいですか?
今こんなに自由にしていてわがままな子に育たないか、小学校に上がった時に急に一斉教育になり評価されて躓かないかという不安がある保護者の方もいるかと思います。
しかし私は、人に迷惑をかけたり、迷惑をかけられたりというのはすごく大事なことだと思っているんですね。躓かないのではなく躓いた時に自分で立ち上がれる、できないことがあったら助けを求めることができる。本当の意味の逞しさを身につけてほしいと思っています。
鬱、自殺、引きこもりがこれだけ多い日本では、小学校で躓かないことよりも、もっと長いスパンで人生を見る必要があると思います。
そのためには、認知能力に力を入れて早めに小学校の準備をするという教育よりも、躓いた時に頼り合える、助け合える人間関係を作ることができる力を育むような教育の方が良いと考えています。子ども達には、人と一緒に生きる喜びを実感してもらう機会をたくさん創ってあげたいんです。
答えのない時代、非常に混沌とした世の中、どうなるかわからない将来に向けて、今だからこそ人間の根っこの部分に、出会いや体験を通してたくさんの栄養を与えてあげたいと思っています。
(MiRAKUU vol.43掲載)
守谷どろんこ保育園

住所
〒302-0116
茨城県守谷市大柏1001番-1
アクセス
つくばエクスプレス 守谷駅より徒歩19分
関東鉄道バス/コミュニティバス 守谷駅→守谷市役所バス停より徒歩4分
開園時間
月~土 7:00~20:00
連絡先
TEL:029-744-9028