学校法人東江寺学園 東江幼稚園──しっかりと遊び込み、リアルな体験をすることが人生の土台になる

東江幼稚園さんについて教えてください。

もともとお寺があったこの地に、祖父母がお寺の幼稚園として始めて今年で創立74年目になります。その頃はいわゆる「普通の幼稚園」でしたが、少しずつ今日の保育の形に変わってきています。
園舎は、自然界の中に直線は存在しないという考えの基に設計をしてもらい、曲線を多用して同じ形があまりないようにしています。また、無垢の木や珪藻土など自然素材のものを多く使い、建物の中にいても自然を感じられる気持ち良い園舎になっています。


園庭は、しっかり遊び込める園庭を目指して、毎年少しずつ職員や保護者の方の力を借りながらより良いものを目指して作ってきているところです。
園庭には、高さがある遊具など少し危険なものもあります。たとえばツリーハウスは6mほどの高さにあり、これは結び目を付けたロープを使って登ります。誰でも簡単に登れてしまうと大きなけがに繋がってしまうので、小さい子が登れないように、登る力がある子だけが登れるようにあえて登りにくくしています。ツリーハウスは特に高さがあり危険もあるので、週に1回見守りの人手を揃えた時だけ登れるようにしています。
他の自由に使える遊具も階段で登れる所はなくて、登れる力がある子だけが登れるようになっています。他ではないような、手作りの、体を思わず使いたくなるような遊具をたくさん置いています。


保育の特長を教えてください。
縦割り保育をしています。同じクラスの中に大きい子も小さい子もいるので、年少でも4月生まれの子は年中年長と一緒に遊んでいたり、3月生まれの年長やおとなしい子は小さい子と一緒に遊んでいることもあります。年上の子は小さい子に教えてあげることで自己有用感が芽生えますし、小さい子はお兄ちゃんお姉ちゃんに優しくしてもらうことで、困ることなく楽しんで幼稚園に来ています。
保育の内容としては、自発活動と呼んでいる自由遊びの時間が多いです。木工コーナーで木工作をしたり、ジャングルジムに登って何か作戦会議をしたり、穴を掘ったり、子どもが集中して遊べるような場所や遊具を用意しています。
砂場には井戸があります。ガチャポンポンプにつながっていているのでちょうど良く水を出すには仲間と協力する必要があります。このように、遊びながら自然と他の子と関われるようになっています。
園庭にはしっかりと土で遊べるように感触の良い山砂を入れています。泥遊び後の家庭での洗濯は大変かとは思うのですが、大人になって泥遊びなんてできないので、子どものうちに泥や水で思いっきり遊ぶ体験をしてもらいたいと思います。
思いっきり遊びに集中するということが、将来就学したり大人になった時に勉強や仕事に集中できる素地を作ると思っています。好きな遊びを見つけて、好きな仲間と、しっかり遊び込める時間を大切にしています。
300坪の田んぼでお米を育てているそうですね。
隣の千葉県流山市に田んぼを借りていて、完全無農薬有機栽培のお米を外部の手を借りずに育てています。職員、園児はもちろん、希望するご家族にも参加いただいています。
当園の現在の在り方は、現理事長の浅井孝順が「より良く生きるとはどういうことか」を求めて伊豆下田での自給自足生活に飛び込み、その中で子どもを4人育ててきた7年間の経験からの学びを色濃く反映しています。ゆえに、自然からの学びは、当園が非常に大切にしていることの1つです。
そこからの「作物を自ら育て、食べる経験は人を育てる」という学びがこの活動に繋がっています。
田植え体験は、子どもにとっては泥遊びも楽しみの1つですがそれだけではありません。
秋になって自分達が植えた稲を刈り取ってお米として食べることで、食物の大切さや命の繋がりを実感しています。
他にも、園庭にある畑で野菜を育て、採れた野菜を使って月に3~4回調理活動をしています。
食べるだけでなく作るところから食べ物に触れることで、家でも料理をしたいという子が出てきたり、家だと食べない野菜でもみんなで作った料理に入っている野菜なら食べるなどの変化が見られます。
自分自身が食事に関わることで、食について子ども達が自然に学んでいく経験をしています。

お寺ならではの教育はありますか?
各クラスにお地蔵様がいるので、たとえば調理活動した時はお供えをして、この野菜を売ってくれた八百屋さん、作ってくれたお百姓さん、育ててくれた天気などに対する感謝を仏様にしてから自分達がいただいています。挨拶や感謝をするということを、そういう場面の時に具体的な形で大人が見せることで子どもが学んでいくと思っています。
また、お寺の本堂が幼稚園のすぐ隣なので、仏教行事の時には本堂でお祈りをしたり、お寺のご住職から「みんなと仲良くするために、心の中に仲良しの種をまこう」「悪いことはしてはだめ」等と仏教の話を易しく教えてもらっています。


ここで育った子ども達に将来どうなってほしいですか?
自分のことをしっかり自分で決められる人になってほしいと思っています。
子ども時代から色いろな選択肢を用意して、子ども本人が選ぶ機会や選ぶための時間を十分に与え、禁止はできるだけしないようにしています。
大人になっても、自分で考えて自分の意志で物事を選んで、自分の人生を生きていけるようになってほしいと思います。
今後の展望を教えてください。
今後ますますIT化が進み、人は知識だけではAIには敵わないでしょう。だからこそ、気持ちよかったとか、面白かったとか、集中できたとか、そういう原始的な感覚、リアルな体験を味わえる生活が今まで以上に貴重になってくると思っています。
手をかざすだけで水がでる蛇口、火のないコンロなど便利なものがたくさん出てきましたが、便利になりすぎてしまうと色いろな経験が減ってしまうという面もあります。
あえて手をかけなければできないことを用意して、体験する。そういう少し手間がかかるけれども自分でもできるという体験を大事にした教育を続けていきたいです。
(MiRAKUU vol.43掲載)
学校法人東江寺学園 東江幼稚園

住所
〒125-0041
東京都葛飾区東金町2-25-12
アクセス
JR金町駅より徒歩11分
開園時間
月・火・木・金曜日 9:00~14:00
水曜日 9:00~13:00
第3土曜日 9:00~11:30
預かり保育
月・火・木・金曜日 14:00~17:30
連絡先
TEL:03-3607-0548