2022.10.17
保育園訪問【雑誌掲載版】

社会福祉法人夢工房 保育所型認定こども園下鴨夢──京の伝統が息づく環境で、家庭と地域子どもと、将来を繋ぐ

京の伝統が息づく環境で、家庭と地域子どもと、将来を繋ぐ──社会福祉法人夢工房 保育所型認定こども園下鴨夢

下鴨夢こども園さんについて教えてください。

園長:出口典子さん

本園は社会福祉法人夢工房(全国で保育園11・こども園13)の1つとして、8年前にできた保育所型認定こども園です。
京都市左京区の閑静な住宅街という立地から、建物は派手にせず、周りに溶け込むような雰囲気にしています。

中庭が園庭で、この土地を譲ってくださった方のお庭にあった動物の像をそのまま使わせていただき、全体的に和風の趣となっています。
園舎の中は京風のエントランスから始まって、子どもが集中できる小さな畳の部屋や黒白市松模様の畳が敷かれた23畳ある広い和室など京の伝統が息づく施設環境の中で保育をしております。

また、地域の公園や、すぐそばにある高野川へ散歩に行きます。高野川沿いは桜もきれいですし、1年を通して自然の変化を感じられとても良い場所です。
4歳5歳になると、下鴨神社まで行くこともあります。夏は足つけ神事(御手洗祭)に参加しますし、新年には初詣に行って宮司さんのお話をうかがいました。せっかくの京都ですから、京都の文化を大切にしていきたいと思っています。

保育のこだわりを教えてください。

保育では本物にこだわっています。今は情報が溢れていますから、本でもパソコンでも調べれば出てきますが、実物、本物って違うと思うのですね。実際に足を運んで、見る、触る、匂いをかぐ等。子どもだからこそ本物に触れることを重視しています。

乳幼児期は生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要な時期です。
私達はその大切な時期に子ども達と共に生活できることに誇りをもっています。
情報化社会の中である今日、あらゆることがデジタル化、スピード化されていく中で保育(子育て)には、じっくりと手間をかけたいと思います。

また、子どもが大好きな遊びを通して、保育士と共に感動体験(実体験)ができるようにしています。

情報発信として、園だより、保健だより、給食だより、クラスだより、しもがもレター(子育て支援)、食育指導、園長だより(下鴨夢っ子)を作成しております。

どのようにして保育士の質の向上を目指していますか?

私達は、自主的な子どもを育てたいと思うと同時に、職員の自主性も重視しています。
園では様ざまな行事があり、行事ごとに係を決めていますが、全てやりたいと思う人の立候補制にしています。
コロナ禍で、一時期ほとんどの行事がなくなってしまいました。しかし、コロナだからできませんとしてしまったら、大事な乳幼児期に子どもは何も経験することができないまま成長してしまいます。
そこで、去年は生活発表会実施に向けて、密を避けるために大きな会場を予約しました。するとどうでしょう。それぞれの職員が積極的に動き出しました。
入れ替え制にしたらいいのではとチケットを作ったり、座席表を作成したりして、アイディアが次々に出てきました。また、わくわくどきどきする行事名のネーミングや全職員によるお楽しみ会など、係が先導して企画進行を行いました。
職員が自らやろうと思ったことは、楽しく最後までやるのだと改めて感じ、とても嬉しく思います。こういう経験の積み重ねで、保育士自身の質が向上していくでしょう。

研修も、与えられるものだけではなく自分達で学ぶことを決めて行なっています。
フォトカンファレンスや保育公開などをしていますが、今は、国が提示している10の姿の分かりやすい本を1人1冊ずつ購入して勉強しています。10の姿は0歳から積み上げて小学校へと繋げていくものですから、今私達がやっていることがどのように小学校へ繋がっていくのかを知り、うまく繋げていくためにどうすれば良いかも考えていきたいと思っています。

保育士の働きやすい環境をどのように整えていますか?

自分達の今を1つひとつ見直すことが働き方改革に繋がると思います。たとえば、指導計画には月案、週案、日案、子どもの個別記録があります。昨年はすべてを別々に作成していましたが、週案と日案の重複する部分をまとめられないかという意見が職員から出て、形式を見直して簡潔にすることにしました。

また、早番・遅番の職員の入れ替え時に休憩時間を設定し、子どもから離れる時間を作りました。しかし、結局パソコンで事務作業をしていたりして本当の休憩時間になっていないということが課題でした。それで、形からと思い、休憩室を作りました。これから活用してもらえるといいなと思っています。

育休制度もありますが、長く保育士を続けられるように環境を整えていきたいですね。

ここで育った子ども達に将来どうなってほしいですか?

悲しいことに、若くして命を絶ってしまう人、人を害してしまう人が多いと感じます。原因はなんだろうと思って色いろと調べてみて、「乳幼児期にどう育てられたか」が1つのキーポイントではないかと感じました。
自分を大切にしてもらった人でないと、自分を大切にできないそうなのです。だから私達は子ども達を大事にして、子ども達には自分も人も大切にできる人になってほしいと思います。

また勉強面については、知識の暗記ばかりではなく、学んだことをどう使うか(アクティブラーニング)が重要になってきています。
京都のある小学校では「ここに1,000円あります。これで日本のみんなが幸せになるためにはどう使いますか」といったような、正解がない問題が出るそうです。
そういう問題をきちんと考えられる、正しいかどうかわからなくても自分の思いを伝えていける人になってほしいと思います。

今後の展望を教えてください。

2025年問題と言われている、人口減少社会を迎えるにあたってのこども園・保育士の在り方です。
「選ばれるこども園」「保育士が長く働くことができるこども園」にしたいと思っています。
こども園が、引き続き地域の子育て支援に役割を果たすことができるよう、空きスペースを活用するなど、多機能化を図る必要があると考えます。
地域の方が立ち寄ってちょっとお茶を飲んだりお話したりして楽しめる部屋も作れるといいなと思っています。
京の伝統文化を大切に、これからも地域に開かれたこども園として地域の方への情報提供を行なっていきたいと思います。

下鴨夢と言えば○○といったら?

トライアングルパワーです。元気いっぱいの子ども、それから笑顔で明るい職員、そして協力的な保護者の3つの絆でできたトライアングルのパワーで下鴨夢ができていると思います。

(MiRAKUU vol.40掲載)

社会福祉法人夢工房 保育所型認定こども園下鴨夢

社会福祉法人夢工房 保育所型認定こども園下鴨夢

住所

〒606-0865
京都府京都市左京区下鴨東高木町30番

アクセス

京都市営地下鉄 松ヶ崎駅より徒歩15分
京都市バス 高木町バス停より徒歩3分

開園時間

月~土 7:00~19:00

連絡先

TEL:075-722-9614

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