2020.07.15
保育士のライフスタイルを輝かせる

保育士のストレスマネンジメント

保育士のストレスマネンジメント

新しい年度が始まり、子ども達の様子が落ち着いてきた頃に気をつけたいのが、”保育士自身のストレス”です。今回は、見えにくく自分でも捉えづらい精神的なストレスを3つあげて、対処方法について考えていきます。

保育士のストレス 3種類

1.職場の環境

2.保護者とのやり取りの難しさ

3.自分自身の生活について

新しい年度が始まり、子ども達の様子が落ち着いてきた頃に気をつけたいのが、”保育士自身のストレス”です。今回は、見えにくく自分でも捉えづらい精神的なストレスを3つあげて、対処方法について考えていきます。

1.職場の環境

保護者とのやり取りの難しさ

保育の現場は休憩のタイミングが取りにくく、子ども達を抱き抱えたりするため、体への負担も大きいですが、あっという間に1日が過ぎるので、疲労が気づかないうちに溜まっていることが多いです。まず、職場環境に関するストレスを列挙することと、それに対する工夫ができるか、判断していくことが重要です。

これは認知行動療法で用いられている、考え方のクセの整理の方法です。

「長く働く事への固定観念」の本当の理由

保育現場はシフトが細かく決まっています。朝が早い人、夜が遅い人、人によっては毎日の勤務時間を覚え切れないほど、であるかもしれません。

主な職員に加えて、補助の先生や介助員の先生など、関わる先生の立場や勤務時間も本当にたくさんパターンがあります。

働く形に選択肢があることは1つのメリットですが、子どもの安全を守るために「同じ目線で同じ価値観で」保育していくことや「子どもの様子を引き継ぐ」ためには、億劫なシステムであるとも言えます。

また、保育や教育、福祉など、特に子どもに関わる仕事は、どうしても"長く働くこと"が子ども達のためになるという固定概念が強い職種であるように感じます。実際、残業される先生や自宅に仕事を持ち帰る先生も多くみてきました

実りのない"子どもの噂話・愚痴大会"

この“定時で帰宅できない理由”は、一体何でしょうか。

その理由の1つには、“先輩や上司と子どもの様子を話しすぎる”という、実りの少ない“子どもの噂話・愚痴大会”が挙げられます。

子ども達は毎日色いろな表情を見せてくれます。活動によっては、ケンカやトラブルもあります。

その1つひとつが成長であり、保育士の醍醐味でもありますが、自分の中で出来事を消化できないか、自分が頑張ったことを誰かに承認してほしいときに、この実りの少ない“子どもの噂話・愚痴大会”が繰り広げられます。

例えば、遅刻してきたAちゃんについて・・・

「B先生! 聞いてくださいよ、Aちゃん昨日家族で遊園地に行って、帰宅が12時過ぎていたんですって! お昼寝の後起きないし、グズルし、おやつはまずいって投げるし・・・きっと疲れているんですよね。本当、どうして夜中まで遊ばせるのかしら?」

「わかる、わかる! うちのクラスのCくんもおばあちゃんちに行ったとか、お腹の調子が悪いのに、好きなケーキを大量に食べたとかで、今日お昼食べてくれなくって。いつもならおかわりする子なのに心配。あと、Dちゃんもお昼食べなくて! 食べむらがある子だと自宅でお菓子ばかりかと心配!」

「E先生、聞いて、そのCくんってうちのクラスのFちゃんの髪の毛引っ張って・・休み明けは女の子にちょっかい出すの、去年もそう?」などなど・・・。

職員室でよく聞かれる何となく聞かれる会話。そして、終わりのない会話。改めて言葉でまとめると本当に単なる噂話と愚痴にしか聞こえません。

子どもの様子の報告や子どもを本当に心配している場合には、別の表現や会話の仕方になると思います。

オススメ対処行動

「お先に失礼します!」とさらりと言いさっと帰る。

愚痴大会には耳を傾けず、レポートだけ作成して帰る。

時間は有限です。子ども達への対処について話し合うならば、時間と場所をきちんと設定し、誠意を持って子ども達への支援方法を検討するべきです。子どもへの尊敬する心がないと、このようになりがちです。

オススメ心の持ち方

全ては子どものためと思って、耳をOFFにする。

支援を検討する会議ではしっかり発言して、子どものことが大好きなアピールを必ずする。

噂話と愚痴大会をしている人には、「いつもお疲れ様ですね」と労い、一言でその場を立ち去る。

2.保護者とのやり取りの難しさ

保護者とのやり取りの難しさ

本来であれば、子育てのパートナーとなる保護者と保育士。

しかし、筆者はお互いの想いが交錯したがゆえに、トラブルになっている場面に何度も遭遇してきました。また、保護者とのやり取りが苦痛で、休職・転職された方とも出会ってきました。

なぜそこまで追い詰められることになるのでしょう。

その中でも、保育士の方から頂くご相談の中で多かったのが、「〇ちゃんのママ、苦手なタイプで、子どもの特徴を理解してくれないんです」というもの。

この苦手な人とのやりとりが難しい理由や対処方法とは何でしょうか。

保育士の声をあげてみます。

保護者に伝えたいことがうまく伝わらなくてモヤモヤする」「悪気がないのに誤解されてしまう」「忙しい保護者が多く、時間をとって話を聞いてもらえない」

この3つの共通点は、自分の中で“保護者は◯◯な人だ”と決めつけていること。

多くの場合、それは誤解です。保育士自身が、「〇〇ちゃんのママ、◯○な人だ」と諦めてしまっているのです。

確かに、苦手な人、ウマの合わない相手は世の中見ればいくらでもいます。お恥ずかしながら私も苦手なタイプはいます。しかし子どもの成長を促すためには、園生活を保護者にも楽しんでもらうことが重要です。

保育園は、色いろな価値観があって色いろな子ども・大人が存在する良い場所です。

苦手な人=どのような性格や雰囲気の人?

この記事を読んでいるあなたは、どのような発言や振る舞いが苦手ですか?

多くの人は、曖昧な様子をみて何となく“苦手”と定義しています。

例えば、早口にまくしあげる様子が苦手であるのか、話の途中で会話を終えてしまう様子が嫌なのか、子どもの様子を報告すると怒ってしまうのが嫌なのか、自分の心の動きを振り返ってみてください。

実は、相手の保護者が嫌なのではなく、自分が過去関わってきた人からの影響で、偏見を持ってしまったのかもしれません。早口になる・会話が途中で終わることも、こちら側の説明が下手なのかもしれないし、どうしても急いで帰宅する必要があったなど、保護者の事情もあったのかもしれません。

人間の言動の一部を見て、その人間の全てであると考えてしまうのはもったいないことです。

理解して欲しい、ではなく一緒に考える

保護者と保育士が良い関係を築けない理由の1つに、“相手を理解させよう”という傲慢さが隠れていることがあります。

確かに、場合によっては保育園で過ごす時間の方が長い子どももいます。しかし、だからと言って保育士が保護者よりエライとか、知識が多分にあるからエライということにはなりません。知識や経験はあって当たり前。保護者から子どもの家庭での良さを教えてもらうスタンスが大切です。

保護者によっては、時に仕事や家庭の事情で子どもに気持ちが向かないこともあるでしょう。子どもに気持ちを向けて仕事と両立させるコツをまだ見いだせていない場合もあるかもしれません。

同じ仕事を全うする仲間として接すること、子育てのあり方を模索する相手として関係を作ることは難しいでしょうか? 時に、それは親子のようでもあり、友人のようでもあるかもしれません。たまにはお茶をつい飲みたくなるような雰囲気があるかもしれません。あなた自身の心のクセに気づくことから始めましょう。

オススメ対処行動

苦手な保護者ほど、笑顔で少しだけ時間を長く挨拶する。

「すみません、〇〇ちゃんママ、お忙しそうに見えたので、お声がけするのをためらっていました。」と詫びてしまい、素直な自分で接する。

オススメ心の持ち方

お互いよくがんばっているよね、という仲間意識や友だちのような意識を持つ。

年齢に関わらず、相手の考えを聞いてみる好奇心を持つ。

ゆっくりとお互いを知る時間がないため、誤解に繋がることが多いことも事実。お子様のエピソードなどを添えた手紙で保護者の心をグッと掴むこともオススメです。あなたの考えや対応は間違っていません。方法がミスマッチなだけなのです。

3.自分自身の生活について


精神的な疲れは、頭が痛い・お腹が痛い・熱が出るなど、身体的な疲れとは異なり、その程度や重症度がわかりにくいものです。

身体的な疲れは、どちらかと言えばわかりやすいでしょう。横になりたい気持ちもそれに入ります。精神的な疲れは、楽しい出来事の後にも蓄積することがあるためわかりにくいのです。

例えば、行事ごとや専門機関との連携など、通常業務に加えた仕事で初めて会う人が多い時に起こるなど、出来事と精神的な疲れの程度を整理するポイントがあることに気づかない人がほとんどです。日々の仕事に夢中で、子どものためにと一生懸命頑張る人であればあるほど、忙しい感覚よりも充実感や子どものためにと貢献する気持ちが大きくなりすぎて、自分の変化をおざなりにすることが起きてしまいます。

一見すれば、職務を全うして努力し、保育士として素晴らしい人ですが、1人の人間としての充実、プライベートの充実が難しい人も中にはいます。

事実、休みの日に保育に関する研修に参加したり、絵本や音楽、工作の準備など、仕事に関係する時間を過ごしたりと切り替えが難しい人も多いでしょう。家庭がある人は、子育てや家族との時間も保つため、特に「どこで気を抜いてどこで仕事をするのか」常に焦ったり追い立てられたりする気分が生まれやすいとも捉えることができます。

オススメ対処行動

保育士として子ども達と接している時間の集中度合いを退勤後や休みの日には、使わない。

いつもと違う道のりで帰宅する。(道草もオススメ)

オススメ心の持ち方

焦ったり急いだりしても世の中の時間の進み方は変わらないことを認識する。

砂時計やタイマーを見ながらゆっくり呼吸をする。

まとめ


生きていれば長い人生のうち山あり谷あり。保育士人生も山もあれば谷もあるでしょう。

なぜどうして? とあれこれぐるぐる考え込むより、一息ついてお休みをとり、考え方のクセを知ることで心豊かに子ども達と接することができるかもしれません。今日から自分と相談し、クセを見つけるということをクセにしてみてくださいね。

参考文献

「ぐるぐる考えてしまう心のクセのなおし方」
清水永司 (2018)


ライタープロフィール:太田千瑞
  • 保育者養成校教員 Yoga.ed トレーナー

    ホームページ: 太田千瑞公式サイト

    東京都公立・私立学校スクールカウンセラー、臨床心理士、ヨガ講師、筑波大学心理・発達教育相談室非常勤相談員。

    初の著書「イラスト版子どもの発達サポートヨガ」が発売中。

    Yoga Laboratory ~ 先生達のセルフケア研究会 ~ のアドバイザー

    ホームページ: yoga-labo.tokyo/

    イラスト:Yukari Sato Instagram