混沌とした世の中を安全に暮らせる子どもの心と体作り
新型コロナウィルス。前代未聞のウィルスとの戦い。歴史を振り返れば、ペスト・スペイン風邪・SRASなどがあります。ここまで世界中が恐怖の中にいるのは、やはり大きく時代が変わる時だと実感せざるを得えません。
緊急事態宣言により、多くの自治体で休校・休園となり、保育園のあり方が問われるようになりました。
仕事を休み、子どもと接する時間が増えたことで気づきを得た保護者も多かったのかもしれません。
そのような状況で、子ども達は、どのような気持で過ごしてきたのでしょう。
緊急事態宣言が解除となり、日常が戻って来るような気配があります。
しかし、以前のように大人数で自由に遊ばせることができるのでしょうか? 自粛が開けた今、保育士として、何が求められるのでしょう。
ソーシャルディスタンスとは
厚生労働省や東京都のサイトを参照すると「新しい生活様式」といった提案があります。
それは政府専門会議によるもので、ウィルスへの感染を防ぐために咳やくしゃみの飛沫感染から身を守ることが重要だとされています。
厚生労働省は、人と人の間の距離を2メートルとるよう推奨しています。
24時間、子ども同士がそのような環境におかれるというのは何とも言葉にできないつらさがありますが、園生活においては、人との程よい距離を学ぶソーシャルスキルの観点で、遊びとして伝えて行くのは良いと思います。
「〇ちゃん! 〇ちゃんとは離れて!」と闇雲に怒鳴ってしまうのではなく、分かりやすい例えで子ども達が認識できるような環境を用意する事が重要です。友達と同じ空間にいて、話せない・遊べないでは、つまらないと思うのは大人も同じです。
人との距離感を学ばせる絶好のチャンス
今ほど人が人と接することの大切さを知れるチャンスはありません。。
長い間、家族以外と遊んでいなかった子ども達は、久しぶりの再会となると抱き合ったりマシンガントークしたり、感情が高ぶりすぎて蹴ったり殴ったりのトラブルになるかもしれません。せっかくですから、“人との程よい距離感を学ぶ機会”にするのはどうでしょうか?。
■2メートル糸電話を楽しもう ~やり方~。
用意するもの:事前に用意した紙コップと紐(イラスト参照のこと) 。
必要な時間:15分~20分程度。(着席の課題に注意集中できる時間は発達段階によって異なります)
対象年齢:3歳以上(発達段階によってクイズの難易度をあげてください)。
1. 保育士が紙コップと2メートルの糸を用意する。(年長クラスは作成から活動に取り入れても良いでしょう)
「ここに糸がついた紙コップがあります。何と!これはみんなの電話になりますよ」
2. 保育士2名で見本を示す。
「●先生?~、こんにちは、聞こえますか?」「は~い!●先生の声が聞こえますよ!」
3. 糸電話で「やさしく、ゆっくり」話すとお友達とおしゃべりできることを説明する。
「この糸電話は優しい言葉で、ゆっくり話すと聞こえやすいです。やってみましょう。」
4. 「みんなで秘密の電話でお話してみよう」と動機づけを高める。
「この糸電話で話したお話は、他のみんなには聞こえません。秘密のお話、しても良いですね」
5. グループやペアになって取り組ませる。
「今日は?ちゃんと2人でやってみましょう」「グループで順番にやります。ほかのお友達がやっているのをみてみましょうね」
6. 自分の位置に居続けられない子どもや年齢が低い、発達段階によっては、先生と子どもがペアになって対応する。
7. 人との距離を保てないタイプの子どもが多い場合には、どこに立って糸電話を行うか、目印となる、円形の印や、椅子を用意しましょう。
「君だけのマスク」作りでマスク大好きっ子に
マスクに親近感を持たせる遊びをご紹介します。
■マスクを作ろう ~やり方~
用意するもの:布製のマスクか、キッチンペーパーで作られたマスク、布にかけるペンやクレヨン、粘着力のあるシールなど
必要な時間:15分~20分程度
対象年齢:3歳以上(2歳~はシール貼りでの参加等、発達段階に合わせて判断する)
1. 準備された材料の中から子ども達が好きなものを選択する。
「順番に、先生のところにあるものを見に来て、使いたいものを選びましょう」
2. 完成品と何も書かれていないマスクを全体に示し、「みんなで好きなマスクを作ろう!」と今日のテーマを伝える。
「今日は、皆さんが自由にお絵描きをします。今日はマスクにお絵描きをしてもらいます!」
3. それぞれのペースでマスクに絵を描いていく。
「絵を描きたくないな?とか、ちょっとまだやりたくない人は、先生の作った絵をみてください」
4. 絵を描くことを嫌がる場合や苦手とする場合には好きなシールを貼る、もしくは保育士が事前に用意していたものに色を塗る、シールを貼るなど、作業を簡略化する。
「ここにシールがあります。シールを貼ったり、色を塗ったりしてもいいですね!」
5. 年長であればみんなの前で披露して発表することも良いでしょう。絵は何か、など描いた絵について説明する場面を設けても良い。
「〇ちゃんは、何と□について書いたそうです!! すごく上手ですね! 寝ている表情なのかな?」
6. マスクの効果について絵を用いて説明する。
「ばい菌が入らないように守ってくれるのが、マスクです」
7. 自分が作ったマスクを大切にすることを説明する。
「マスクを取ってうがいしたり、ご飯を食べたりします。その時にマスクをどこに置いたか、マスクを大切に置くことをしてみましょう」
8. おうちの人にも見てもらうことをオススメする
「みんなのマスクはとってもカッコ良いので、おうちの人に見せてみましょうね!」
マスククイズで先生が見本になろう!
(前提:マスクをつける見本は先生です。まず、保育士の先生方で改めてマスクの正しいつけ方を確認します。食事の前後ではどのように扱うか、園全体でルールを確認します。)
先生がつけているマスクがかっこいい!面白い!となるような関わりの1つとして遊びを紹介します。
用意するもの:事前に用意したマスク(イラスト参照のこと)
必要な時間:15分~20分程度 (着席の課題に注意集中できる時間は発達段階によって異なります)
対象年齢:3歳以上(発達段階によってクイズの難易度をあげてください)
1. 先生がつけたマスクの絵柄の色を当てる。
「先生がつけているマスクを見ましょう、これは何の絵かな?」
2. 先生がつけたマスクの丸の大きさを当てる。
「●先生のマスクのまると●先生のマスクのまる、どっちが大きいでしょうか?」
3. 先生がつけたマスクの口はどの動物か当てっこする
「先生のマスクには、動物の口が書いてあります。犬かな?ねこかな?鳥かな?」
先生の指示に着目すること、マスクそのものが身近になることが目的なので、クイズの正解不正解にはあまりこだわらなくて良いでしょう。楽しく注目できたことやマスクを用いた遊びの延長になることが目的です。
「新しい生活様式」における熱中症予防行動に関しては、厚生労働省から注意喚起も出されています。
マスクの必要性を伝えることと同時に、時期によって柔軟な対応をお願いします。
最後に
これから子どもをどのように保育・教育していくのか、多様な視点が更に求められると思われます。
固定概念、これまでの常識をなくし、自分はどう子ども達とともに生きるか、保育士の専門性は何か、という事が問われる時代がやってきたのではないでしょうか。
新しい時代を歩むときの助けに本記事がなれば幸いです。
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ホームページ: 太田千瑞公式サイト
東京都公立・私立学校スクールカウンセラー、臨床心理士、ヨガ講師、筑波大学心理・発達教育相談室非常勤相談員。
初の著書「イラスト版子どもの発達サポートヨガ」が発売中。
Yoga Laboratory ~ 先生達のセルフケア研究会 ~ のアドバイザー
ホームページ: yoga-labo.tokyo/
イラスト:Yukari Sato Instagram