「潜在保育士」が復帰しない理由とは
女性の社会進出が進み共働き家庭が増え、保育園の需要がますます高まる中、保育の現場で活躍する保育士は慢性的に不足しています。
長引く不況で就活が難しい中、2015年の保育士の有効求人倍率は全国平均2.18と高く、都市部を中心に保育士不足が深刻化している状況です。
こうした保育士不足の解消のために、いわゆる「潜在保育士」の職場復帰が求められています。
潜在保育士が増えている理由
いま日本には累計で150万人もの保育士資格を持つ人材がいますが、2015年11月のデーターでは全体の半分近く、約68万人は保育の現場から遠ざかっている「潜在保育士」だということがわかっています。
保育士資格を取得するには、保育士を養成する大学や短大、専門学校などで長期間学び、厳しい実習や試験を受ける必要があります。
決して容易に取得できる資格というわけではありません。
そうした努力の末に資格を取得し一度は保育園などで活躍した保育士が、退職して保育の現場を離れる理由には、次のようなものが挙げられます。
・結婚のため
・出産のため
・仕事量と給料が釣り合わないため
・拘束時間がながく、プライベートな時間を持てないため
・児童の保護者との人間関係が負担になるため
・職場の人間関係が悪いため
潜在保育士を現場に呼び戻すには
保育士資格を持つ人材は女性が極端に多く、女性特有の妊娠・出産のために離職をすることはやむをえないことかもしれません。
しかし、子どもが成長して生活が落ち着いた段階で、再び資格を生かして保育士としての仕事に戻ることは十分可能で、生涯にわたって活躍できる仕事が得られることが、保育士資格取得の魅力でもあったはずです。
潜在保育士を対象に行ったアンケート調査の結果では、約9割の回答者が「保育の仕事にやりがいを感じている」として、保育の仕事は価値のある仕事だと考えていることがわかります。
それなのに、実際には保育の現場に復職しない・できないという人が多いのは、やはり給与や待遇、職場環境などの悪さがネックとなっているのは言うまでもありません。
特に給与面は不利な点が多く、保育士の仕事をしていては生活ができないために、泣く泣く派遣やアルバイトなどの不安定な身分を選ばざるを得ないといったケースも多く報告されています。
今後は給料や職場待遇などの改善を政府の主導で強力に進めていくとともに、人間関係の刷新を含めた環境改善をして、潜在保育士を保育の現場に呼び戻すのが課題であると言えるでしょう。