2022.01.17
保育園訪問【雑誌掲載版】

障害児保育園ヘレン中村橋──チーム保育でその子にとって最適な保育・療育を

チーム保育でその子にとって最適な保育・療育を──障害児保育園ヘレン中村橋

障害児保育園ヘレンさんについて教えてください。

園長:西澤秀明さん

障害児保育園ヘレンは、「医療的ケアが必要な我が子を預かってくれる園が近辺にないので一緒に探して欲しい」というある親御さんからの1通のメッセージがきっかけとなり、2014年に荻窪で開園しました。医療的ケア児や障害児を専門に長時間お預かりする日本初の保育園となりました。
現在日本には医療的ケア児が2万人ほどいます。新生児医療の発達を背景に15年で約2倍に増加しましたが、在宅生活に移行してからの支援はまだまだ不十分です。特に医療的ケアが必要な子、重度障害のある子を長時間預かることのできる施設が少なく、仕事を諦めざるを得なくなる親御さんが非常に多いんです。24時間のケアが必要な子もいますから、ご家族に対するサポートも必要です。
ヘレンは長時間保育をすることができ、かつ研修をしっかり受けた職員がチームを組んで対応できる施設になっています。ただお預かりするだけではなく、その子の発達を考えて、遊びを出発点にし、楽しみながら意欲や成長を引き出していくような保育をしています。

園内の特徴や工夫を教えてください。

左:経管栄養のためのレールとフック|右:座位保持椅子

水道の蛇口はひねるタイプとレバータイプを設置しており、蛇口の先はシャワータイプで伸ばせるようになっています。車いすに座っていたり、蛇口をひねるのが難しい子でも使えるように、設計の時点から考えられています。
座位が保てない子には、座位保持椅子を用意しています。これは作業療法士のアドバイスを受け、個々に合った調整をしています。
また、食事を口から摂取できないお子さんは、経管栄養といって、鼻や口から胃や腸までチューブを入れて栄養を摂取します。そのパックは点滴のように上から吊るして使用するので、そのためのレールを天井の各所に設置してあり、どこにいても食事がとれるようになっています。

どのような遊びや活動をしているのですか?

障害児保育園ヘレン中村橋

室内で遊んだり、お散歩にも行きます。歩ける子は自分で歩き、自力での移動が難しいお子さんはバギーに乗って、必ず看護師が付きます。中には体調を崩しやすい子や免疫が弱い子もいるので、その日の体調を見ながら相談して決めています。
中村橋園では、毎年2月に味噌づくりを行います。できあがった味噌は、お味噌汁にしました。茹でた大豆をビニール袋に入れて上からつぶします。すべての子が全工程に参加できるわけではありませんが、匂いや感触など、何かしら刺激を受け、楽しめるよう工夫しています。
また、五感を刺激する遊びは、ヘレンの特徴的な活動で、先日は蛍光絵の具で色を付けた水をビニール傘袋に入れて口を結び、布団圧縮袋に入れて即席ウォーターベッドを作りました。暗闇の中の光とふわふわとした感覚。リラックスできる空間のできあがりです!

特別なおもちゃがあるのでしょうか?

市販されている療育用のおもちゃもありますが、価格が高いのと、個々に合わせたものではないので、職員が手作りすることが多いです。障害児が押しやすいスイッチの製作などおもちゃの改良をしてくださるおもちゃ病院があるんです。そこに職員が赴き、おもちゃの仕組みなどを勉強して、この子はこういう動きができるからこういうスイッチを使おうなど考え、個々に合ったおもちゃを作っています。
たとえば、重症心身障害児の子は、寝たきりで、手足もなかなか上手に動かすことが難しいです。そこで、スイッチに少し触れるだけで動いたり光ったりするロボットや、軽いウレタンの棒で、少し動かしたら「おはようございます」「いただきます」などの声が出て挨拶ができるコミュニケーションツールを作りました。
大きな動きが苦手なお子さんは表出がとても小さいんです。目線やごく小さな反応を丁寧に拾い上げて、「自分の行動が何かを引き起こした」ということ気づかせてあげられるようなおもちゃをたくさん作っています。その気づきが楽しさに変わり、「もっとやってみたい」といった意欲や主体性に繋がっていくと考えています。

保育をする上で気を付けていることはありますか?

光るスライムやブラックライトで幻想的な光あそび

その子にとって最適な保育、療育ができるようにすることです。そのために、ヘレンには保育士、看護師、そして作業療法士、理学療法士と連携をとってチームで保育を行なっています。チーム保育をすることで、専門的なアドバイスも踏まえて子どもの成長を促すことができますし、職員も一人で問題を抱え込んだり悩んだりすることを回避できます。
また、保育スタッフの職務経歴は、通常の保育園にいた方、介護業界にいた方、特別支援学校にいた方など様ざまです。それぞれの経験や知識を活かし、その子にとって今、何が最適なのかを常に考え、関わるようにしています。

特別な研修があるのでしょうか?

入社して最初の1週間は、神保町オフィスで座学研修を行います。必修の研修を受けたり、フローレンスについて知っていただきます。その後2~3か月くらいはOJT です。研修は一人ひとりに合わせて実施しているので、不安なところだけ繰り返し研修を行うこともできます。
また、保育士は子どもとの関わり方や発達などについて、看護師は医療的ケアについて、お互いに教え合っています。専門外のことを知ることで、よりスムーズにチーム保育ができるようになります。

今後の展望を教えてください。

ヘレンでの生活でたくさんの経験を重ねて、子ども達一人ひとりの「好き」や「楽しい」が見つかる時間を作っていきたいと思っています。中村橋スタッフみんなで、子ども達の小さな自己表現を受け取り、大きな可能性に繋げていきたいです。
フローレンスとしては、医療的ケア児を預かる認可保育園も増えてきているので、私達が培ってきたノウハウを提供するといったサポートを積極的にやっていきたいと考えています。

障害児保育園ヘレン中村橋園といったら?

「チーム保育」です。それぞれの職種や立場に責任を持ち、子どもにとっての最善を考える、素敵なチームです! 職種は違えど、スタッフみんな子どもが大好きなんです! 保育室からはいつも楽しそうな笑い声が響いています!

障害児保育園ヘレン中村橋

障害児保育園ヘレン中村橋

住所

〒176-0021
東京都練馬区貫井一丁目9番1号 中村橋区民センター内

アクセス

西武池袋線 中村橋駅より徒歩5分

開園時間

月~金 8:00~18:30 ※居宅訪問型保育併用の場合

連絡先

TEL:03-6811-0907

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