シンガポール日本人幼稚園──シンガポールだからこその英語、日本人だからこその文化を子ども達に
シンガポール日本人幼稚園さんについて教えてください。
創園は1989年です。当時、日本人小学校と中学校はありましたが、幼稚園はなく、「幼稚園はないのか」という問い合わせが日本人会に多数寄せられました。そこで日本人会が幼稚園を設立できる人を探し、創園者が立ち上げたという経緯です。
創園時は全園児が約80名で、現在は約200名です。約500名を受け入れるキャパシティがあり、実際一番多い時は500名近くいました。
卒園後は、95~96%が日本人小学校へ、残り5%がローカルの小学校やインター校へ進学しています。
どういった教育を行なっていますか?
敷地が広く、1万平米以上あります。東京ドームの1/4ほどの広さです。これだけ充実した施設があるため、その施設を最大限活用して、できる限り子ども達がのびのびと生活できるようにしています。のびのびかつ集団生活の中で、達成感や感動、喜びを感じて大きくなってもらいたいという想いがあります。
普段は自由な時間が多いですが、鍵盤ハーモニカや製作の時間もあります。
その他、様ざまな行事を大切にしています。大きい行事は、こどもまつり、運動会、ステージ発表会と作品展です。この4つの行事を四大行事と呼び、非常に盛大に行います。ほかにも、日本と同じような誕生会などもあります。
敷地が広いので、普段の生活で園外に出ることはありませんが、年2回遠足に行きます。春は親子遠足で、シンガポールの観光名所に行きます。ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ、セントーサ島の水族館、リバーワンダーなどです。
秋の遠足は子ども達と先生達だけなので、学年に応じて異なる公園に行きます。そこで、凧揚げやシャボン玉などの遊びをして、お弁当を食べて幼稚園に帰ります。これらの行事をすることが、子ども達の成長に繋がると考えています。
もちろん、せっかくシンガポールに住んでいるので、英語に触れる活動もしています。
以前は、日本に帰国後すぐに学校に慣れるようにしたいという保護者が多く、日本人幼稚園ということもあり、日本語の保育が中心でした。しかし最近では、「英語で子どもに苦労をさせたくない」、「海外で生活する機会を活かして、英語の環境に子どもを通わせたい」という保護者が多くなりました。
そこで、日本語クラスのほかに、JIC(ジャパニーズインターナショナルクラス)という英語クラスを創設しました。日本語中心の環境か、英語中心の環境かを選択できます。現在、日本語クラスと英語クラスの子どもの人数は、ほぼ同数です。
JICは、担任がシンガポール人のため英語中心で生活をします。しかし、友達同士での日本語の会話は禁止していません。日本人の友達同士でも日本語を禁止にしている園もありますが、それでは日本語のスキルが低下してしまう恐れがあります。そのため、先生とは英語でコミュニケーションを取り、家族や友達とは日本語のやり取りを通して、日本語の力も向上してほしいと考えています。
先ほどの行事では、日本語クラスも英語クラスも一緒に行い、日本の伝統文化を体験することができます。
食に関してこだわっていることはありますか?
給食は非常にこだわっています。まず、給食は全て日本食のため、園内の厨房ですべて調理しています。キッチンのシェフは、シンガポールの日本食レストランで長年経験を積んできた者です。実は私も以前は飲食店で働いており、調理師の免許を持っています。シェフと私で相談して、バランスを考えて献立を作成しています。
食材では、特にお米にはこだわっています。北海道の業者と直接契約を結んで「ななつぼし」を送ってもらっています。シンガポールにいても、日本の美味しいお米を食べてほしいと思っています。
職員の採用はどのように行なっているのですか?
東京にオフィスがあり、各大学を回って求人活動をしています。さらに年に1度、8月下旬に次年度の教員採用試験を行い、採用活動をしています。3年契約で当園の職員として勤務するという内容です。
3年目以降は、本人の希望と当園の契約条件を確認し、双方が合意した際に契約を更新します。昨今の為替の状況もあるのか、継続を希望する職員が多いです。
働きやすい環境や保育の質の向上のために取り組んでいることを教えてください。
極力残業はせず、定時で退勤することができるという雰囲気を作っています。以前は残業することが普通で、夜遅くまで残って仕事をする職員が多くいました。そこで、水曜日は残業をしない、「すいすい水曜日デー」という日を作りました。そうすると、水曜日は残業をしないという習慣が定着し、次第に他の曜日でも定時に退勤する職員が増えました。今ではほとんどの職員が定時で退勤しています。
もちろん、簡略できることはどんどん簡略化し、勤務時間内で仕事を終わらせられるよう調整もしています。
研修ではありませんが、たとえばピアノの発表会を職員同士で行なっています。
また、保育の様子をビデオに撮ってお互いに確認することもあります。保育の内容は週案や月案に書かれていますが、実際にどのように指導しているかというのはなかなか見ることができません。そのため、ビデオに撮って職員で共有し、良い点や改善点を出し合い、保育の質の向上を図っています。
卒園した子ども達に将来どのようになってほしいですか?
一番は、心優しい大人になってもらいたいと願っています。意地悪な人になってほしくないですね。
今後の展望を教えてください。
ジニアスブロックという積み木のような玩具を使い、遊びながら数字の感覚や空間図形の感覚を養えるカリキュラムがあります。なかなか面白くて良いなと思っていたところ、偶然ご縁があってライセンスを譲渡していただきました。まずは課外授業でスタートしました。私が担当をしています。子ども達と楽しみながら活動しています。
(MiRAKUU vol.46掲載)
シンガポール日本人幼稚園
住所
251 West Coast Road Singapore
保育時間
月~金 9:00~15:00
預かり保育 月~金 15:00~17:00
連絡先
TEL:6779 3434
FAX:6777 1830