2023.04.17
保育園訪問【雑誌掲載版】

野菜を好きになる保育園べジ・キッズ──施設も、基本保育も、献立もすべて「野菜」が繋げる

野菜を好きになる保育園べジ・キッズ──施設も、基本保育も、献立もすべて「野菜」が繋げる

野菜を好きになる保育園ベジ・キッズさんについて教えてください。

運営管理者:カゴメ(株) 飛石 希さん

「野菜を好きになる保育園ベジ・キッズ」という名前の通り、乳幼児期から野菜の楽しさ、大切さ、おいしさを知り、野菜を好きになってほしいという想いを込めて、カゴメ株式会社が2019年4月に開設した企業主導型保育園です。

なぜこのような保育園を立ち上げたかというと、カゴメは‘日本の野菜不足をゼロにする’という目標を掲げているのですが、私が産育休を取ってみて感じたことは、「野菜の会社であるカゴメは、乳幼児を持つ世帯に対してアプローチが不足しているのではないか?」ということでした。
0~2歳は味覚形成の重要な時期ですし、保護者にとっては家族(特に赤ちゃん)のために食事を変えるターニングポイントです。この乳幼児を持つ世帯に対して野菜を好きになる活動や野菜を摂取するサポートをもっとしたいなと考えました。

子どもの野菜嫌いに悩んでいる親御さんはすごく多いですよね。しかし、野菜嫌いにしないためには、調理技術や、食や育児の知識や、向き合う時間が必要なのですが、働いている親御さんは日々に忙殺されてそれが持てません。それならば、野菜を好きになることを軸に置いた保育園を作り、乳幼児の頃から野菜と向き合う環境を作ってあげれば、親御さんの肩の荷が下りるのではないかと考えたのです。

運営はISO9001の取得や、保育の質を保つ研修などをしっかり行なっている、株式会社ポピンズエデュケア(以下ポピンズ)さんにお願いしています。ポピンズさんに、こちらのコンセプトを理解していただき、お互いにコミュニケーションを取りながら運営いただいています。

施設の特長やこだわりを教えてください。

子ども達が長時間いる場所ですから、まずは楽しく清潔に過ごせる環境にしています。加えて、アートセンスも養えるように、狭い空間でも色いろな発見ができるようなものを随所に散りばめ、遊び心を入れたり、野菜を連想できるようなカラーを取り入れていて、明るい空間にしています。

例えば入り口はアーチ型でトンネルにしてあります。お父さんお母さんと分かれて1日過ごすお部屋に入るとき、テーマパークに入っていくようなワクワク感を演出することで気持ちを切り替えられるよう考えました。
天井にはシャボン玉のようにもパイナップルのようにも見えるけれど、小さなまだ成熟していない緑色のトマトの集合体をモチーフにした絵が描かれています。トマトは赤く熟す前は緑の実をつけます。これからたくさんの心と体の栄養を吸収して熟していく子ども達とトマトの生長を重ねて表したものでもあります。また、緑色は安らぎを感じる色でもあるので、この空間で安心して過ごしてもらう意図もあります。

オープンキッチンが目立ちますね。

保育室が1段上がっていて、キッチンが2段下がっているので、子どもと栄養士との目線が合うようになっています。
子どもから調理する栄養士の手元が見えるようになっており、たとえ他の遊びをしながらでも、無意識的にどういう手順で何をしているのかが見えている状態を作り出しています。

0~2歳は模倣の天才で、見えたものを全部真似しますよね。
あるお母さんに「おままごとで包丁を使った後に必ずする仕草があるんですが、何でしょうね?」と言われたんですが、それは包丁を洗う仕草だったんです。
そういう工程を子ども達は無意識に覚えているんですね。見えているというのはすごく大事だなと改めて気付きました。

また、外遊びから帰ってきた後や食前食後は、キッチンの向かいにある手洗い場で手を洗うので「どこに行ってきたの?」「いい匂いするね! 今日は何?」「美味しかったよ、ありがとう!」というような栄養士との会話も自然と起こります。
作り手と食べる側の距離がすごく近いですね。

自慢のオープンキッチン♪ 今日はどんな給食かな?

野菜を中心とした保育はどのように行なっていますか?

必ず朝、昼食に出る野菜に触れて、五感で野菜とじっくり向き合う時間を作っています。野菜を潰してもいいし、さやから豆を出したり、皮をむいたり、洗ったりしてもいい。子ども達がそのモノに対して自然に対峙し、五感を使って触れるということを毎日やっています。
もちろん、トマトなどの野菜を育てることもしています。

キッチンと保育室を隔てる窓は全開できるので、子ども達が洗った野菜をそのままキッチンの栄養士に渡すことができます。
毎日触った野菜、お手伝いした野菜が昼食に出てきて自分達がやったことの繋がりがわかるので、記憶に残ることが多いのではないかなと思います。

野菜を使った保育には、食育だけではなく基本保育の中にも成り代わるものがいっぱいあると考えています。
野菜に毎日触れるだけでも知力、思考力が養われます。なぜかというと、野菜は一つひとつ大きさも形も色も違いますし、野菜の皮をむくにも創意工夫をしないとむくことができないので、子どもは一生懸命考えるからです。
通常は紐通しなどで養う指先の巧緻性(こうちせい)も、豆など小さいものや柔らかいものをつまむことで発達します。野菜を使った保育は、思考力、論理思考、数学的関心、動作というところにも結びつけることができるのです。

このように、施設とカリキュラムと献立が全部相互で連動して一体的になるような保育にしています。

調理師さんが重要なポジションになりますね。

一般の保育園では管理栄養士と調理員という構成だと思いますが、ここは管理栄養士1名、栄養士1名がおり栄養士が調理もしています。
べジ・キッズ保育園で提供している献立は、ポピンズさんとカゴメの管理栄養士と一緒に決めています。ここでは1日で必要な野菜量の半分以上は昼食に提供すると決めていて、ポピンズさんの献立をべジ・キッズ保育園用にアレンジをしています。

月1回の献立ミーティングに私も参加し、献立、人気メニューの分析をして保育士とも共有しています。これを保護者様にお伝えして、お子様の食の進みといった部分のコミュニケーションに活かしています。
また、現場での子ども達とのコミュニケ―ションもスムーズになり、好循環が生まれていると思います。

野菜を好きになる保育園ベジ・キッズといったら?

野菜を好きになる保育園です。
野菜を使った保育を通して、子ども達の心と体と知力を育む保育を行なっています。毎日野菜に触れる活動や、野菜を使った制作遊び、野菜の栽培、野菜たっぷりな献立、おやつに茹で野菜を毎日食すことで、野菜が身近になり、野菜に対して親しみを抱いています。

「野菜が嫌い」と保護者様からご申告いただいた園児さんも、ベジ・キッズ保育園で野菜に触れる活動を通して、入園後4か月頃には野菜の喫食率が上がっています。
もちろん、野菜の味が嫌いな園児さんもいます。けれど、「野菜そのもの」に対しては親しみや愛着があるので、いつか大人になって味覚が変わった時には、野菜の味が嫌ではなくなるかもしれません。

野菜が嫌いになる前に野菜が好きになるチャンスが来ている。そんな保育園です。

(MiRAKUU vol.42掲載)

野菜を好きになる保育園べジ・キッズ

野菜を好きになる保育園べジ・キッズ

住所

〒103-0007
東京都中央区日本橋浜町2-1-1 田辺浜町ビル1階

アクセス

東京メトロ日比谷線、都営浅草線 人形町駅より徒歩8分
東京メトロ半蔵門線 水天宮前駅より徒歩6分
都営地下鉄新宿線 浜町駅より徒歩6分

開園時間

月~金 7:30~18:30
延長保育 18:30~20:00

連絡先

TEL:03-3527-2672

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