2024.07.15
保育園訪問【雑誌掲載版】

守山幼稚園──子ども達の溢れ出る「やりたい」が園の行事になる

守山幼稚園──子ども達の溢れ出る「やりたい」が園の行事になる

守山幼稚園さんについて教えてください。

守山幼稚園 園長:児玉 匡信さん

ここはお寺ですが、戦後の焼け野原だった頃、近所の方々に「子どもの預け先に困っているのでぜひ預かってほしい」と頼まれた事をきっかけに保育所を作り、宗教法人守山保育園を経て学校法人守山幼稚園になりました。現在は幼稚園の在園児が200名前後、小規模保育も併設していてそちらに12名います。
「明るく、正しく、仲良く」という浄土宗保育に則った教育理念をベースに、子ども達がやりたいことをやりたい時にやりたいようにできる保育を目指しています。1日が終わった時に「今日も楽しかった!」と子ども達に言ってもらえることが目標です。

お寺ならではの教育はありますか?

今日はこどもの日のイベントだったので、本堂に行ってお寺のお説法をしました。こういったことは月に1回程度行なっています。
今の世の中では目に見えるものだけを信じがちですが、こういった経験をすることで仏様や神様など目に見えないものに対する気持ち、いわゆる畏敬の念とか、お天道様が見ているという感覚が身につくと思っています。子ども達にとってはそれが行動規範になりますし、お寺ならではの教育だと思います。

カリキュラムはどんなものがありますか?

固定のカリキュラムがないのが当園の特長です。行事は一切決まっていません。大人が決めた行事を子どもに押し付けることを良しとしていないからです。
私達は子どもが主体の保育をしているので、子どもに聞かないと予定表には書けません。なので、年間予定表はスカスカです。ですが、行事が全くないわけではありません。子ども達と先生が話し合って、何をやりたいか、いつならできるか、どういう準備が必要かなど、企画から全て自分達で決めて実行しています。
例えばですが、子ども達が歌詞を作って、先生が曲を当ててクラス歌を作ったことがありました。そうしてできたクラス歌を基に、今度はみんなで絵本を作りました。お話が3つ出来上がって、今度はこのお話を劇にしようということになり、最後には発表会を開催しました。これらは全て子ども達が自ら企画したもので、見ていてとても感動しました。

子ども主体の保育における先生達の教育はどうしていますか?

子ども主体の保育に取り組み始めて10年ほど経ちますが、最初の頃はまだ運動会などの行事もあって、園が決めた行事はさせなくてはいけない、でも子どもの主体は担保しなくてはいけないという状態で、ものすごい矛盾の中で保育をしていました。先生達はさぞ働きづらかったと思います。
そこに気付いて以来、行事を減らそうとか、予定表からなくそうとか、もっと子どもと向き合える時間を増やそうといった取り組みをしてきました。そして、1人ひとりの先生の裁量を増やしました。僕に聞かなくても言っていい、やっていいということです。僕に聞くと意見を出してしまうので、先生達が何も言わなくなってしまいます。僕の顔色を伺ってアイデアを出して、既に忖度された提案書があがってくるようでは良い保育ができるはずもない。
子ども達はやりたいことで毎日が溢れています。自分が幼稚園の先生になりたいと思った頃のことを思い出してくれれば、本当にやりたいことってきっといくらでも出てくるはずです。でもそれがいつの間にか「やっていいのかな」と萎縮してしまうことがよくあります。子ども達に主体があるのなら、先生にも主体があって当然です。先生を教育するというよりも、判断を任せ、僕は何も言わない、できるだけ職員室にいないようにただ遠くから見守る。そうして先生達の主体性を尊重することを大切にしています。

食のこだわりを教えてください。

今年、新しくランチルームを作りました。今まで教室内で給食や持参したお弁当を食べていましたが、子ども達が食べたい時にランチルームに行き、食べたい量を食べたい人と食べられるような仕組みを始めました。
後は質の部分ですね。体に入れるものなので、有機野菜や無添加など体に良いものを積極的に取り入れていきたいと思っており、今後はそういったところもこだわっていきたいです。

この地域ならではの良さはありますか?

ここは名古屋市のベッドタウンみたいな場所でこれといった特徴がなく、裏を返せばすごく日本人的な場所だと思います。
ただ、地域を掘っていくと、画家の方だったりトライアスロン日本代表の方だったり、素敵な方々がたくさんいる地域です。そこが守山区の良いところですね。そういった方々に幼稚園に来ていただいて、子ども達に話をしてもらっています。
先日は幼稚園の近所にアイシングクッキーの専門店を開いた姉妹の方のお店に園児を連れていき、小さい頃の話をしていただきました。この姉妹は小さい頃からずっとおままごとをやっていたそうで、結果大人になってお菓子屋さんになったという話を聞かせてくれました。この話を聞いた子ども達は、今自分が好きなこと、やっていることが自分の未来に繋がるんだなとワクワクしたと思います。
その地域に特別なものがなくても、色いろなプロフェッショナルの人がいますので、そういう方々と知り合うということが僕は大事だと思います。

ここで育った子ども達に将来どうなってほしいですか?

自分らしく生活してくれたらそれでいいと思います。私達先生もお父さんお母さんも、子どもが元気で笑顔で生活してくれたら幸せですと卒園式でも毎回言っています。
あとは、一日の終わりに、今日も楽しかったと言える相手、信頼の置ける人が横にいてくれたらいいなと思います。

今後の展望を教えてください。

園内部では、使われていない時間が長い職員室を図書室(兼職員室)にしたいと思い、設計を進めているところです。
法人でいうと、今、小中学生向けのフリースクールを併設してやっていて、今度は児童発達支援施設を開所する予定です。
もっと地域に開かれた園になるといいなと思っています。たとえば、もっと良い食を提供できるようになって、地域の人にも提供できるようになるとか、子どもと地域の方々の憩いの場、交流の場になったらいいなとか、小児科クリニックを併設したり、産後ケア事業などもしていきたいです。色いろな人がここで子どもを産み育てられる環境を作ることが今後の展望です。

(MiRAKUU vol.47掲載)

守山幼稚園

守山幼稚園:MiRAKUU編集後記

住所

〒463-0016
名古屋市守山区大屋敷13-73

アクセス

名鉄瀬戸線 瓢箪山駅より徒歩11分
名鉄瀬戸線 小幡駅より徒歩19分

開園時間

月~土 8:00~19:00

連絡先

TEL:052-791-4561