WITHホールディングス──子どもファーストと共に職員ファースト掲げ、地域で一番の保育園を目指す

WITHグループについて教えてください。

2002年に北浦和で小さい保育室を開設したのが始まりです。それから京浜東北線沿線を中心に園を増やしていき、現在はグループ全体で95施設を運営しています。
以前は待機児童が多く、園を作ればすぐに満員になるという時代でした。その時に何を大事にしていたかというと、採用です。ただ保育園を作るだけでなく職員配置を整え、人員を充足させることで、経営的にも保育的にも安定するよう採用と開園のバランスがとても重要と考えていました。
現在は待機児童問題が解消されたことにより、逆に定員割れ問題が出てきました。なので他の保育園さんとの差別化として英語や体育といった学びをはじめ、非認知能力の向上など、子ども達の将来にとってプラスになるものをそれぞれの園の特性に合わせて取り入れています。
一人ひとりに向き合う保育は以前から行なっていますが、ここ数年はさらに非認知能力という部分をより一層体系的にやっていくということで保育の質の向上に繋げています。


非認知能力を高めるためにどのようなことを行なっていますか?
具体的な例を挙げますと、1人で遊べるおもちゃをまとめたプレイフルキットというものを何種類も用意して、自分の好きな遊びにうちこめるプレイフルタイムを設けています。だいたい30分~1時間かけて一人ひとりが遊び、その時間の中で集中力を高め、達成感を感じられるものとなっています。もちろんもっとやりたい子は続けて遊ぶことができますし、やりたくない子はやらないという選択もできます。
また、別の例でいうと、けんかをした際も先生が仲裁に入って仲直りさせるのではなく、こども会議を開きみんなで納得できるよう話し合いをしています。5歳児ともなると生活発表会や夏祭りなどの催しについても子ども達が決めます。劇をするなら、誰が主役をやるのかはもちろん、劇に出たくない子は何をするのかまで子ども達で決めるのです。
実際のところ非認知能力や主体性を伸ばすような保育は、1対多数の現場では難しい場合も多いです。しかし、それを常に頭に置いているのと置いていないのでは、保育時の行動や声掛けが全然違ってきます。非認知能力の向上を掲げてから、目に見える部分・見えない部分共に変化してきていると感じます。


食育にも力を入れているそうですね。
給食では、産地や食材の安全にこだわり、イトーヨーカドーさんと業務提携して「生産農家の顔が見える野菜。」を使用したり、安心安全、栄養を考えた、おいしさがコンセプトのプライベートブランドとして、お米や麦茶、ひじき、出汁など、子ども達に食べてもらいたい食材のオリジナル商品を作っています。
さらに、千葉の農園と契約をし、そこで生産した野菜を保育園の給食に使用したり、保護者にも提供しています。
また、子ども達が農業のプロセスを学ぶ機会を得られるように、田植えや稲刈り、収穫体験などのイベントを実施し、ただ植えて終わりではなく、稲刈りまでの成長過程を農家の方とオンラインで繋ぎ、子ども達が観察できるように工夫しています。
子ども達が植えた作物を農家の方が大切に育て、その成長を見守り、収穫し、調理して食べる。 その一連の流れを体験することで、子ども達が食と農の繋がりを理解できるようになるまでを、「食育」と考えています。


保育士さん達が働きやすい環境を作るために取り組んでいることはありますか?
子どもファーストとは言うものの、いくら良い保育方針を掲げていても実際に保育を行うのは職員なので、職場環境や待遇面などを整え、職員ファーストでもあるようにしています。
まず、保育士は国が定める人数に加えて、60~80名定員の中規模園なら3~7名のフリー保育士を配置しています。フリーの保育士がいることで、仕事の配分や急な休み、シフト等にもフレキシブルに対応することができ、残業時間の削減や有給休暇取得率の向上に繋がっています。さらに、保育園では珍しく有給休暇を1時間単位で取得できる時間休の制度があります。たとえば1時間早く上がってお子さんの保護者会に行くとかライブに行くなど自分の時間を使うことが可能になります。特に、中途入社の方には喜ばれる制度です。
それから、毎年全職員約2,000名にアンケートを取っています。毎年新しい人が入って、新しい情報や考え方が入り、時代も少しずつ変わっていきますよね。それをアンケートから読み解いて、反映していくのです。
そういった中で、最近取り入れたのはメンター制度です。以前は誰でもいいから相談しましょうという形だったのですが、相談相手を自分で見つけられない、タイミングが難しいといった意見があり、昨年度から導入しました。
たとえば、メンターに自宅の冷房をいつから使うかを聞いてきた東北出身の新卒者がいたそうです。仕事に関しては指導係に聞くことができても、あまりにもちょっとしたことは指導係には聞きづらいものです。そういったことが積み重なり、疎外感を感じて落ち込んでいってしまう人もいます。WITHグループでは全国から人を採用しているので、メンターはできるだけ歳の近い同郷の人にして不安解消できるようにしました。
実のところこの制度を導入する時、業務が増えて困るといった園長先生達からの反対意見もありました。しかし蓋を開けてみると、メンターが人間関係などを把握し、園長に伝えることで園長先生の負担が軽減したそうで、次第に好意的な意見に変わりました。
実際に昨年度の新卒の離職率は大幅に減少しました。導入したてで整っていない部分もありますが、年々馴染んで良い制度になると期待をしています。


WITHグループの園で育った子ども達に将来どうなってほしいですか?
これからの時代、20年後30年後にどんな仕事があるのかわかりません。20年前には、YouTuberが1つの職業として確立しているなんて誰も考えていませんでしたよね。このようにきっと我々が考えていない業態がこれからも出てくるでしょう。そういった流れに対応できるような、自己解決力だったり創造・想像力だったり、そんな力を持った人になってほしいと思います。
今後の展望を教えてください。
新たに園を作るよりも一つひとつの保育園の質を高めていきたいと考えています。地域によって求められる保育に違いもあります。だからこそ、その地域性に合った保育を行い、常に第一希望で申し込みが入るような、その地域で一番の保育園を目指していきたいですね。


(MiRAKUU vol.50掲載)
WITHホールディングス

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