2019.01.15
保育園訪問【雑誌掲載版】

やまた幼稚園──子ども達が主体的に活動できる環境を提供する

子ども達が主体的に活動できる環境を提供する──やまた幼稚園

やまた幼稚園について教えてください。

園長:栗原弥生さん

やまた幼稚園は昭和44年に開園し、平成6年にこの場所へ引っ越してきました。20年くらい前、この辺りは子どもの数がとても多く、幼稚園に入れない子がいました。そこで先代の園長が幼稚園に入れない子を作らないという信念の基、土地を買い足し、園舎を拡張して現在の形になりました。広さ9千平米弱の園庭は、動物がいる区画、芝生の区画、畑や田んぼがある区画、マルチコートなどがあり、自然豊かなこの環境を気に入って見学に来てくださる方も多いです。
現在は20年後の子ども達にどのように活躍してもらいたいかということを考え、その一つとして英語教育を行なっています。当初は選択制でしたが、みんなが使うことで共通言語となり、自分の気持ちを伝え、気持ちを受け取るというコミュニケーションツールになると考え、必修化しました。「遊びは学び」という教育方針の基、遊びの中で学べるようなアプローチをしています。
また、自分で考えて行動する子になってほしいと思っています。それには土台作り、人間形成をしっかりしていかなければならないので、子ども達が主体的に活動していける場面を提供できるよう考え、保育活動を行なっています。

園庭で動物を飼われているのですね。

やまた幼稚園

ヤギ3頭、ウサギ、ガチョウやニワトリなどの鳥が数種、保育室では園庭で捕ってきた虫も飼っています。昔から飼っているので動物がいるのは当たり前ではあったのですが、世話は担当の職員がしていて子ども達はただ餌をやりに来ているだけだったのです。しかし、せっかく飼っているのだから、もっと子ども達の学びや成長に繋げたいと考え、まず職員が世話をするところから始め、子どもが世話をするというところに繋げていきました。今では「お水が足りないんじゃない?」「どんな野菜が好きなの?」など、子ども達が自ら考え、愛情をもって接する姿が見られるようになっています。生き物の生まれてくるところや死んでいくところを目にすることもあるのですが、子どもの心に響くものがあったのでしょう、自発的にお墓を作ったりお花を供えお祈りしたりしていました。みんな優しい子に育っていると思います。
子ども達がヤギやウサギの世話をしているのですが、初めは臭いとか汚い、嫌だなどと言っていても、何回かやるうちに「当番だから長靴履いてきた」「掃除して綺麗になって喜んでいるね」といった発言が出てくるようになります。それを見て、こういう風に実際に「やる」ことは、学んだり気づいたりすることがとても多いのだなと改めて感じています。
また、子ども達から様ざまな疑問やもっと知りたいという気持ちが出てきたので、動物園に質問をしに行ったこともありました。帰ってきてからみんなで視診して(笑)、「動物園の園長さんに聞きました」というポスターにまとめて掲示しました。
以前はみんな同じことをする一斉保育をしていましたが、今は子ども達に主体性を持たせるような活動になるように、興味や関心のある部分をピックアップして活動に繋げ、展開していく保育にしています。様ざまな活動をポスターにまとめていくうちに、「これはポスターにしたら良いよ」という意見が子ども達から出てくるようになりましたし、家に帰ってご家族と一緒に調べたり、図鑑を持ってきてみんなに説明したりする子も出てきて、非常に有意義な活動になっていると思っています。

建物のこだわりはありますか?

空間の一部になっている工夫されたオープントイレ

行き場のない子を作らないためにどんどん拡張してきたので、最初の設計からすっかり形が変わってしまったのですが……。5年ほど前に2階のトイレを改修しました。幼稚園のトイレは家庭とは若干雰囲気が違うので、子ども達があまり行きたがらない場所と言われることもあります。しかし排せつというのは、食事や睡眠と同じように生き物にとって当たり前の行為です。それで、排せつというものを日常生活の中に取り戻そうというコンセプトでオープントイレにしました。階段をつけたり、明るい色にしたり、絵本を置いたり、まるで空間の一部になっているようなトイレです。そうしたら、今まで行きたがらなかったトイレに自分達から寄っていくようになったのです。トイレの階段で本を読んだり、おもちゃで遊んだり。このように、必要な場面に合わせて園舎を変えているというのがこだわりでしょうか。今は、市のモデル事業として2歳児の保育室を作っています。また、1階の保育室にはウッドデッキをつけて、教室から直接園庭に出られるように改修する予定です。

先生の教育で力を入れていることは何ですか?

やまた幼稚園

保護者の方に子ども達の学びや成長を伝えるために、それらを見る目を保育者が養えるよう、特に力を入れて研修を行なっています。活動報告にしても、ただあったことを日記的に羅列するのではなく、その活動の奥にある学びは何なのかということを常に意識して書くよう指導しています。
また海外研修もあり、台湾やフィンランドなどの幼稚園を視察したり、レッジョ・エミリアのインターナショナルスタディグループに参加したりしています。世界で「良い」と言われているものは、とにかく見て、取り入れられるものは取り入れたいと思っています。
20年後の世界を担っていく子ども達を教育するという目で子ども達と接していないと、私達の仕事は誰がやっても同じになってしまいます。ですから教員は、単に子どもが好きだからこの仕事をするのではなく、教育の場なのだという意識で仕事をしてほしいと思っています。

やまた幼稚園といえば〇〇というと?

「不易流行」です。組織が組織として存続していくためには変わることも必要です。だからこそ、何が本質で何がこれからのトレンドなのかということをきちんと見定めて、これからもずっとこの地にあり続けたいと思っています。

やまた幼稚園

やまた幼稚園

住所

〒224-0024
神奈川県横浜市都筑区東山田町351-1

アクセス

横浜市営地下鉄グリーンライン 東山田駅より徒歩2分
市営地下鉄「センター南」「センター北」「仲町台」駅からバス 東山田駅入り口バス停 または 東山田駅バス停下車徒歩3分

開園時間

月~金 9:40~13:40、延長7:30~、~18:30

連絡先

TEL:045-592-4850 FAX:045-591-4126
ホームページ