2025.12.12
保育園訪問【Web限定版】

のはら保育園――ここで育った子どもが、やがて“ただいま”を言いに来る保育園。

のはら保育園

園長プロフィール

のはら保育園さんの概要について教えてください。

2011年4月に開園しました。私達の法人は「社会福祉法人虹旗社(こうきしゃ)」といい、杉並区内で3園(杉並ゆりかご保育園・杉並保育園・のはら保育園)を運営しています。
のはら保育園は、もともとは杉並ゆりかご保育園の分園としてスタートし、阿佐谷南にあるビルの3階で開所しました。
そこは、1階に子ども家庭支援センター、2階に児童館、4階に発達相談所が入る施設で、その3階部分でした。

2013年7月、杉並区で待機児童問題が深刻化していたことから、保護者の方々の声も後押しとなり、のはら保育園も認可保育園として定員を増やし、新たに一つの園として認められました。
その場所で13年間運営してきましたが、建物の老朽化に伴い建て替えが決まり、現在の土地を杉並区から提示され、2年前にこちらへ移転しました。
今は新しい環境で運営しています。現在の定員数は79名です。

園の特徴について教えてください。

元々少人数の分園としてスタートした経緯もあり、「家庭的な保育園」をつくることを大切にしてきました。家庭的とは「一人一人の子ども達の居場所があること」と捉えており、家庭のように“わがままが言える”“それを受け止めてくれる大人や友達がいる”という温かみを大切にしています。

認可化により園児が増えてからも、その思いは変わらず大事にしています。
また、3歳からはテーブルと椅子ではなく「ちゃぶ台」で過ごしています。絵を描いたり遊んだり、食事もすべてちゃぶ台で行なっています。立ったり座ったりといった動きが自然に増え、足の発達にも良いと言われています。また、円卓を囲むことで互いの顔が見え、子ども達同士の関わりが深まります。

さらに、食育にも力を入れており、3歳からは一人一人お茶碗・湯呑み・お箸をそれぞれ異なるものを使用します。職員が様々な場所で選んできた食器の中から、子ども達が自分で好きなものを選びます。家庭と同じように「自分のものがある生活」を保育園でも大切にしていきたいという思いです。

また、職員は「先生」とは呼ばれておらず「〇〇さん」と呼ばれています。私達は“教える存在”ではなく、“生活を共にする仲間”であり、子ども達・保護者・職員が横並びで助け合いながら過ごすという考えを持っているためです。この呼び方は、のはら保育園のみの特色です。

食育について、具体的にどのような取り組みをされていますか?

1・2歳児の食器は割れにくい素材を用い、1〜5歳児全員が木製の汁椀を使用しています。3歳以上では食事時間を固定せず、11時半〜12時45分の間で好きなタイミングにカフェテリア方式で食事を取り、自分で選んだ場所で食べています。

また「栽培から調理へ」という流れも大事にしており、子ども達が調理のお手伝いをすることもあります。(今日は4歳児さんが調理のお手伝いをしました。)調理担当職員も子ども達と直接関わりながら食育を行い、例えば「今月はきのこ」「お箸」など、毎月テーマを決めて企画し、子ども達に伝えています。

食材も可能な限り地域の八百屋や肉屋から仕入れており、地域連携を大切にしています。調理室はガラス張りになっており、一段下げて子ども達の目線で調理の様子を見られるよう工夫しています。匂いを感じたり作る様子を見たりすることで、五感を活かした食育を行なっています。

園舎のこだわりについて教えてください。

園舎の建設にあたっては、職員も交えて設計士さんと2年ほどかけて話し合いを重ねました。入口には土間空間を設け、屋内でありながら光や風を感じられるようにしています。
土間を通ることで、みんなが自然に顔を合わせられる交流の場になるよう工夫しました。加えて、全クラスを1階に配置し、子ども達がすぐに外で遊べる環境にしています。

園庭は、都内では珍しく「自園で運動会ができる広さ」を確保しました。
また食育を大切にしているため、園舎中央に「お台所(調理室)」を配置したことも特徴です。
園舎全体に自然木を使用し、温もりを感じながら安心して過ごせる空間づくりを意識しました。

この地域だからこその良さを教えてください。

以前の園舎は商店街が近く、散策などを楽しめましたが、現在の場所は自然が豊かで落ち着いた環境にあり、園のすぐそばには都立和田堀公園があります。
歩いて5分ほど、幼児なら走れば1分ほどで到着できる距離にあり、虫など自然に触れる機会も多くあります。紅葉や新緑など、季節の移り変わりを身近に感じながら過ごせるのが魅力です。

地域との交流に関しては、移転してまだ2年目ということもあり、今後小学校との連携を深めていく予定です。
今は小学校での給食体験などの計画を立てている段階です。

職員が働きやすい環境をつくるために、取り組んでいることはありますか?

仕事とプライベートの切り替えは大切だと考えており、年休は取りやすくなるよう配慮しています。
職員が「この日に休みたい」と希望する際には、互いに協力し合って休暇が取れるようにしています。また、悩みがあれば先輩職員に話しやすい雰囲気があり、相談しやすい環境は整っていると感じます。

以前の園舎ではスペースが狭く、休憩室を十分に確保できなかったのですが、現在の園舎ではシャワー室を設けたり、足を伸ばして休める休憩スペースを確保できました。
そうした面からも、仕事とライフワークバランスが取りやすくなっていると思っています。

シャワー室があるのですね。

はい、あります。プール活動の後に利用することが多いです。まだ実施していませんが、園内でお泊まり保育を行うことも検討しており、その際にも職員がシャワーを浴びられるよう、園舎設計時に職員からの要望を受けて設置しました。

職員のスキルアップのための研修など、法人としての取り組みはありますか?

法人全体として3園で「リズム運動」に取り組んでいます。杉並保育園ではリズム研修を実施しており、のはら保育園の職員も参加しています。
移転前ののはら保育園ではスペースの関係からリズムの取り組みが難しかったため、「わらべうた」に注目し、月1回講師を招いて研修を行なっています。
自由参加ではありますが、多くの職員が積極的に参加しています。

その他、園内研修として年に2回程度研修を行なっています。絵に関する勉強会を行なったり、今年は社会的に注目されている「不適切保育」に関する研修も実施しました。
3園間で職員が互いの園を訪問し、学び合う機会も設けています。

人間関係を良くするための取り組みはありますか?

はい。保育園は様々な人が働く場であり、人間関係は大切だと感じています。
毎年「夏休みの宿題」として、絵日記形式で「私の夏休み」をまとめてもらったり、保育士を志した理由を書いてもらったり、今年はディグラム診断(性格診断)を行なって、自分の診断結果について感じたことを書いてもらいました。

また、それらをまとめて職員全員に配布しています。会話のきっかけやコミュニケーションツールとして活用しており、毎年「今年のテーマは何ですか?」と職員が楽しみにしてくれるほど、好評な取り組みです。

さらに、忘年会以外で、年に2回程度ですが、職員、パート交流会を行い、飲食とゲーム大会をしています。とても盛り上がり、楽しい時間を皆で共有しています。

ここで育った子ども達に、将来どのような人になってほしいと考えていますか?

卒園証書を渡す際には「確かな考え、豊かな心、丈夫な体の人になりましょう」と伝えています。自己肯定感を大切にし、自分の思いや考えを人に伝えられる力、そして他者の意見も受け止められる柔軟さを持ってほしいと願っています。
その基盤として、心と体の健やかな育ちを大切にしています。

今後の展望として、取り組んでいきたいことはありますか?

地域との連携をより深めることが目標の一つです。また、「とうきょう すくわくプログラム」でも推奨されている探究活動を保育に取り入れ、子ども達の興味関心の幅を広げていきたいと考えています。
ただ、それをどのように形にするかは難しさもあるため、職員も一緒に楽しみながら試行錯誤して取り組みたいと思っています。

現在は光・匂い・音など感覚的なことへの取り組みを始めていますが、今後さらに活動を広げていけるよう、職員と話し合いながら進めていく予定です。

最後に、のはら保育園さんの一番の魅力は何ですか?

食事がおいしいことは大きな魅力です。第三者評価でも食事は毎年高評価を受けており、年1回のクラス試食会でも保護者から好評です。また、園庭が広いことも特徴です。

さらに、3園体制でありながら大規模な職員異動がないため、卒園児とのつながりが深く保たれています。
小学校進学時だけでなく、中学生・高校生になってからも訪れてくれることがあります。前園舎の閉園時には、卒園児の8割以上が足を運んでくださり、「子どもは来られないので私だけ来ました」と保護者だけ来園された方もいました。
そういった温かく長く続く関係性は、のはら保育園の強みであり魅力だと感じています。

のはら保育園


のはら保育園

住所

〒166-0015
東京都杉並区成田東2丁目16番5号

アクセス

東京メトロ丸ノ内線「南阿佐ケ谷駅」徒歩19分
京王井の頭線「浜田山駅」徒歩19分

開園時間

午前7時30分から午後6時30分

休園日

日曜日、祝日、年末年始(12月29日から1月3日)

連絡先

TEL:03-5930-3236