「日独バイリンガル託児教室 ぶなの森」運営 稲垣真理子さん
現在はどのような活動をされているのですか?
本業は託児所経営と現場の保育士、そして3人の子ども(すでに大人)の母です。日本で保育園に13年勤めた後、シュタイナー教育を勉強するためにドイツに渡りました。その後ドイツで託児所を開き、15年になります。また、2年くらい前から自分の生き方を見直す講座を開催しています。シュタイナー教育で学んだことを活かして、「お母さんだから」といったことではない「自分」の生き方を見直そうという内容です。ほかに、農業もやっています。畑を借りて、家庭菜園をするグループを主宰しています。
たくさんの活動をされていますが、両立するコツを教えてください。
たくさんに見えますが、自分の想いは1つで全部繋がっているので、両立という感覚はあまりありません。みんなが笑顔で楽しく生き生きと生きられるようサポートしたいというのが一番の目的なんです。託児所も、生き方を見直す講座も同じです。
託児所を経営していると、子育てをしている方、主にお母さんとよく話をします。そうすると、お母さんはお子さんや家族をどうするかということばかりに集中していて、自分のことをいつも後回しにしているとすごく感じるんですね。でも、自分を後回しにして誰かのために動くということは長く続かないし、楽しくない。ちゃんと自分自身の生き方を見直して、自分の人生を歩んでほしいと思うのです。お母さんが生き生きと笑顔でいるだけで子どもは健やかに育っていきます。だから、そういうお母さん達を育てることは、子ども達の成長にものすごく役に立つことなのです。自分らしく生きるということが未来の子ども達に幸せをもたらす1つの手だてだと思ってやっています。
農業も、まったく別物に感じるかもしれませんが、農業をやっていると本当に子育てと一緒だなあと思います。農業もすごく子育てに活かせるんですよ。
今後の展望を教えてください。
最近、みんなが集える場所「星の時間」を作ろうというプロジェクトを立ち上げました。日本に興味がある外国の方や、都会に住む日本の方など色いろな人が交流したり、学んだり、自分らしさを追及したり、自分の得意なことを披露したりできる研修所みたいな場所にしようと考えています。今、物件探しや出資者を探している最中です。興味がある方はぜひ協力していただけると嬉しいです。
読者へのメッセージをお願いします。
保育士や教師という仕事に就くと、どうやって子どもを落ち着かせるかとか、どうやってこの計画を最後までやるかとか、そういう外のことにいつも意識を集中させてしまいます。でも、一番大事なことは、自分の外のことではなくて、自分自身の心をどう整えるかだと思います。たいてい子どもは想定外のことをします。そこでパニックにならずその場に合った対応をするには、まず自分の気持ちをどうやって整えるか、切り替えができるかが肝心です。それには、何があっても大丈夫だと思えるかどうか、自己受容ができているかどうかがポイントです。自己受容することが、教師として、大人として一番大事なことだと思います。
まず自分が自己受容できていないと、どんなに子どもの自己肯定感を育てたいと思っても伝わりません。だからこそ、自分を大切にして、本当に楽しいことをして生き生きと生きてほしい。それこそが実際に子どもに何かをするよりも、子どもにとってものすごく良い影響を与えると思います。
(MiRAKUU vol.36掲載)