森のようちえん・タテノイト(認可外保育施設) 舘野 繁彦さん・舘野 春香さん
保育士になろうと思った理由を教えてください。
春香:私達は引越しが多く、あちこちの保育園を利用したのですが、娘を通して色いろな保育園を見て、今の幼児教育に疑問を持ちました。子どもの発達は個人差が大きいにもかかわらず、みんな同じことをやらされていたり、子どもの意志ではなく大人の都合で教育が行われ、大人の都合の良い子になるような教育がされていると感じたんです。
また、娘自身が集団で同じことを同じタイミングですることに馴染まなかったというのもありました。
繁彦:それで、何かを押し付けるようなプログラムや活動は一切ない、子どもの主体性、自己決定・自己選択を大事にした保育園を作りました。
研究者だった頃の経験が活かされていることはありますか?
繁彦:研究者は、自分の興味関心からスタートして、テーマを決めて研究していくんです。同じように、自分で学びを見つけるということを子ども達にも体験してほしいと思っています。研究者としての今までの生き方が活かせるところかなと思います。
春香:保育も試行錯誤だと思います。決まったやり方はなくて、人によって必要なことも提供する環境も違う。こういう対応をしたらこの子はどうなるんだろう、こんな声掛けをしたらどうだろうなど色いろ考えて、仮説を立てて、検証をして……というのが研究と同じだなと思います。
保育園以外に何をされていますか?
繁彦:日本財団の「子ども第三の居場所」事業に採択され、NAZELAB(ナゼラボ)という小学生・中学生向けの学びの場を始めました。小学生も中学生も学びが多様であるといいなと僕らは思っているので、子どもそれぞれの興味に合わせて学び、そこから教科の学習に繋がっていくような、探究的な学びができる場にしたいです。
他に、絵本カフェやジオツアー、子育て支援関係のセミナーもやっています。
なぜそれらの活動を始めたのですか?
繁彦:娘が大人になった時はどんな社会だろうと想像して、やはり教育が重要だと考えました。それで、幼児教育から中学校までトータルで教育に携わりたいと思ったんです。
子どもの主体的な学びを僕らがどうデザインできるか、関われるかというのが僕らのテーマです。そこに僕らは好奇心の種を蒔いて、そこから「これを学びたい」という子どもの主体を引き出す
ような関わり方を今後確立していきたいと思っています。
読者へのメッセージをお願いします。
繁彦:子どもと関わるようになって、子どものポテンシャルをすごく感じるようになりました。僕らが何かを教えたり育てたりしなくても、子どもは勝手に成長していく生き物なんですね。その成長の過程に人類の進化が凝縮されているような気すらしていて、子どもを見るのがすごく楽しいです。そういう視点で子どもと関わると楽しいのではないかと思います。
春香:子どもと向き合うことを通して自分と向き合うことが多くなりました。自身を受け入れて自分を大切にすることはすごく大事ですが、それを子どもに望むなら、保育者もそうでないといけないと思います。こういうことは、上から教えるのではなくて背中で見せるのが大切なのかなと思っています。
(MiRAKUU vol.38掲載)