2019.01.15
教えて!川邉先生

第10回 発達ってどういうこと?

教えて! 川邉先生~子どものお悩み解決します──第10回 発達ってどういうこと?

成長という言葉は、時間の経過に伴って良くなっていく、伸びていくということを意味します。そして発達という言葉は、成長という時間の経過に伴って、心体的に成長していく、できることが増えていくという意味を持っています。
発達に問題がある子が増えています。これは母胎で、その殆どの機能の成長がなされてしまっているということに起因します。発達、脳の問題は、胎生4週間から生後1か月までの間に決まってきます。この問題は、18か月から35か月で誰でもわかるほどになります。

【図1】原始反射と月齢

原始反射という言葉を聞いたことがあると思います。原始反射は、赤ちゃんに生まれつき備わっている、特定の刺激に対して示す反射行動です。【図1】
原始反射は胎内にいるうちから始まり、生後2か月程度で生命に肝心な部分の原始反射が前頭前野に組み込まれ、発達します。一定の期間を過ぎてもまだ原始反射が残る場合、その先の発達にも大きな影響が出てきます。成長していく中で学習や生活など、様ざまな場面で困りごとが出てくる原因として原始反射がうまく統合できていないことが関係しているとする専門家もいます。
例えば、赤ちゃんは離乳に向け、口唇探索反射や吸てつ反射が弱まります。これらの原始反射の消失によって、口を自分の意志で動かせるようになるのです。しかし、原始反射が残存していると口を閉じることが難しかったり、食べ物を押し出してしまったりして、しっかり噛んで飲み込むという嚥下機能の獲得が難しくなってしまうことがあるのです。おっぱいが深く入っていない浅飲みの場合には、この噛んで潰して飲み込むという動作ができないことが殆どになります。

首がすわる生後3か月くらいまで赤ちゃんは、呼吸も声も身体の動かし方も、成人とは全く違います。この時までに、成人の良い姿勢にまで変えていかないと、原始反射の統合が行われなくなるのです。
原始反射は生後2か月程度までで、体の動かし方に関する情報が脳の前頭前野という判断力に関係する分野に統合されます。この時期までに、呼吸、飲み込みという命に最も大きく関係する分野の脳が発達するのです。そして生後6か月までに、原始反射は延髄、橋と言われる、呼吸に最も重要な脳の部分の発達として、皮膚、粘膜などの反射に組み込まれていきます。
この原始反射の統合時期である生後6か月頃には、様ざまな発達が見られます。唇を完全に閉じることができ、鼻で呼吸し、食べ物を手で取り口に入れて食べるという動作と姿勢ができるのもこの時期です。気道と食道が分かれている赤ちゃんの喉から、気道と食道が繋がっている成人の喉に成長するのも、それにより様ざまな声を出したり言葉を真似るのもこの時期です。顎ができ始めるため、目も動き、鼻での呼吸がしっかりできるようになり、耳がようやく完全に聞こえ始めて舌と唇の関係ができあがり、口腔内ボリュームの発達が見られるのもこの時期です。目からの情報が主体だった生後3か月までに比べると、口腔の発達とともに顔貌も変わり始めます。ちょうどハイハイがしっかりできて、離乳食を考えようかという時期です。この時までに原始反射が統合されていないと、食べ物を噛んで飲み込むという動作ができず、おっぱいを吸うだけの原始反射が残ってしまうことになります。
原始反射の統合は、成長に合わせて多くの動作と発音ができることが前頭前野の発達によってなされます。生後3か月までに脳は一気に発達し、呼吸と嚥下という機能を動物のそれから人間のそれへと整えていきますが、生後3か月を過ぎると人間としての機能を成長させるように統合されていきます。主に原始反射は接触刺激に対しての行動パターンの反射なので、皮膚反射、粘膜反射などの自律神経との関わりを作り上げていきます。生きるための行動ができるように、1歳くらいまでの間に、他の脳の成長とともに生涯を通して必要な反射へと成長していくのです。人間は母胎、生後1か月、生後3か月、そして生後6か月、10か月、1歳と原始反射の消失、統合、反射機能の発達によって、脳が鍛えられていくのです。

歯に関しても、母胎から生後1か月の間に乳歯だけでなく永久歯でさえも、歯胚という歯の種のようなものができてしまうのです。いかに妊娠前から知識と、病気にならない体作り、虫歯や歯周病にならない人生を作ることが大事なのかということがわかるでしょう。
羊水感染の原因として、口腔内の細菌の管理を怠っていたり、虫歯や歯周病の治療がしていないことが問題になる場合があります。親になる女性が最もしなくてはならないことは、歯の治療ではなく、これ以上歯の治療をしないで済むよう、予防のために歯科医院を利用することです。母親は妊娠する前から、元気で健康である必要があるのです。

そして発達には人と人との関わり、社会性が最も大事です。核家族化した社会で子どもを育てることは不可能と言われます。特に、生後2か月から1歳までの原始反射と、反射機能の成長で育てる時期には、子どもは集団で育てることが望ましいです。だからこそ、その母集団となる社会──保育園の発達に対しての役割は大きいのです。
社会が老化してくる時代だからこそ、子ども達の成長発達を知り、反射を知ることは、病気だけでなく、社会の体制を変えなくてはならないことを意味しています。北欧諸国ではこの問題に早期に対処して、2000年には、この問題の回答と国民に対してのあり方を説いてきました。老後の問題と子どもの発達の問題を同時に解決できる社会を作ることが、未来を守ることだと説いてきました。発達には、教育、医療、そして社会性という大きな問題を同時に解決へと導かなければ無駄だと北欧諸国は説いています。
保育園のあり方、子育てのあり方、この国の未来まで、一緒に考え、これからを見直してみませんか。

(MiRAKUU vol.25掲載)

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川邉 研次(かわべ けんじ) 経歴
  • 川邉 研次
  • 新橋 未来歯科 院長

    姿勢咬合セミナー主幹(27年以上続く姿勢と噛み合わせの歯科医師向けのセミナー)
    Ken'sホワイトニングセミナー主幹

    1984年静岡県菊川市にかわべ歯科を開業。2011年新橋に未来歯科開業。
    従来の疾患中心型治療ではなく、「細菌単位でのお口の中のリスクを知り、その結果に基づき改善していく」「食事内容の分析・アドバイス」「姿勢指導や、呼吸などのアドバイスによる体質改善」「患者様の未来の目標設定」をコンセプトにした「予防」診療を行う。
    歯科医・歯科衛生士向けの各種セミナー、DMMでのオンラインサロン等も精力的に行なっている。

    ホームページ:https://miraishika.com/

    未来歯科アカデミー:https://miraishika.com/academy/

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