第8回 MiRAKUU特別対談 社会福祉法人風の森統括 野上 美希 × MiRAKUU編集長 堀川 伸一
「\ノガミキ流/保育士働き方改革委員会」拡大連載決定!
今回は今後の連載の内容についてご紹介していきます。
堀川:「保育士働き方改革委員会」の連載7回が終了しました。反響等ありましたか?
野上:おかげさまで色いろなメディアに出させていただいたこともあり、知名度が上がりました。
堀川:MiRAKUUの方では、新しく園長になった方から、参考にして取り入れたいと思っていますなどのコメントをいただいています。実践したいと思う現場の人が増えているなという感触です。
野上:新しく園長先生になった方は、自分が現場で苦しんでいたからこそそういう園にしたいという想いがありますよね。
堀川::ただこれから実際にやってみようと思った時に、どういう風にやっていけばいいのかわからない、失敗してしまったというようなことが出てくるのかなとは思います。これからの連載で、そういったお話をしていただけますか?
野上:最近、働き方改革をやっていますというお声をいただいていて、その中でこういったところに蹟いているといった「蹟きポイント」が情報として入ってきているので、風の森だけでなく他園の事例もご紹介できたらいいなと思います。
堀川:それは取り組みをする上でとても参考になりますね!
近頃、閉園する保育園が増えてきているなと思っているのですが、業績が悪くて統合されたり、M&Aで買収されたりという話も聞きます。
野上:M&Aは増えていますね。幼稚園は専業主婦世帯の減少に苦しんでいますね。
堀川:少子化が大きな原因だとは思いますが、選ばれる園と選ばれない園というのが出てきていると思います。
野上:それは明らかにありますね。子どもが6人しか入らなかったけれど保育士さんは13人もいるという園の話は耳にしました。そうなってくると、経営的には完全に赤字ですから厳しいです。
逆に、保育士さんの数が足りず派遣さんを入れてなんとか賄うという状態の園も。それでは、安全の担保に精いっぱいで子どもの育ちに対する語り合いの時間等が持てなくなってしまいます。
職員が採用できないと働き方改革に磨きがかからず、質の向上に着手することが難しい園さんも出てきています。一方で働き方改革に着手しだしている園さんも増えてきておりどんどん差が開いていきそうです。
堀川:やはり保育士不足は問題ですね。
野上:すでに学生世代で少子化が表出していて、そもそもの学生数自体が減っているんです。養成校も定員割れが出てきていて、かつ、養成校に入っても一般企業に行く人が増えています。
堀川:保育士の新卒採用が今まで以上に難しくなっているということですね。そうなると中途採用ということになると思いますが。
野上:中途の方は現状より良い環境で働きたいという想いが強い分、選び方はとてもシビアです。
堀川:働く人から選ばれる園、保護者から選ばれる園にするのが必須なわけですね。
野上:中途市場で活躍が期待される保育者の層はZ世代がメインになってきているので、働くことに対しての価値観において、私も含め経営者層とはだいぶギャップが出ていると思います。長年培ってきた保育園として素晴らしい保育をしていたとしても、それは残業をベースに成り立っていたりする。人ロボーナス期(生産人口が多い時代)は全産業で同様の働き方が一般的でしたが、人ロオーナス期(生産人口が少ない時代)においては働き方改革により女性が長く働けるための経営が必要になり、Z世代もそういった働き方を目指しています。
堀川:保育園の経営者の方は悩みが多くなってきましたね。
野上:法人の想いに共感した職員が採用できないことは保育運営にとても影響します。運営がうまくいかないと、それが評判の低下に繋がり園児募集にも影響が出てきてしまいます。待機児童が周題となっていた時代は空きが出るということは少なかったと思いますが、今は園児の集まる園と集まらない園の二極化が進んでおり、園児の集まる園で引っ越し等が発生し空きがでた場合、集まらない園から移動するといったことがおきており非常にシビアな状況ですね。
堀川:他に、どういったことが問題だと思っていますか?
野上:保育士が保育を目指さなくなることも問題だと思っています。
堀川:改善するにはどうしたらいいでしょうか?
野上:少子化の波はなかなか止まらないと思いますがまだまだ我々現場にできることはたくさんあると思います。例えば保育の魅力を発信したり、処遇改善や配置の改善を国に訴えていく等ですね。
保育の仕事がいかに社会を支えているか、また日本の未来を創り上げていく仕事であるかを業界として訴え続けていく必要があると思っています。
堀川:声を上げないと国も動く必要がないと判断してしまいますからね。そういった全体的なお話、保育の未来などについても連載でお話いただければと思います。
今後の連載では対談もやっていきたいと思っています。野上さんはどんな方と対談してみたいですか?
野上:保育業界って、感性、感情が豊かな方が多いですよね。ですので、たとえば統計のスペシャリスト等左脳に強い方々に業界を分析してもらいたいですね。リサーチ会社の方もいいですね。
堀川:なるほど、面白そうです。保育業界の人だと、たとえば2世の人、別業界から入ってきた人、現場上がりの経営者と色いろいらっしゃると思いますが。
野上:若手経営者とお話しするのも面白そうです。やはり若手経営者に頑張ってもらいたいので。若手で立ち上げた人も、2世3世で頑張っている人もいると思います。
堀川:これからの人ですね。人材教育系の社長とかはどうでしょう?
野上:いいですね。教育研究所の方とか。他業界で働き方改革を推進している人もいいかもしれません。ICT関係もアリですよね。未だに導入していない園もまだまだありますから。
経済的に成功を収めた方があるタイミングでその仕事を辞めて、子どものことや教育に携わるというパターンが意外に多いなと感じています。
堀川:確かにそういう話はよく聞きます。そういう方との対談も興味深いですね。
(MiRAKUU vol.45掲載)
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- 野上 美希(のがみ みき)
社会福祉法人風の森 統括
学校法人野上学園 主事
株式会社野上アカデミー 代表取締役
一般社団法人キッズコンサルタント協会 代表理事大手シンクタンクにて、コンサルティング、採用、営業を経験した後、人材紹介会社にて事業部の立ち上げに従事。営業部長として複数の部下をマネジメントする傍ら、女性のための人材紹介サービスの代表も務める。自身の妊娠を機に久我山幼稚園の運営に携わる。
成長著しい時期である0歳~9歳(シングルエイジ期)においての一貫した教育を提唱し、子育てひろばや学童保育、6つの認可保育園を開設。
また、キャリアカウンセラー資格を活かし、保育士のための仕事紹介サービス『保育ウィルキャリア』も主宰し、自園以外の保育士のキャリアに対しても寄り添う。幼稚園の採用のみならず、認可保育園を毎年1園ずつ増やす中で、独自の採用手法により、国基準の2倍の保育士確保を実現。現在、業界に先駆けて保育者の働き方改革を実践している。