第10回 ウェルビーイングな組織づくりとは

一般企業でもウェルビーイングな組織づくりが推進されていますが、保育園のような、密なコミュニケーションが大切な業界でも非常に重要なテーマです。
では、ウェルビーイングな組織とはいったいどんな組織でしょうか?
成功する組織のカギ
それは一つに「心理的安全性」が高い組織だと考えます。
心理的安全性は、Googleのリサーチチームが発見した「成果の出るチームの共通点」の一つです(Google「プロジェクトアリストテレス」2012~)。成功するチームの共通点は「他社への心遣いや同情、あるいは配慮や共感」にあり、その5つの鍵は以下の因子となっています(重要順)。
- 心理的安全性(Psychological Safety)
- 「不安や恐れを感じることなく、発言や質問ができる環境や関係性」
- 信頼性(Dependability)
- 「相手の能力と働きぶりを認め、成果を出すことを信じている」
- 構造と明確さ(Structure &Clarity)
- 「チームにおけるメンバーの役割の明確さ」
- 仕事の意味(Meaning)
- 「自分にとってこの仕事は意味がある」
- 仕事のインパクト(Impact)
- 「自分がしている仕事が、社会に変化をもたらす重要なものであるという確信」
心理的安全性がもたらす効果は、報連相の機会が増える、アイデアの質が高まる、主体性が向上する、離職率を低下させる、残り4つの鍵の土台を作る等、様々あります。
では実際に心理的安全性を高める3つのアプローチを風の森がどのように行なっているか見てみましょう。
1
組織的に意見を交換する機会を設ける
全体ミーティングでは、各クラスで取り組んでいること、大事にしていることを話す「クラス自慢」の時間を設けています。みんなで良い部分を褒めることで、職員のモチベーションが高まります。
また、毎日の子どもの様子について語り合いの時間を持つことにしています。1日5分でも良いので、クラスの全員の保育士と、心動かされた出来事を語り合います。それにより、子どもの成長を共有でき、次の活動の展開にも繋がっていきます。
2
個人が自発的な発言や質問ができる環境を作る
園長・主任との対話の機会を数多くとることが重要です。決められた日時の面談だけではなく、日々の保育の中での疑問やアイデアを直接、園長・主任に投げかけられる環境を作るようにしています。
その中で、園長が現場から提案された活動を認めることで、職員は自分が行いたい活動に責任を持ち、失敗も成功も成長をもたらします。
また年度初めに「ポジティブシャワー」等、お互いを褒め、尊敬し合う研修を行なっています。相互の良い所を認め合える風土を作ることが大事です。
3
メンバーにチームの貴重な一員であると認識してもらう
この仕事は誰がやるべきということを示さないことが重要だと考えます。
例えば、事務所の仕事は事務所の人員がやるべき、ではなく、みんなで行うものだと認識してもらいます。それにより、自分の意見や成果が園運営に反映されることに誇りが生まれ、良い園作りに向かっていきます。
逆に、自分自身がチームにとって重要な存在ではないと思い込んでしまうと、分からないことを聞こうとしなかったり、チームの欠点を分かっていても指摘しないというケースが出てきてしまいます。
「休む」環境整備も必要

保育業界でのウェルビーイングな組織づくりにおいて心理的安全性の次に大事なことは、休憩室の設置です。
保育の仕事は、常に緊張状態に身を置くことになります。子どものいない空間でしっかり休憩・事務ができる環境整備はこれからの時代には必須となります。60分間子どもと離れることで心も身体もリフレッシュでき、プライベートの会話が増え、人間関係も良好になります。また、体力的に厳しいときは昼寝も可とすることで、午後の生産性が高まっていきます。
長く働き続けるためにあらゆる年代の職員がウェルビーイングであり続けられる環境整備は非常に大事であり、心身ともに健康に働き続けてもらうための先行投資が必要です。
今回は、心理的安全性を高める環境構築、休憩をしっかり取れる環境整備がウェルビーイングな組織を創り上げる、というお話をさせていただきました。
次回は、職員のモチベーションをどう上げて主体的に働ける環境を作っていくかについてお伝えしたいと思います。
働き方改革Q&Aコーナー
- 働き方改革を経て、実際どんな働き方・どんな保育になっている?
- 先生達が心にゆとりを持つことができるため、子どもをしっかりと見守り、個々の発達を促していくことができています。また、子どもの主体性を重んじた保育への移行も可能となり、子ども真ん中の保育が実現できています。先生達同士の連携もスムーズになり、また勤務時間内に研修を受けることができるため、学びの意欲も高まり保育の質が向上していると感じています。
- 風の森以外の成功例を知りたい
- 地方の法人でも働き方改革を進めるために補助金を活用し、国基準1.5倍の配置を実現しているところもありますね。補助金とICTを活用することで働き方改革の実現は可能です!
また、別のケースでは、ICTを導入したものの、人を増やすことが難しかったため、非常勤のパートさんを常勤に変更してもらい、人を増やさず園のトータルの働ける時間を増やすことで働き方改革を実現できているという法人さんもいらっしゃいます。
どの園も共通するのは、トータルの働ける時間を増やすこととICT等の生産性向上を一緒に行うことで働き方改革のスピードが増している、ということだと思います。
(MiRAKUU vol.47掲載)
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- 野上 美希(のがみ みき)
社会福祉法人風の森 統括
学校法人野上学園 主事
株式会社野上アカデミー 代表取締役
一般社団法人キッズコンサルタント協会 代表理事大手シンクタンクにて、コンサルティング、採用、営業を経験した後、人材紹介会社にて事業部の立ち上げに従事。営業部長として複数の部下をマネジメントする傍ら、女性のための人材紹介サービスの代表も務める。自身の妊娠を機に久我山幼稚園の運営に携わる。
成長著しい時期である0歳~9歳(シングルエイジ期)においての一貫した教育を提唱し、子育てひろばや学童保育、6つの認可保育園を開設。
また、キャリアカウンセラー資格を活かし、保育士のための仕事紹介サービス『保育ウィルキャリア』も主宰し、自園以外の保育士のキャリアに対しても寄り添う。幼稚園の採用のみならず、認可保育園を毎年1園ずつ増やす中で、独自の採用手法により、国基準の2倍の保育士確保を実現。現在、業界に先駆けて保育者の働き方改革を実践している。