2022.07.15
保育環境と音

第4回 音環境を改善するには

警告! 今のままでは保育園・幼稚園の「音」環境に問題あり!? 「保育環境と音」の専門家が語る子どもの「耳」の発達に悪い影響を与えている要因とは!?──第4回 音環境を改善するには
実は「音」環境が子どもの発達やストレスに大きな影響を与えているって本当?
子どもと音環境について研究されている志村洋子先生にお話をうかがいました!

こちらのWEB連載では誌面に載せきれなかった、子どもの音環境に関わるお話をより詳しく紹介していきます!

子どもにとって一番重要な「良い音」の要素は、聞く時の「音量」が適切であることでしょう。
基本的には大人も同じで、WHO が大人の1週間の暴露限度を示しているように、大人でも大音量を聞き続けると、「難聴」になることは広く知られるようになっています。
子どもの聞こえの力はまさに発達の途中なのでなおさらです。聞こえの力の発達を大音量で阻害しないことが第一ですね。

日々の園生活では、保育室での活動と共に音楽や英語の時間や、体育指導、外遊びなどでも子どもたちだけでなく保育者も大きな音や声を出すでしょう。今はコロナ対策で黙食しているところが多いかと思いますが、食事の時にはしゃぐ子もいるでしょう。
このように折おりで子どもの声や保育者の声、活動に伴う音が大きくなるのは良いのです。良くないのは、登園から降園まで1日中常に大きな音が聞こえることなのです。例えば乳児の午睡時間でも、周囲からの大音量の中にいれば乳児の耳は休めないのですから。

最近の研究では、子どもが大人と同じような聞こえ、雑音が聞こえる中で聞きたい音を聞き分けることができるようになるには、中学生の終わりぐらいまでかかるということがわかってきました。
だからこそ、大きな音がする場所に長い時間居ないこと、室内で常に音楽をかけたり、遊びの際には耳元で大きな音を出さない配慮をして子どもに知らせることも大切なのです。そして、自然の中にある「小さい音」や「静かな音」を聞くチャンスを作って、静かな中で明瞭に聞こえる音を届けていただければと思います。

 

実際に音環境を良くするにはどうしたら良いのでしょうか?

一番良いのは、建築の時に音環境を考えて設計することです。
しかし、設計士さんが音環境について詳しくなかったり、事業主さんに音に対する意識がなく、デザイン性重視にしてしまったりすることもあります。今は特に建築材料が高騰しているので、コストダウンしなければならないという事情もあるでしょう。
残念なことですが、良い園を作りたいという気持ちがあっても、音環境に関してきっちりと設計に反映させるだけの意識を持っている事業主さんはまだ少ないのです。

一方音環境について知識がないまま園舎を建て、できてから音環境の問題がわかった園、古い園舎を改築して音環境が変わってしまった園、園として作られていない通常の店舗スペースを借りていて音環境が良くない園もあるかと思います。
大がかりな工事をするという方法もありますが、後付け可能な吸音パネルを設置するのが良いと思います。様ざまな後付け吸音パネルが各社から出ていますので、ぜひ検討してみてください。

パネルだけではなく、壁にかけて飾りになるようなカラフルな色遣いの吸音材もあります。また天井から吊り下げるタイプもあり、このタイプはスペースも取らず子どもが触ることもないので、安全性も活動空間も確保できます。
どうしても吸音パネルを取り付けられないという方は、クッションやソファ、厚手の生地のカーテンなども吸音効果がありますので、そういったものを置いて工夫してみてください。ただし、「防火」や「防炎」などの問題もありますので、こうした簡易の吸音では素材に気を付けて選ぶ必要があります。

色いろな吸音材が増えて、場所に適したものを組み合わせられるようになると良いですね。

 
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志村 洋子(しむら ようこ) 経歴
  • 志村 洋子
  • 博士(教育学)、埼玉大学名誉教授、東京藝術大学音楽学部声楽科を卒業、東京藝術大学院音楽研究科修士課程修了、現在は同志社大学赤ちゃん学研究センター研究員、保育施設の室内音環境改善協議会代表。
    主な研究分野は「乳幼児の歌唱音声の発達」「乳児音声とマザリーズ音声の音響分析研究」「保育室空間の音環境に関する研究」「騒音環境が乳幼児期の聴力に及ぼす影響に関する研究」

    ホームページ:https://hoiku-otokankyo.org/