長期休み明けの子ども達と楽しく過ごす保育のコツ 3つ
長期休みが明けました。子ども達は、自由に過ごすことのできる家庭生活から、集団行動を求められる園生活に徐々にシフトを移さなければなりません。楽しみな幼稚園、保育園ですが、休み明けは色いろ起こりがちですね。そのような中で、保育者はできる保育のコツを紹介します。
子どものサインを見逃さないようにしよう
園生活は、5つの特徴があります。(なお、各園によって特色があると思いますので、目安としてください)
1. 時間で行動の切り替えを目指す
2. 遊びの方法や場所の選択肢が限られている
3. 与えられた活動をこなす
4. 家族と離れて過ごす
5. 大人数で取り組む活動が多い(環境刺激が多い)
長期休み明けは、上記の活動が苦手であったり未経験であったりすると、子ども達はその馴染めなさから色いろなサインを出します。
例えば、次のような6つのサインが考えられます。
1. 保育士を取り合い、甘え・注意ひき行動が目立つ
2. 泣く子が増え、それが伝染する
3. 体調不良が増える;微熱、食欲不振、便秘・下痢、外出時の嘔吐、寝付きが悪いなど
4. 指しゃぶり、爪(袖)噛み、物をくわえる、チックがみられる
5. 口数が減る、いじわるをする、嘘をつく、汚い言葉をわざと使う
6. “コロナ”というキーワードを使って遊ぶ
長期休み明けから1か月程度は1と2は耐える時と捉え、一人ひとりにできるだけ丁寧に応しましょう。
なるべく集団から離れた落ち着ける場所、廊下や別室、(可能なら小部屋)を利用して、あたたかい言葉をかけたり、トントンとゆっくり指先を使って肩や腕、背中をマッサージしてあげるのも<
良いでしょう。
3と4は、子どもは意図せず体からのサインを出している苦しさを理解しましょう。無理をさせる時期ではないということを保護者に十分に説明し、理解してもらいます。自宅での健康観察も一層お願いしましょう。
5は、子どものストレスの発散方法が自己に閉じこもるタイプか、他者(外側)に吐き出すタイプであるかを見極め、程よい距離感を見つけます。
他者へ吐き出すタイプの場合には、時折間に入って一緒に遊びながら、「なるほど、〇〇と言いたかったのかな?」と言葉を添えたり、声のボリューム、トーンを下げ、保育士が自然と見本となる行動を示し、模倣を促します。
6は対応に苦慮すると思いますが、1番大切なことは保育士が動揺しないことです。一次的に攻撃的になったり、ふざけて“コロナ”という言葉を使ったり、感情の起伏が激しくなることは予想されます。
2か月過ぎても治らない場合には、専門家の診断も含めて対応を協議する必要がありますが、まずは怪我のない範囲で自由に遊ばせ、気持ちの解放を促す方向で良いでしょう。
子どもながらに“コロナ”と戦った気持ちを昇華するお手伝いを園での遊びで促しましょう。
※昇華:自分の中にある気持ちや衝動的な欲求を満たすために社会的に認められる行動として表現すること
うまくいかない!”気持ちの原因は解決できる
休み明けの園児達の心と体の変化の原因は、どこにあるのでしょうか。
遊び疲れていることもあれば、外出することができず鬱憤が溜まっていることもあるでしょう。夜更かしなど生活リズムが崩れていることもあります。
いつもよりゲーム端末に触れる機会が多かったかもしれません。
保護者は、家での生活が長かった場合、朝の身支度や送り出しなど、慣れるのに時間がかかることが予想されます。
子どもの方も、家庭での親やきょうだいとのタテの関係では成立していたコミュニケーションのあり方とは全く別の同年齢の仲間との対等な立場で育ち合う環境で過ごすために、ストレスを感じることが少なくありません。
特に4歳児頃以降は、ごっこ遊びなど役割を持った遊びに親しむようになり、それぞれの好きな遊びと嫌いな遊びが目立ってきます。
この好き嫌いがはっきりとしている場合、“我慢”したり“交渉”したりする時に、<言葉の理解>と<気持ちのコントロール>の発達段階に合わせて、見守ることが重要です。
子ども達がトラブルの状況になっていると、まず私達は表面的な言動と観察します。
例えば、「〇〇ちゃんが〇〇をとった」「〇〇くん!邪魔!」や、殴る蹴るとか…。
しかし、子ども達の気持ちの背景には、様ざまな隠れた背景があります。それを整理して、それぞれの言葉の持つ意味と気持ちはどこまで表現できているか、コントロールできていないだけか、をアセスメントしましょう。
自分の言動に自信を持ち、子どもを信じよう
目の前にいる子ども達の成長は、教科書通りにはいきません。もちろん子どもの発達について、知識を身につけることは重要です。
しかし、子どもといる間はそれをすっかり忘れてしまいましょう。皆さんの心の中にある“素直な気持ち”を持って、子ども達と遊びましょう。
子ども達の笑顔と泣き顔、踊りや歌、ケンカの仲裁から、保護者への連絡伝達…その全てに身を委ねて、心から味わいましょう。
その後に、仲間の保育士や先輩・上司に観察したことを報告し、分かち合いましょう。原因はいくつも複雑に絡みあっています。多様な視点から仮説を立てて、作戦を練りましょう。
大人同士が協力して環境作りをして行き、自分一人で解決しようとせず、自分を良く見せようとコントロールせず、素直にじっくり明らかにみていくと、教科書に書いていない、目の前の子ども達からしか頂けない“未来への扉”が見えてくるはずです。
教科書はいつも子ども達です。
-
ホームページ:太田千瑞公式サイト
東京都公立・私立学校スクールカウンセラー、臨床心理士、ヨガ講師、筑波大学心理・発達教育相談室非常勤相談員。
初の著書「イラスト版子どもの発達サポートヨガ」が発売中。
Yoga Laboratory ~ 先生達のセルフケア研究会 ~ のアドバイザー
ホームページ:Yoga Laboratory