子どもの頃の環境と経験が今の自分の原点──木下ゆーきさん
意外に舞台経験・下積みが長い
堀川:木下さんはどのようなご家庭で育ったのでしょうか?
木下:興味を持ったことはやらせてくれて、親も一緒になってやるという家庭でしたね。ローラースケートをやりたいとなれば、親と兄弟3人全員のローラースケートを買ってやっていました。親も一緒になってやることによって、躓いた時に原因が親もわかるから寄り添ったりアドバイスしてやれるという考えを持っていたようです。
今、僕も意識して子どもと一緒にするようにしています。終わった後の会話もすごく濃くなるんですよ。
堀川:原点がご両親にあるのですね。小さい頃は将来何になりたかったですか?
木下:小学生の頃はお笑いが好きでした。当時オンエアバトルというお笑い番組がありずっと録画して見ていて、高学年の頃には誰がオンエアされたか、何点だったか、どこが面白かったなどを書き留める専用ノートを作るほどでした。
堀川:そこから今の仕事に結びつくのでしょうか?
木下:話すと長いですよ(笑)。ユーモアがある両親だったので、大道芸などのイベントにも連れて行ってもらっていたんですね。中学生の頃、これまたTVなんですがジャグリング王選手権をやっていて、その影響でその場にあったミカンでジャグリングを始め、のめり込みました。そのうちジャグリング仲間ができ、15歳の時にイベントに誘われて人前に立ち始めたんです。
高校、大学と大道芸人として活動していたのですが、やっぱり道具を使わずに言葉だけで笑いを取るお笑いをやりたいという気持ちが強くなって、大学2年で中退して上京、お笑い芸人として活動を始めました。
それから結婚して子どもが生まれて、離婚して、シングルファーザーに。これをきっかけに実家近くに戻って、会社員になりました。会社員時代に仕事を通じて今の妻と出会って結婚、それでまた娘が生まれ、おむつ替え動画シリーズをSNSに上げたら拡散されて、今の仕事になっています。
インフルエンサーとしてはここ数年なんですが、実は意外に下積みが長いっていう。
堀川:確かに長い! 大道芸人お笑い芸人の経験が今に活かされているのですよね。
木下:まさにお笑い芸人をやっていたからこそネタを作れていると思いますし、トークショーなどでいじれるお客さんや手伝ってくれるお客さんが一目でわかるのは舞台で大道芸をやってきた賜物ですね。
あえて頑張らず自分が楽なスタンスで
堀川:子育ての秘訣を教えてください。
木下:自分の中で意識しているのは、頑張りすぎないということです。どうしても上手くいかないことというのは子育てをしているとたくさんあるんですが、頑張ろうとして上手くいかなかった時って一番フラストレーションが溜まるんですよ。
たとえば物が落ちそうになった時、そのまま落としてしまった時よりも防ごうとして手を出したものの結局手に当たって落ちてしまった時の方がへこみますよね。だからこそ、そういう時あえて手を出さないようにしてちょっと心を穏やかに保つというのはあります。
子育てをしていると子どものために何でもやってあげよう、やってあげなきゃという気持ちになるんですけど、自分が楽なスタンスでやっていくようにはしています。
堀川:今まで子育てしていて大変だったことは何ですか?
木下:長男が何を言っても逆のことを言ったりしたりするタイプのイヤイヤ期で、ご飯を作って出すと「食べない」。下げると「食べる」。「もう食べなくていい!」と怒ると泣いてしまって、「このご飯はお父ちゃんが頑張って作ったんだ。わからないかな?」と優しく言うと、息子が泣きながら「わかるぅ」と言うので、「そうだよね、わかるよね」と言うと、「わからない~」って。
堀川:(笑)。それでイヤイヤ期のうたを作ったのですか?
木下:そうですね。長男の時はなんでこうなるの! と思っていましたが、2人目、3人目の時は懐かしい! と思ったんですよ。懐かしいと思うということはあるあるなんだろうな、それはネタにしたら面白いんじゃないのかなと思ってあの動画を作りました。
シングル時代は特に仕事と子育ての両立が辛かったです。子どもの体調不良で保育園から電話がかかってくるのはしょっちゅうで、同僚は快く送り出してくれるのですが、申し訳ない気持ちが強くなってしまうんですよね。そのうちスマホ上の保育園の名前を見るだけでドキドキするようになってしまって。だから途中から保育園の登録名を新垣結衣に変えていました。
堀川:そうしたらどうなりました?
木下:一瞬だけ違ったドキドキを味わえるっていう(笑)。
SNSは軸を立ててやり続けていくことが大切
堀川:木下さんはどうやって子どもを引きつけているのですか?
木下:あまり意識してはいませんが、子どもと同じ目線に立つというのは心がけています。それは話す時に身を屈めるだけではなくて、自分の年齢を子どもに寄せるというか。一緒になって遊んだりふざけたりを子どもと同じようなテンションでやると、子どもにとっては大人との間の壁がなくなるんじゃないかなと思うんです。
堀川:なるほど。最近SNSを始める園が増えているのですが、見てもらえるようなコツを教えてください。
木下:難しいですね! 僕は飛びぬけてイケメンなのでたくさんの方にフォローしてもらっていますけれども。
堀川:そうですねぇ(棒)。
木下:ツッコんでください(笑)。我が子を出してほしい親も出してほしくない親も当然いるでしょうし、個人でやるよりも難しいだろうなと思います。子どもの様子よりも、園や先生達の保育の裏側なんかを載せたら需要があるかもしれません。SNSで何をやっていくかの軸を1個立ててそれをやり続けていくというのが一番大切なのかなとは思いますね。
堀川:最後に、読者へのメッセージをお願いします。
木下:保育士は色いろな責任が重くのしかかる心身共に疲れる大変な仕事だと思いますが、僕が親になって特に感じるのは、確実になくてはならない存在だということです。僕は本当に尊敬しています。
僕のSNSのフォロワーさんは多くが子育て世代なんですね。インスタライブなどをすると、中には保育士の方もいるので僕が「本当に感謝しています」と言うと、見ているフォロワーさんからも次々と「本当にその通り、保育士さんありがとう」と声が上がってくるんです。僕達は毎日ありがとうございますと思っていると伝えたい。本当に素敵なお仕事を目指されているんです、頑張ってください。
(MiRAKUU vol.47掲載)
- 木下 ゆーき(きのした ゆーき)
1989年3月9日生まれ、愛知県出身。
子育てモノマネ動画など、その発想力と表現力はタレントや俳優など著名人にもファンが多く、現在SNS総フォロワー数110万人を超える子育てインフルエンサー。RCC中国放送「イマナマ!」火曜日レギュラーを務める他、数多くのメディアにも出演中。
著書『#ほどほど育児』(飛鳥新社)、『世界一楽しい子育てアイデア大全』(KADOKAWA)チャイルドカウンセラー資格保有