さくらさくみらい東日本橋──日々話ができる関係性が子ども主体の保育を支える
さくらさくみらい東日本橋さんについて教えてください。
2019年10月に開園して、5年目になります。開園当初は乳児クラスだけでしたが、今は年長まで揃い、昨年度から1つの「園」という形になりました。
保育は会社の方針である「子ども主体」がベースで、それを踏まえた上で当園では3つの柱を立てています。まず、戸外活動。体を動かすことに力を入れています。近隣にも公園はありますが、他園さんや一般の方も多いので、少し足を延ばして他の区まで行っています。小さい子はバギーを使いながらになりますが、平均して2時間は歩きます。毎日のように昼夕と散歩に行っているので、この園の子達は皆とても体力があります。
行く場所は子ども達が選んでいます。たとえば新幹線のパズルをやっていたら、本物を見に行こう! と東京駅へ行ったり。去年は皇居のお濠を見に行きました。左手にはスカイツリーが見え、右手に歩くと東京駅、上には浅草。本や画像、動画からの知識だけでなく、それを実際に見て体験ができる、すぐそこに実物教材があるというのがこの区ならではですね。
2つ目が食育です。生きる上でかかせない“食”に興味を持ってもらいたいからです。栄養士・調理師と共に、食育や食べ物に関することを行なったら、その日のうちに写真込みでドキュメンテーションを掲示しています。また、緑・赤・黄の3色の食物にちなんだものを掲示して「今日の食事はどこに入るのかな?」と可視化してわかるようにしています。
当園は園庭がないのですが、玄関で色いろなものを育てています。キュウリなどオーソドックスなものから、ヘチマ、ヒマワリ、上手く育てられなかったんですがパパイヤにも挑戦しました。
最後が見える化です。通常の保育に関してもドキュメンテーションを毎週掲示しています。ドキュメンテーションには、良かったことやちょっとした出来事、子ども達のやり取りを写真とその解説を載せています。子ども達に言葉を書いてもらうこともあります。
保育の見える化をすることで、保護者の方への開示だけでなく、私達保育者にも見えてくることがたくさんあります。
子ども主体の保育に対して先生達の教育はどのようにしていますか?
まず、知識的な部分は本社研修で教育しています。さらに園で具体的に、保育における主体性とは何かを職員一人ひとり考える時間を設け、実際の保育と照らし合わせて日々フォローをしています。
先生達には、まずは自分達で考えて取り組んで成功体験を積んでもらおうと思っています。先生達が実際に子どもの声を聞いて、やってみて、楽しむことが大事です。
ある時、散歩中に園児がたい焼きを見つけて「食べたい」と言うので、職員は「園長先生にお願いしたらどうかな?」と返したそうです。そして実際に園児が私の所に来たんですね。そこで職員と話し合い、作ってみようということになりました。実際はたい焼きの型がなかったのでどら焼きになったんですが(笑)。子ども達はもちろん、職員も子ども達の「あれなんだろう、食べたい」に気づき、計画したことが形になり、とても喜んでいました。自分が汲み取ったことが形になる、子ども達にこういう影響を与えているということが目に見えてわかると意欲が出るんですね。
これには、日々話ができる関係性も重要だと思っています。それがないと「どうせダメだと言われるから」と職員自身がアイデアを潰してしまうこともある。これをやりたいと言える環境、失敗してもいいから取り組める環境を作り、保育を惰性でやらない、考えることを日常化していってもらいたいと思っています。
保育士さん達が働きやすい環境にするために取り組んでいることはありますか?
職員が事務をする時間を明確に設けています。そうすることで「ながら保育」がなくなり、事務にも保育にも集中することができます。
残業を減らして、終業後に銀座や有楽町で買い物をしたり映画を観たりなど個人の楽しみもできるような環境を作っています。
会社全体としても、1時間単位での有給休暇取得や分単位での残業代発生という体制を整えています。一般企業では当然のことですが、この業界ではなかなか難しい部分ではあったので、そういった部分をきちんとホワイト化していかなくてはならないと思っています。
また、最近髪色の指定がなくなりました。ちょっとしたことでも、こういったモチベーションに繋がるようなことを企画したり、改正したりしています。
この園で育った子ども達に将来どうなってほしいですか?
元気に健やかに育ってほしい、それに尽きますが、付け加えるならば色いろなことに挑戦してもらいたいと思います。挫折もあるでしょうが、もう一度挑戦してほしい。
人がやらなかったことをやって色いろなものを見つけてもらいたいとも思います。既定路線で来た子ども達では創造力に乏しいかもしれませんが、ここで育った子達なら創造力に溢れ、新しいことに挑戦し、きっと色いろなものを見つけられると信じています。
今後の展望を教えてください。
会社全体としては、保育所がだんだん淘汰される時代になっていくので、いかに選んでもらえる保育所になるかということに重点を置いていきたいです。それには見える部分のサービスだけではなく保育の質が重要なので、保育士がいかに楽しみながらこの崇高な自分達の仕事にプライドを持って質の高い保育をできるかに注力していきたいと考えています。
東日本橋園としては、この地域の繋がりをもっと強化していきたいと思っています。今、他の園さんと協力して、何か1つのものに取り組む活動をしています。去年は歌、今年は体操です。というのも、この地域は年中・年長を合わせても数名しかいない園がほとんどで、集団を知らない子が多いのですが、その割に小学校は1学年に300人ほどの大規模校で、うまく順応できず辛い思いをする子もいるそうなんです。
園だけでなく地域も巻き込んで、地域に根付きながら、お祭りやスポーツ大会など新しいことをやれたら。共通のことを通して、それをきっかけにコミュニケーションを取れたらと思っています。
(MiRAKUU vol.45掲載)
さくらさくみらい東日本橋
住所
〒103-0004
東京都中央区東日本橋3-6-15
アクセス
都営新宿線 馬喰横山駅より徒歩2分
都営浅草線 東日本橋駅より徒歩3分
開園時間
月~土 7:30~19:30
(延長保育18:30~19:30)
連絡先
TEL:03-6661-9939
FAX:03-6661-9937