2023.07.15
教えて!川邉先生

第28回 読者からの質問にお答えします! 子どもの立ち方・歩き方が気になります。食育と歯の関係について教えてください。〈後編〉

教えて! 川邉先生~子どものお悩み解決します──第28回 読者からの質問にお答えします! 子どもの立ち方・歩き方が気になります。食育と歯の関係について教えてください。〈後編〉

もし食育という存在がわかっているのなら、どんな食事を続けていれば、丈夫な歯になるという質問は出ないはずです。この分野は農林水産省のHPにはこのように書かれています。

食育は、生きる上での基本であって、知育・徳育・体育の基礎となるものであり 、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実現することができる人間を育てることです。
農林水産省は、健康で文化的な国民の生活と豊かで活力のある社会の実現に寄与することを目的として、食育の推進に関する施策の総合的かつ計画的な実施を担う官庁として、関係各省と連携・ 協力して、積極的に取り組んでまいります。

引用元:農林水産省:食育の推進

この食育という概念に対してマナーと感謝、そして食品の安全性ということで噛んで食べるという機能の問題を説いているところはどこにもありません。
要は「日本は安全でない食べ物が多いから、自身で選択してよい食べ物に感謝して食べさせなさい」「子どもには理解し難いので、大人や親が学びなさい」ということが食育です。どこにも、歯が丈夫になるというような文面はないのです。

食べ物と歯の関係も全くありません。おそらくこの問題は虫歯、歯周病、そして他の口腔粘膜、喉、そして内臓と特定の場所に効果がある食べ物はないのかという質問だと思うのですが、これはどうして人間は病気になるのということから始まり生活習慣病の最初が、虫歯、歯周病ということでの質問なのかもしれません。
食育を改善したからといって歯に良いものなど存在しません。他の食べ物を摂取すれば、この問題の解決はできないという回答になりますから、食育と歯に良いものは無関係なのです。
ただ、加工の仕方、そして味付けや加工の仕方などの調理方法によって自然界からはかけ離れた存在になってしまうから、病的な人生を送ることになるということならわかります。

基本的に歯に良いものというと、食べ物では存在しません。
病というものは、切ったもの、そして調理したものを食べるという食べやすいものを食べられる環境になった時から始まったのです。縄文時代からとも、石器時代からとも言われています。
どちらも、加工技術が進んだから病が変わったのです。

順天堂大学の教授が『あなたを守る かむリズム』(小林弘幸・著)という本で、無農薬野菜でも、調理をしっかりして、食べやすくして味付けしてもっと食べやすくした場合、一口50回以上噛まないと食べられるものなら良いのですが、噛まなくても食べられるものは発がん性物質に変わると書かれています。
つまり、環境因子の問題が大きいということです。

虫歯ができる機序も、歯周病が起こる機序も同じで微生物のバランスの異常によって起こるというのが細菌学的な考え方。
そもそも、何かだけを食べ続けたら体調が良くなるというような食物は存在しないので、様ざまな食物をまんべんなく食べるということが大事で、6:4の法則というものはあります。
水、野菜が6割。つまり食べ物の総重量の6割が水分を多く含んだもの。あとの4割はタンパク質、デンプンなどの糖のそれぞれ2割ずつが理想とされています。
野菜などは5色「緑=白菜の葉の緑部分」「赤=唐辛子」「黄=白菜の葉の黄部分、ショウガ、ニンニク」「白=白菜の茎の白部分」「黒=塩辛などの薬味類」そしてタンパク質は植物性と動物性があり、植物性の発酵食の納豆などは生後2か月から補食の一環として与えて良い食品になります。

問題は、口腔機能のうちの最も優れた消化酵素としての唾液を活性化させた食べ方、噛んで潰して唾液と混ぜて、吸って飲むのではなく舌で丸めて重力を使って陰圧を作って飲み込むという成人嚥下とも言われる人間嚥下ができるかどうかだけです。
歯に対して、大人ならたまにファーストフードの店でハンバーガーを食べるという時でも、口腔内と体に良い食べ方を行うことで、口腔内をある程度消化酵素としての唾液できれいにできます。24時間、口腔内がきれいに細菌のコントロールが数時間でできるブラッシングを行うことが可能かどうかだけです。

虫歯に対しては、フッ素製剤入りの歯磨き剤、フッ素化合物での洗口は、歯が生える前からの親のトレーニングとして有効で、生涯虫歯に対して悩まないで済む子ども達がほとんどになります。その良い状態の第3世代を超えたために、フッ素製剤も必要ない世代を迎えた国も存在します。寝たきりをほとんど無くした国でもあるのです。
多くの国では、子ども達の問題は虫歯を作るほどの生活習慣の問題だとしています。つまり知識と行動が無いということです。

いずれにしても、食育だけとか、体育だけとか、口育だけというものは無く、総合的に日常生活習慣のすべてが良くなることの1つとして、食品選び、食事に感謝する気持ち、食事のマナーで態度を整えるということがあるのです。
口腔内が24時間きれいになるサラサラ唾液でサラサラ血液というバランスの良い日常生活習慣だけが、歯に良い食べ物を食べているということなのです。

(MiRAKUU vol.43掲載)

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川邉 研次(かわべ けんじ) 経歴
  • 川邉 研次
  • 新橋 未来歯科 院長

    姿勢咬合セミナー主幹(27年以上続く姿勢と噛み合わせの歯科医師向けのセミナー)
    Ken'sホワイトニングセミナー主幹

    1984年静岡県菊川市にかわべ歯科を開業。2011年新橋に未来歯科開業。
    従来の疾患中心型治療ではなく、「細菌単位でのお口の中のリスクを知り、その結果に基づき改善していく」「食事内容の分析・アドバイス」「姿勢指導や、呼吸などのアドバイスによる体質改善」「患者様の未来の目標設定」をコンセプトにした「予防」診療を行う。
    歯科医・歯科衛生士向けの各種セミナー、DMMでのオンラインサロン等も精力的に行なっている。

    『かわべ式 子育てスイッチ ~生まれた瞬間からグングン発達する88の秘訣』(エッセンシャル出版社)好評発売中。

    ホームページ:https://miraishika.com/

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